【映画コラム】名コンビによる久々の映画だが…『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』

2016年9月3日 / 15:22
(C) 2015 Les Films 13 - Davis Films - JD Prod - France 2 Cinema

(C) 2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinema

 ニューデリー、ムンバイ、ケーララ…。インド各地を舞台に、互いにパートナーのいる中年男女の恋模様を描いた『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』が公開された。

 ボリウッド版の『ロミオとジュリエット』の製作に参加するため、インドを訪れた仏の映画音楽家アントワーヌ(ジャン・デュジャルダン)は、仏大使の妻アンナ(エルザ・ジルベルスタイン)と出会う。病に侵されたアントワーヌは、霊者に会うため、南部の村まで旅に出たアンナの後を追い、二人は2日間行動を共にすることになる。

 本作は、78歳のクロード・ルルーシュが監督し、84歳のフランシス・レイが音楽を担当。『男と女』(66)『パリのめぐり逢い』(67)『白い恋人たち』(68)の名コンビによる久々の映画だが、アンナの人物像に象徴される、欧米人がアジアに対して抱く好奇心や神秘への興味の描き方があまりにも浅薄で驚く。これでは『エマニエル夫人』(74)のころのアジア趣味と大して変わらないではないかと感じさせられるのだ。

 名匠も老いたりの感は否めないが、昔から望遠レンズを多用する手法で、映像の詩人と呼ばれたルルーシュによるインドの風景描写や、いかにもフランス映画らしいしゃれた会話などには見るべきところがあるし、二人のお気楽な不倫に対して、クリストファー・ランバートが演じる仏大使が一矢を報いるところで多少は溜飲が下がる。

 また、クラシック音楽至上主義に対して、アントワーヌがつぶやく「クラシックの作曲家が今生きていたら、映画音楽を作曲していただろうさ」というせりふが印象に残る。アントワーヌのモデルはレイなのか…と想像しながら見るのも一興だ。ちなみに、レイはルルーシュとの仕事のほかにも、アカデミー賞の作曲賞を受賞した『ある愛の詩』(70)などの名曲を残している。(田中雄二)


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