<ライブレポート>DEAN FUJIOKA、壮大なシンフォニックサウンドで彩られた進化の先に迎える旅の結末

2025年12月27日 / 12:00

 DEAN FUJIOKAが初のフルオーケストラコンサート【billboard classics DEAN FUJIOKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT -旅人-】を12月9日東京芸術劇場コンサートホール、19日京都コンサートホール・大ホールで行ない、オーディエンスと共に“音楽で旅する時間と感情の物語”を完結させた。東京公演での感動の一夜をレポートする。

 ポップスやロックを聴いている人は、普段あまりクラシックコンサートに足を運ばないという人も多いと思うが、この日の開演前の東京芸術劇場の客席も、期待と少しの緊張感とが入り混じった独特の空気が漂っていた。そんな中、東京フィルハーモニー交響楽団とコンダクターの栗田博文が大きな拍手に迎えられ登場。いよいよ旅の始まりだ。

 オーケストラの美音が静まった空間を突き抜けるように響くと、客席の思いがグッとステージにひきつけられるのが伝わってくる。「Stars of the Lid」「Let it snow!」「Be Alive」「Missing Piece」というDEANの楽曲が、ビルボードクラシックスには欠かせない編曲家・山下康介の手により美しくアレンジされメドレーとなった「Overture」からスタート。東京フィルの音に心をわしづかみにされたところで主役のDEAN FUJIOKAが登場し、「Spin The Planet」からスタート。元々ストリングスが印象的な、スケールの大きなブレイクビーツの曲が、さらに雄大な音像となって力強い旋律をさらに浮かび上がらせる。

 DEANはインタビューでフルオーケストラとの初共演について「表現者としての旅の過程で必ず通らなければいけない、通りたいと思っていました。ようやくその時が来たんだなと武者震いしました」と語っていたが、50人を超えるオーケストラの音を浴びた瞬間、どんな思いだったのだろうか。

 「Spin The Planet」は、ライブでは全員で手をクルクル回す楽曲だが、この日はクラシックコンサートということもあってか、客席は少し遠慮気味に回していたように思う。ステージ上のDEANはこのステージに立てた喜びを表すかのように、オーケストラに向かって手を回していた。疾走感から高揚感が立ち上がる「Runaway」から、ラップ調の歌と親近感のあるサビが印象的な“ネオ”桜ソング「Sakura」へ。オーケストラの音がロマンティックな歌詞の切なさを増幅させる。「ここだけの旅の景色を楽しんで」と短いメッセージを届けると「Maybe Tomorrow」へ。優しく切ないメロディをスケールの大きなアレンジが彩り、さらに多幸感が増す。

 前半最後のナンバーは「Plan B」。ピアノの音色にハープ、フルートが重なり、DEANの端正な声と歌が客席を包み込む。突然ダイナミックな音像になるキメラのような構成の曲で、コロナ禍を経て、“Plan B”を常に想定しながら生きることの大切さを伝える。青と赤の光の演出が切なく激しいこの曲をさらに感動的に届ける。

 インターバルの後、第2部は「Final Currency」からスタート。DEANは両手を広げ、首でリズムをとり、ラップ調の歌とオーケストラが“ハモる”。この曲の原曲のアレンジも分厚いストリングスが印象的だ。DEANはストリングスを「時空を超えて続く物語の音楽を紡ぐ上では欠かせない音」と捉えており、ストリングスを使用する楽曲が多い。そういう意味でも今回のオーケストラコンサートは「通らなければいけない道」だった。

 様々な感情を抱えた人が集うライブは、何かを感じ何かを手にして、また会おうと言って別れていく、旅の始まりであり終わりの場所なのだ。オーケストラはひとつひとつの物語をより感動的に描き、忘れられない旅を約束してくれる。「Sukima」はそんなことを強く感じさせてくれる美しいバラードだ。ピアノの響きに美しい弦が乗って、徐々に音の厚みと広がりにひきつけられ、DEANのハイトーンが美しい。<心の隙間 照らして>という歌詞、そこに光を差すような音が、クライマックスのような感動を連れてくれる。ため息混じりの低音での歌い出しが惹きつけられる「Echo」は、オリジナルは攻撃的でうねるようなダークなサウンドのナンバーだが、この日はオーケストラの重厚な音で、荘厳なイメージの楽曲に生まれ変わった。オーディエンスにとっては、“アレンジの威力”を一番感じた曲なのではないだろうか。曲の終わりでは歌の余韻を壮大な音がさらに彩る。

 「Shelly」は美しいメロディと歌詞の行間を、オーケストラの楽器ひとつひとつの美しい音が何層にも織り重なっていくさまが楽しめたはずだ。DEANの歌も歌詞も切なさが増していく。

 「Let it snow!」では“雪”が過去と今とを繋げる存在で、天井に舞う雪が映し出され、この瞬間に過去と決別して未来に歩きだすという思いを伝える。オーケストラのダイナミックかつ繊細な音が言葉をまっすぐ伝える。客席を手で煽り全員で<ラララ>と一緒に歌う。

 「音楽を通じて同じ場所にいる奇跡。そんな旅も終わりが近づいてきました」と、本編ラストは「Teleportation」だ。どこまでもポップで転調が気持ちいい楽曲は、手拍子が起き<いいね いいよね。>と一緒に口ずさむ。美しくハッピーな音と歌でステージと客席が溶け合う。大きな拍手がDEANとオーケストラに贈られ、本編が終了した。

 鳴りやまない拍手に応えDEANと指揮の栗田が登場し代表曲のひとつ「History Maker」を披露。原曲の空気をさらに濃厚に、そして壮大にしたアレンジで、マイクスタンドを振り上げ歌うDEANの歌は情熱的だ。オーケストラの美爆音を全身に浴びたDEANも客席も、高揚感と多幸感で満たされ、スタンディングオベーションが起こった。

 そして「旅の最後を締めめくる曲。今日一番の大きな声を響かせて」と、日本におけるデビュー曲「My Dimension」を投下すると歓声が沸く。情熱的な初期衝動が滲むラップ調の歌に、オーケストラの音と観客のコーラスが重なっていく光景は、感動的かつどこまでも美しかった。

 DEANはインタビューでオーケストラについて「ジャンル超えたときにクラシックが持つ本当の潜在的な何か、ヒリヒリするような本性のようなものが露わになると感じる」と語っていたように、今回のコンサートで観客にもその優しく、繊細で、力強く、時に獰猛に襲ってくるような迫力を感じさせてくれる生のオーケストラの音を体感した。まだ見ぬ世界に連れ出された、そう感じた観客も多かったはずだ。

 「今回のコンサートも自分が思いもよらないような旅の結末にたどり着けたらいいなって素直に思います。一緒に旅をして、その先にあるものを見つける楽しさをみなさんと共有したい」と開演前に語っていたが、DEANと観客はどんな景色を目にしたのだろうか。この旅の続きに期待したい。

text:田中久勝
phot:石阪大輔

◎公演情報
【billboard classics DEAN FUJIOKA Premium Symphonic Concert ー旅人ー】

2025年12月9日(火)
東京芸術劇場 コンサートホール 
2025年12月19日(金)
京都コンサートホール 大ホール 

出演:
DEAN FUJIOKA
指揮:栗田博文 
管弦楽:
【東京】東京フィルハーモニー交響楽団 
【京都】京都フィル・ビルボードクラシックスオーケストラ
編曲監修:山下康介

<公演公式サイト>
https://billboard-cc.com/deanfujioka2025

主催・企画制作:ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク) 
後援:米国ビルボード

<公演に関するお問合せ>
【東京】ホットスタッフ・プロモーション 050-5211-6077 (平日12:00~18:00/土日祝休)
【京都】キョードーインフォメーション 0570-200-888(平日12:00~17:00/土日祝休)

<セットリスト>
第1部
Overture
Stars of the Lid/Let it snow!/Be Alive/Missing Piece
1.Spin The Planet
2.Runaway
3.Sakura
4.Maybe Tomorrow
5.Plan B
6.Final Currency
第2部
7.Sukima
8.Echo
9.Shelly
10.Let it snow!
11.Teleportation
EC1.History Maker
EC2.My Dimension


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