<ライブレポート>リーガルリリー×羊文学、盟友同士の“核”が共鳴した対バン企画【cell,core 2025 to 2026】東京公演

2026年1月29日 / 18:00

 1月20日、リーガルリリーによる対バン企画【cell,core 2025 to 2026】の東京公演がZepp DiverCity(TOKYO)で開催された。タイトルには「それぞれの“核”を持った“細胞”である観客やアーティストがライブ空間に集まることで、互いに共鳴し合い、新しい“核心”を作り上げることを目的としたイベント」という意味合いがあり、5回目となる今回は大阪公演にハンブレッターズとMom、東京公演に羊文学が招かれた。

 【cell,core 2022】の名古屋公演にも出演しており、リーガルリリーとは同年代のバンドで、ほぼ同時期に活動してきた羊文学。そんな彼女たちがこの日の1曲目に選んだのは、2018年リリースの1stアルバム『若者たちへ』でも1曲目を飾っている「エンディング」だった。サポートを務めるYUNAのゆったりとしたリズムから始まり、リリカルなメロディーを歌う塩塚のボーカルとともに、徐々に轟音が立ち上がっていくドラマチックな一曲だ。結果的に、この日の羊文学のライブはMCらしいMCは一切なく、ひたすら楽曲を演奏し続けた。ただ、当時から1曲目に演奏されることが多く、「若さ、青春、学生時代の終わり」をテーマにしたアルバムのプロローグ的な役割を果たしていたこの曲からライブを始めたことは、メッセージを感じる選曲だったように思う。

 その後は最新作『D o n’ t L a u g h I t O f f』から「doll」「いとおしい日々」と、オルタナ色の強いアッパーな曲を連発。この流れで2017年リリースのインディーズデビュー作『トンネルを抜けたら』に収録されている「踊らない」を続けても決して違和感がないのは、羊文学が近年さまざまな楽曲にチャレンジしながら、3ピースのロックバンドとしての軸には決してブレがないことをあらためて印象付ける。「Burning」ではこの日最大級に歪んだファズギターが鳴らされ、河西ゆりかとYUNAによる強靭なリズム隊が楽曲のスケールを後押しし、場内は盛大な拍手に包まれた。

 塩塚の感情表現豊かなボーカルが魅力の「cure」、ミニマルなフレージングが耳に残る「くだらない」から、イントロのギターフレーズの時点で大きな歓声が上がった「more than words」でライブ後半のハイライトを刻みつつ、個人的に印象的だったのが「愛について」。『D o n’ t L a u g h I t O f f』は「doll」や「Burning」のようなオルタナ色の強い曲の一方、シンプルなアレンジで内省的な心情を吐露するシンガー・ソングライター的な楽曲も非常に魅力的で、フォーキーな三連のミドルバラードである「愛について」はその象徴のような一曲。<愛を言葉にしそびれないように気をつけて 言葉選びがぎこちないまま、こちらに微笑む>と歌い、上手く言葉にできない感情が溢れ出すような長尺のアウトロは、何より雄弁に他者への愛や優しさを表現しているように思う。<僕らの存在はいつだって曖昧なの 言えなかったことも胸の奥で溶かして 忘れてしまうよ そして 欠伸をしたのさ>と歌う「mother」まで、物語を感じさせる10曲だった。

 2番手のリーガルリリーがこの日の1曲目に選んだのは、たかはしほのかによる弾き語りから始まる「ムーンライトリバース」。アルバム『kirin』に収録され、プロデュースに亀田誠治を迎えて新たなチャレンジを行なった一曲であり、現在進行形のバンド像を示す意思がはっきりと伝わってくる。アッパーな「GOLD TRAIN」のラストでは歪んだギターをかき鳴らし、ベースの海とサポートドラマーのデザレ・ニーリーのプレイも非常にパワフルで、羊文学との相性の良さとそれぞれの個性があらためて感じられた。

 「リーガルリリーです。よろしくお願いします」と一言挟み、トーキングヘッズのようなポストパンク風のイントロから、たかはしが「初のダンスナンバー」という四つ打ちの「danceasphalt」、イントロで海がステージ前方に出て、歪んだベースを鳴らしたグランジ色の強い「1997」、さらにはパンキッシュな「60W」と、さまざまなアレンジの楽曲を続けていく。文字通り蛍のような照明のなかでたかはしが流麗なアルペジオをとともにポエトリー・リーディングを行い、ラストのシューゲイズな轟音とともに光量が増していく「蛍狩り」はライブ中盤のハイライトを作り出していた。

 たかはしが「羊文学とは10年前一緒にライブをしていて、そのときに弾き語りでよくやっていた曲を今日やりたいと思います」と話して披露されたのは、2016年にリリースされた最初のミニアルバム『the Post』に収録のフォーキーな「好きでよかった。」。さらには2018年リリースのミニアルバム『the Telephone』からギターポップ色の強い「僕のリリー」と、初期の頃の楽曲が続けて演奏された。こういった過去曲を聴くと、くるりやPeople In The Boxといったリーガルリリーの「核」を形成しているバンドからの影響があらためて感じられるとともに、現在では彼女たちが影響を与える側にもなっていることに感慨を覚える。

 過去曲と並べても十分にフレッシュで軽快な「地球でつかまえて」を終えると、渋谷のスクランブル交差点で【cell,core】というタイトルについて思いを巡らせたことを話し、下北沢のライブハウスで自分の核と共鳴したことから生まれたという「天きりん」を演奏。<しもきたざわざわざわざわめきが止まらない!>と歌うこの曲は、ライブハウスで生まれるエネルギーと衝動を閉じ込めた曲であり、まさに羊文学とライブハウスで共演していた時代を連想させる一曲でもあるだろう。さらにはミラーボールが美しく輝いた「キラキラの灰」、代表曲の「リッケンバッカー」でこの日のピークタイムを作り出すと、本編ラストで演奏されたのは「ますように」。ダブ風の間奏から、荘厳なシーケンスが加わって<残像を背景にして 僕らここにいられますように>と「他者」の存在を歌うこの曲は、さまざまな感情を対バン相手と、オーディエンスと共有する【cell,core】に相応しいエンディングだった。

 アンコールではたかはしと海が「羊文学めちゃめちゃかっこよかったね」と口々に語り、海は「音源もMVもアー写も衣装も、全部好きなバンドはなかなかないない」と話すと、たかはしも頷いて「いいものを目にしてしまうと言葉なくなっちゃうよね」と応え、海が「それでいいんだと思う」と返したのはとてもリーガルリリーらしいやり取りだった。ここで演奏されたのが、この日のために作られた新曲の「カニステル」。フォーキーな三連のミドルバラードに乗せて届けられるのは<誰のために? なんのため息を 吐き出しているのだろう わからなくて 途方に暮れた 朝日を見てる>といった言葉たち。リーガルリリーと羊文学は、普段言葉にできない不安や心許なさを包み隠すことなく歌にして、それも自分だと受け入れて、そのうえで前を向き、光を信じることを歌うバンドだ。だからこそ信頼できるし、この歌詞がそのまま『D o n’ t L a u g h I t O f f』のアートワークを連想させたことが、2組の確かな共鳴を感じさせた。

 ラストはこちらも初期の頃に発表された『the Radio』の収録曲で、疾走感たっぷりの「はしるこども」。<君のこと考えるの もうやめだ>と歌い出す「エンディング」で始まり、<きみを信じてるよ 忘れないでいてよ>と締めくくる「はしるこども」で終わる一夜というのは、まるで2組が対話をしているかのようで、なんとも出来すぎだ。それぞれの10年を駆け抜けてきたリーガルリリーと羊文学は、決して多くを語ることなく、あくまで曲を通じて想いを届け、今を見つめていた。それでもお互いに対するリスペクトと、ここまでの歩みに対する労いの気持ちが確かに感じられる、特別なライブだった。

Text:金子厚武
Photo:藤井拓

◎公演情報
【cell,core 2025 to 2026】
2026年1月20日(火)
東京・Zepp DiverCity(TOKYO)

◎公演情報
【リーガルリリー 大阪城音楽堂】
2026年7月5日(日)
大阪・大阪城音楽堂
開場 16:30 / 開演 17:30


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