【映画コラム】二人芝居で描くユニークなSF映画『パッセンジャー』

2017年3月25日 / 15:28
『パッセンジャー』

『パッセンジャー』

 航行中の宇宙船内で、予定より90年も早く冬眠から目覚めてしまった一組の男女の運命を描く『パッセンジャー』が公開された。

 20××年、新たなる居住地を目指す5千人の搭乗者を乗せた豪華宇宙船アヴァロン号が地球を後にした。目的地の惑星到着まで120年。ところが冬眠装置で眠る乗客の中で、エンジニアのジム(クリス・プラット)が装置の誤作動で唯一人目覚めてしまう。そんなジムの前に作家のオーロラ(ジェニファー・ローレンス)が現れて…。

 広大な宇宙空間での孤独という点では『エイリアン』(79)『ゼロ・グラビティ』(13)『オデッセイ』(15)、豪華客船内での身分違いの恋は『タイタニック』(97)と、過去の映画の影がちらつくが、本作のユニークな点は、全編をほぼ二人芝居で描いたところ。そこが過去作との大きな違いだ。

 そして凝ったセットの中で、激しいラブシーン、状況によってくるくると変化するローレンスの表情、2人の立場の変転、2人を見守るアンドロイドのバーテンなどを見せながら、欲望、絶望、希望といった人間の持つ根源的な欲求について考えさせるところもある。

 ノルウェー出身のモルテン・ティルドゥム監督は『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(14)で、実在の数学者の天才故の孤独を描いて注目されたが、今回も主人公の“孤独”に重点を置き、従来のSF映画とは一風変わった味わいを生み出している。(田中雄二)


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