音楽は、物語る フィンランドのタンゴ、モニカのワルツ、人間の内に息づくパーソナルソング、マリア・カラス

2014年11月17日 / 15:20

 音楽は人に寄り添い、人と生き、人を物語る。「タンゴ、フィンランド起源説」の真偽を巡る旅『白夜のタンゴ』、母国語でジャズを歌い世界的な歌姫となったモニカ・ゼタールンドの波乱な半生を描く『ストックホルムでワルツを』、人の内側に息づく音楽を目の当たりにさせる『パーソナルソング』、希代の歌姫の絶頂期を映し出す歴史的映像『マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ』と、音楽たちが描き物語る人々の魅力に心動かされる作品たちが、この秋スクリーンに登場する。

 「タンゴはスキーやサウナと同じように、フィンランドで生まれたものなんだ」アキ・カウリスマキ監督が、なんとのっけから怒って…いや、不機嫌気味に登場するのが『白夜のタンゴ』だ。ブエノスアイレスのタンゴミュージシャン達が「タンゴ生誕フィンランド説」の真相を確かめる為、フィンランドに旅するドキュメンタリー。ラテン気質と都市の喧騒で熟したブエノスアイレスのタンゴと、深い寒さと哀愁に満ちた、穏やかでゆったりしたフィンランドのタンゴ。タンゴを人生そのものとして愛する人たちの対話が音の交流となって旅を色彩豊かに描き出される。

 「ジャズは英語」が当然の時代、母国語でジャズを歌い始め一躍スターに上り詰めたモニカ・ゼタールンドの半生を描いた『ストックホルムでワルツを』が公開される。「テイク・ファイブ」や、ビル・エヴァンスとの共演で話題となった「ワルツ・フォー・デビイ」も、スウェーデン語のスキッとした響きにのって、軽やかで切なく、どこか懐かしい魅力に満ちて聴こえてくる。北欧デザイン全盛期のファッションやインテリアも見所のひとつ。主人公モニカを演じたスウェーデンの歌姫エッダ・マグナソンは本作にて映画デビューにしてゴールデン・ビートル賞の主演女優賞を獲得。12月に来日公演を行う予定。

 認知症、アルツハイマー病の人々に、お気に入りの曲を聴かせる。これだけのことが、どれ程、感情に自由を与えるか。それをありありと見せてくれるのが『パーソナルソング』だ。原題は“アライブ・インサイド”。音楽は我々の身体機能の実にさまざまな部位を有機的に結びつけ、共に生き、生き続け、そして生き返らせる。音楽が引き起こす劇的な変化と反応に心動かされると共に、長年認知症治療に携わってきた多くの医師達の、科学的見地に基づいたメッセージが興味深い。また音楽療法の現在を通して見るアメリカ社会から、わたしたちは資本主義社会の辿り着いた様々な問題の一端を実感することになるだろう。

 1958年、満を持してパリデビューを飾ったマリア・カラスのガラ・コンサートの一部始終を収めた映像『マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ』がスクリーンに登場。その高度で確実な歌唱の技術と幅広い声域を目の当たりにすることで、今改めてカラスの実力を思い知ると同時に、シリアスな役柄での美女然とした表情や、ロジーナの驚異的なカデンツァを軽やかに歌うチャーミングさなど、演じ手としてのカラスに誰もが魅了されるだろう。本コンサートで披露される『トスカ』第2幕は、カラスが残した唯一のオペラ映像作品としても貴重なもの。限定先行上映は11月19日。12月分は完売済、2015年に本公開となる。

text:yokano

◎上映情報
『白夜のタンゴ』
2014年11月22日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
配給:トレノバ
http://whitenights-tango.com/

『ストックホルムでワルツを』
11月29日(土)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー
配給:ブロードメディア・スタジオ
http://stockholm-waltz.com/
Carlo Bosco (C)StellaNova Filmproduktion AB, AB Svensk Filmindustri, Film i Vast, Sveriges Television AB, Eyeworks Fine & Mellow ApS. All rights reserved.

『パーソナルソング』
12月16日(火)よりシアターイメージフォーラム 他、全国順次公開
配給:アンプラグド
http://personal-song.com/
(C) ALIVE INSIDE LLC 2014

『マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ』
特別先行上映
11月19日(水) 渋谷・さくらホール
12月18日(木) よみうり大手町ホール(完売)
2015年春、全国主要都市で劇場公開予定
配給:T&K テレフィルム/c ina
http://gakugakai.com/gakugakai2014/callas.html


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