<ライブレポート>B'zが37年の歴史でファンと築き上げたパッション――ライブツアー【B’z LIVE-GYM 2025 -FYOP-】

2025年12月22日 / 18:00

 B’zが、12月7日に東京ドームで【B’z LIVE-GYM 2025 -FYOP-】を開催した。

 2025年のB’zも、やはり熱かった。2024年の大晦日に放送された『第75回NHK紅白歌合戦』では、初出場にして日本中を沸かせ、B’zの名を改めて刻みつけた。その勢いのまま、【ap bank fes ’25 at TOKYO DOME ~社会と暮らしと音楽と~】への出演や、THE YELLOW MONKEY、マキシマム ザ ホルモン、MAN WITH A MISSION、ONE OK ROCKらを迎えた対バンライブ【B’z presents UNITE #02】を開催するなど、精力的な活動を展開。さらに『アサヒスーパードライ』CMソング「FMP」などのタイアップ曲を次々と世に送り出し、11月には通算23枚目となるオリジナル・アルバム『FYOP』をリリースした。

 そして、『FYOP』を携えて行われた今回のツアーは、11月15日の愛知・バンテリンドーム ナゴヤを皮切りに、全4都市8公演を実施。2025年は松本孝弘(Gt.)が健康上の理由から休養する時期もあったが、ステージに立つ彼の姿は“完全復活”を証明してくれた。その様子については、後ほど触れていきたい。

 会場に足を踏み入れてまず目を奪われたのは、巨大なモニターの一面に映し出された、ラジカセの映像だった。開演時間になると、「FYOP」のタイトルが刻まれたカセットテープが、ラジカセにセットされる。すると地鳴りのような爆音と共にラジカセが炎に包まれ、「FYOP」の文字が浮かび上がった。その瞬間、ステージ下から松本が姿を現す。続いて稲葉浩志(Vo.)も下手側から颯爽と登場し、ロックモード全開の「FMP」でライブの幕が切って落とされた。

 松本が奏でる、熱い鼓動を内に秘めた滑らかなギターソロが“静”だとするなら、バンドメンバーの清(Ba.)が鳴らす怒涛のリフはまさに“動”。このコントラストがたまらなく心地良い。その勢いのまま「兵、走る」へバイタリティー全開で突き進んでいく。コーラスパートでは、オーディエンスからの声が大きく聞こえてくる。どれだけこの日を待ち望んでいたのか…演奏が終わると、オーディエンスは全力で2人の名前を叫び続けていた。

 「B’zの~」と、いつもの掛け声を入れようとした稲葉に対し、松本が「たまには俺にもやらせてくれる?」とツッコミを入れる。どっと笑いと歓声が上がる中、「B’zの~!」と何度もコールを重ね、「いいね~」と満足そうにオーディエンスの反応を噛みしめる松本。そのまま進行を稲葉に返すと、「B’zの…【LIVE-GYM】にようこそ!」の掛け声が響き、「声明」がスタートする。稲葉はマイクスタンドを操りながら、芯の通った力強いボーカルを会場の隅々まで届けていく。

 続く「MY LONELY TOWN」では、ミュージック・ビデオの撮影地でもある長崎県・軍艦島の映像がモニターに映し出される。ミディアム・ロックナンバーでありながら、胸に刺さる切ない歌詞が心に響き、気付けば自然と涙がこぼれそうになる。そこから一転、松本の静かなイントロから「DIVE」へと飛び込んでいく。この感情の振り幅は、まさにローラーコースターさながら、その緩急のつけ方の巧みさに、改めてB’zのライブが持つ凄みを思い知らされる瞬間だった。

 「今回は【FYOP】=Follow Your Own Passionというツアーです。我々のパッションとみなさんのパッションを思いっきりぶつけ合うのはどうでしょうか?」(稲葉)

 ドラマ『イグナイト -法の無法者-』の主題歌「恐るるなかれ灰は灰に」では、松本のギターリフに合わせて、自然とコールアンドレスポンスが湧き起こる。そして、灰が舞い上がる映像を背に、稲葉が立つステージ上の台座がゆっくりとせり上がる。その姿はまさに“人間の爆発力”を体現しているかのようで、神々しく見えた。続く「INTO THE BLUE」では、松本が水色のストラトキャスターで、稲葉の歌声にそっと寄り添うような旋律を奏でる。そして、次に披露された映画『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』の主題歌「The IIIRD Eye」では、トリッキーな楽曲構成をライブでも堪能できた。

 「あんまりライブでやっていない曲を引っ張り出してきました」(稲葉)と、オーディエンスの期待が高まる中、次に届けられたのは、シングル『love me, I love you』の2nd Beat「東京」。稲葉と川村ケン(Key.)のデュオ編成でのパフォーマンスで、稲葉の美声がより一層引き立つ。「懐かしい曲をやるのも勉強になります」と笑みを浮かべながら語った稲葉は、再びバンドメンバーと共に「キレイな愛じゃなくても」へ。曲が進むごとに各パートの音が少しずつ重なり、クライマックスを彩った松本の“泣きのギター”には圧倒された。

 しんみりとした余韻が会場を包む中、意表を突くように松本がソロ曲「#1090 ~Million Dreams~」を鳴らし始め、再び会場は熱気を帯び始める。多くを語るより先に、音で“完全復活”を宣言してみせる姿を見せ、ファンの不安が払拭されたといっても過言ではない。

 中盤戦に差しかかったところで、ステージの“真の姿”がついに明らかとなる。なんと、スクリーンの裏側には「B’z」という文字の巨大なセットが組み込まれていたのだ。「LOVE PHANTOM」のイントロが流れ始めると、稲葉はセットの頂上から堂々と登場。ステージ中央には松本が圧巻のパフォーマンスを行い、視線の行き場に困るほどの情報量だ。さらに火炎放射器も吹き上がり、豪華な演出に息をのむ間もなく、「ultra soul」へ。前述した『第75回NHK紅白歌合戦』と同じ流れということもあり、あの時の興奮がフラッシュバックする。

 Yukihide “YT” Takiyama(Gt.)、清、川村、そして数年ぶりにバンドメンバーに復活したシェーン・ガラス(Dr.)の紹介を終えると、松本が語った。「デビュー37年目にして体調を崩してしまい、お休みをいただいておりました。みなさまにご迷惑とご心配をおかけして、本当にすみませんでした。普通にやれていることって、当たり前のことじゃないんだなって痛感しました。今日こうしてここに立てていることはすごい事実で、感謝しながらギターを弾かせていただいています」。続いて稲葉も「みなさんの声援、励まし、ちゃんと届いています」「我々がこうして会っているのも当たり前じゃないわけです。普通じゃないよ!? 当たり前じゃないよ!?」と話すと、大きな拍手が沸き起こる。

 ライブは再び「鞭」から再開し、「Still Alive」「ギリギリchop」と言わずもがなの爆上がりチューンで一気に走り抜ける。「Still Alive」では、<何一つ終わりじゃない>というフレーズが、ファンからの励ましに対してのアンサーでもあり、B’zはこれからだ――そんな力強い宣言のように胸を打った。さらに稲葉が「まだまだいけますかー!?」と、様々な音程でコールアンドレスポンスを煽ると、会場に一体感が生み出されていく。そのまま雪崩れ込んだ「ギリギリchop」では、松本がほんの少しアレンジを加えたイントロをかき鳴らし、清の高速スラップが炸裂。オーディエンスもタオルを全力で振り回して、盛り上がっている。

 「色んな経験をしていく中で、選択肢が出てきて、迷いが生じるわけです。今、改めて自分たちに“Follow Your Own Passion”、パッションの通りに動こうよと、自分たちに向けた言葉として付けました。単純なフレーズですが、今の自分たちに響くわけです。パッションの通り何かを決断して動くわけですが、それが正しいのか間違いなのか、分からない。でも後悔しない。だって自分のパッションだもん」「生活の中で何か気持ち良い心の揺らぎをパッションとして追いかけてもいいじゃないですか。我々もそうやって、当たり前の景色を見て、出会っているわけです。お互いそういうものを追いかけながら、なるべく苦労が少ないように、生きて、その先またこうやって会えたら最高じゃないですか! そうやってまた会いましょうよ!」と、稲葉がツアータイトルに込めた想いを語る場面もあった。

 そんなMCに呼応するように届けられたのが「Brotherhood」だった。2番では<うまくいっているか東京?>という問いかけから歌い始め、オーディエンスに向けてまっすぐに言葉を投げかける。B’zのパッションがファンのパッションを呼び起こしさらにB’zへ──その相乗効果が、37年というキャリアの重みの中に濃縮されていることを実感した。最後は稲葉のロングトーンでオーディエンスを魅了して、大きな歓声の中、ステージを後にした。

 セットの照明が一斉にクリスマスツリー色に切り替わり、アンコールは「いつかのメリークリスマス」から静かに幕を開ける。稲葉は赤いスパンコールが煌びやかな衣装に身を包み、楽曲がドラマチックに仕立て上げられていく。そして「イルミネーション」へと流れていき、会場はロマンティックなムードに包まれていった。まさにオーディエンスにとって一つのクライマックスがこのまま続いてほしいと願いながらも、「イチブトゼンブ」で公演のラストを飾った。

 なお、B’z は2026年4月より全国アリーナツアー【B’z LIVE-GYM 2026 -FYOP+-】を開催することが決定している。セットリストやステージ・セットも一新されるとのことで、どんな展開が待っているのか、今から首を長くして待ちたい。

Text by Tatsuya Tanami
Photo by ©VERMILLION, ©Dynamic Planning・TOEI ANIMATION

◎公演情報
【B’z LIVE-GYM 2025 -FYOP-】
2025年12月7日(日)
東京・東京ドーム
<セットリスト>
M01. FMP
M02. 兵、走る
M03. 声明
M04. MY LONELY TOWN
M05. DIVE
M06. 恐るるなかれ灰は灰に
M07. INTO THE BLUE
M08. The IIIRD Eye
M09.東京
M10. キレイな愛じゃなくても
M11. #1090 ~Million Dreams~
M12. LOVE PHANTOM
M13. ultra soul
M14. 鞭
M15. Still Alive
M16. ギリギリchop
M17. Brotherhood
EN01. いつかのメリークリスマス
EN02. イルミネーション
EN03. イチブトゼンブ

【B’z LIVE-GYM 2026 -FYOP+-】
2026年4月11日(土)福井・サンドーム福井
2026年4月12日(日)福井・サンドーム福井
2026年4月18日(土)広島・広島グリーンアリーナ(広島県立総合体育館)
2026年4月19日(日)広島・広島グリーンアリーナ(広島県立総合体育館)
2026年4月25日(土)香川・あなぶきアリーナ香川
2026年4月26日(日)香川・あなぶきアリーナ香川
2026年5月2日(土)沖縄・沖縄サントリーアリーナ
2026年5月3日(日)沖縄・沖縄サントリーアリーナ
2026年5月9日(土)福岡・マリンメッセ福岡A館
2026年5月10日(日)福岡・マリンメッセ福岡A館
2026年5月16日(土)北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
2026年5月17日(日)北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
2026年5月23日(土)大阪・大阪城ホール
2026年5月24日(日)大阪・大阪城ホール
2026年5月30日(土)神奈川・横浜アリーナ
2026年5月31日(日)神奈川・横浜アリーナ
2026年6月6日(土)千葉・LaLa arena TOKYO-BAY
2026年6月7日(日)千葉・LaLa arena TOKYO-BAY
2026年6月13日(土)愛知・IGアリーナ
2026年6月14日(日)愛知・IGアリーナ


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