<ライブレポート>「ビルボード大阪! 戻ってまいりました!」RHYMESTER&THE BOOM BAPSが新たなる“最高”を創造した夜

2025年11月27日 / 20:00

 RHYMESTERが、11月15日にビルボードライブ大阪にて【RHYMESTER “King of Stage at Billboard Live OSAKA 2025″】を開催した。

 1年ぶりとなるビルボードライブ大阪。今回の公演も昨年同様に生バンドとガッチリタッグを組んだスペシャル仕様とあってチケットは完売するなど、話題性は抜群だった。11月8、9日にブルーノート東京公演を経て開催となった【King of Stage at Billboard Live OSAKA 2025】。ライブを見ればすぐに彼らが“King of Stage”と自ら名乗り、また称される意味が恐ろしく腑に落ちるのだが、何度見ても前回見た最高のライブを軽やかに超える“新しい最高”を見せてくれるのがRHYMESTERなのだと、ビルボードライブ大阪の夜に思った。この公演でも自分たち自身が音楽を楽しみながら、私たちを楽しませてくれる彼らの姿を見ることができた。

 満席の会場では誰もが食事を楽しみながら開演を待つ。会場を見渡せば、どのウェイターのトレイの上にも鮮やかなグリーンが美しいカクテルが載っている。かなりの注文が入っているとわかるそのドリンクは、彼らの楽曲「POP LIFE」が冠されたオリジナルカクテル。グリーンモヒートシロップ+生搾りライムジュース+ジンジャエールの味わいが爽やかでグビグビっといきかけたが、ウォッカがしっかりと効いている。真っ当に酔える一杯であることが、なんともRHYMESTERらしい。カクテル名が『POP LIFE』ならば、曲も披露されるに違いない……! と期待も高まる。

 そして開演――まずはバンドマスターを務めるタケウチカズタケ(Key.)を筆頭に藤山周(Gt.)、柳原旭(Ba.)、脇山広介(Dr.)、高橋結子(Perc.)ら、ライブを共にするTHE BOOM BAPSの面々がステージに姿を現す。するとタケウチが艶のある音色で「Beautiful」を奏で出し、徐々にメンバーの音が重なっていく。その音に導かるようにDJ JIN、Mummy-D、宇多丸の順でステージへ進む姿に、大きな拍手が送られる。“King of Stage”のパフォーマンスを前にいかに観客が胸を高ぶらせているかがわかる大きな音だ。

「ビルボード大阪! 戻ってまいりました!」という宇多丸の言葉をきっかけに、今年のビルボードライブ大阪公演が「Still Changing」で幕を開ける。彼らの曲のセレクトには、何かしらの意味や今言いたいことが含まれていると考えてしまうのだが、この公演が<ぼくらはここにいる 叫べ>というリリックを含んだ曲で始まったことに早速「あぁ!」とため息がもれる。RHYMESTER がビルボードライブ大阪に“戻ってきた”のだ。曲が途切れるか途切れないかのタイミングで宇多丸が「関西パーティーピーポー、待っててくれました?」と声を張り上げる。冒頭から、再びこの場所に立てることへの興奮を言葉とパフォーマンスで表現する2MC+1DJ(Mummy-DもDJ JINも会場を見まわし、手を振り、ひとりひとりと目を合わせようとする仕草に観客の誰もが興奮していた)。

 曲が「Future is Born」へと移り変わると、観客の「この曲がキタっ!」という気配を感じる。生の音ならではのグルーヴ感&パーカッションの音が際立つ「Future is Born」だ。コール&レスポンスはもちろんだが、2曲目だというのにまるでクライマックスのように誰もが大声で歌い、手を振る。特に宇多丸、Mummy-Dのパフォーマンスから発せられる熱も半端ない。もう一度言うが、まだ2曲目だ。

 「終わりかよ!」(宇多丸)、「……もういいでしょう(笑)!」(Mummy-D)と言うほど、本人たちもエンディングかのような高まりを感じていたらしい。そして「結成36年目、RHYMESTERです!」という言葉に続けて紹介されたのは、THE BOOM BAPSだ。宇多丸は「去年のビルボードライブ大阪公演が最高すぎて、その夜に打ち上げをし二次会をし、部屋飲みをして、その部屋飲みで決まったグループ名なんですよ」と告げる。僕らにとってはTHE BOOM BAPS誕生の地なんですよ! という言葉に会場からは温かい拍手。まさに、おかえり大阪! だ。

 宇多丸は「MCを短くしろと厳しく言われた」そうだが、きっちりメンバー紹介や曲の紹介を入れ込み魅了していく。次に披露すると宣言したのは「渋谷漂流記」。リアルな渋谷は遠くピンとこない人も多い、ここは西梅田。その空気を感じ取った宇多丸は「みなさんにとっての大事な場所と重ねて聞いていただけたら幸いです」と曲を始めた。ゆったりとメロウで、この会場にバンドのグルーヴがピタリとハマる1曲。これまで煽り煽られる曲が続いていたが、ようやく観客たちの酒も進み始めた。飲みながら大事な場所に想いを馳せるのにピッタリのサウンド、“大人が感じるエモ”とはこういうことかもしれない。そしてみなさんの今日が輝ける1日でありますように! と「POP LIFE」へとつなげる。これまた会場とバンドの空気感を活かしたゆったりと聞けるアレンジになっていて、新鮮に響く。

 RHYMESTERのライブのすごみといえば、DJ JINがアナログレコードを使って(PCを使ってライブをすることも当たり前の令和に)サウンドメイクすること+そこに2MCがラップを乗せることだ。文章にしてしまえば当たり前に感じるだろうが、その点に尽きる。DJ JINが2つのターンテーブル、2枚のアナログレコードを駆使してサウンドを作り上げていく姿は毎度のことながら、ワクワクさせてくれるものだ。

 宇多丸の今日は誰のレコードですか? の問いに「ワシントンDCのパンクバンド、ソウル・サーチャーズが1974年に残した、『Ashley’s Roachclip』のレコードが2枚乗っています」とDJ JIN。それを操って作り出したサウンドにTHE BOOM BAPSが奏でる音が合わさったらどうなるか。「これが俺たちの今のヒップホップということになるわけです」と宇多丸が言い、「サバイバー」が始まっていく。RHYMESTER+THE BOOM BAPS、8人がそれぞれどんな音を発するのか絶対に見逃したくなくて、次の音、次のパフォーマンスを探すようなライブの見方ができるのがとても面白い。このステージにいるメンバー総当たりの異種格闘技のような1曲。それがこれまでRHYMESTERが発表してきたさまざまな楽曲のキラーフレーズが散りばめられた「サバイバー」であることに嬉しみが止まらない。

 会場からの長い拍手を切り裂くようにキーボードが音を放ち始める。「初恋の悪魔」だ。ホーンがなくとも華やかさを全く失わない、THE BOOM BAPS流アレンジのテンポを少し早めたスウィングジャズ。この会場、このシチュエーションにこれ以上ピタリとくる楽曲があるだろうか。宇多丸の「かっこよくね? マジで!」の言葉にも、拍手する以外の賛同方法をくれ! と思うほどに。

 ライブ後半は目の前に迫るホリデーシーズンを意識した曲をと、バンドアレンジで煌めきとポップ感が増した「Diamonds」、そして宇多丸とMummy-Dがスポットライトで浮かび上がり、2人でユニゾンアカペラ~バンドサウンドでかっこよさが増しに増した「B-BOYイズム」へ。この日の「B-BOYイズム」はDJ JINがデオダートの「Super Strut」のレコードをプレイし、バンドがセッションを乗せていくアレンジで披露しました、と演奏後に明かされる。ラストソングに、と選ばれたのはこの時期にピッタリの「サイレント・ナイト」。来る明日、そして早々にやって来る新しい年にも想いを馳せたくなる煌めくサウンドに包まれて、本編は締めくくられた。

 アンコールでは「いいよなぁ、俺そっち(客席)行きたいわ」というMummy-Dに宇多丸も「普通にこのライブ見たいよね。みんな、センスいいわぁ」というやりとりを挟んで、「The Choice Is Yours」が披露される。選ぶのも決めるのもキミだ、というRHYMESTERらしすぎるメッセージを全身で浴びるのが気持ちいい。これがラストソングだとわかっているからこそ、会場特有のステージと客席の近さも相まってここにいる誰もが高まっていくのが可視化できてしまう。そんな1stステージのエンディング。名残を惜しむようにRHYMESTERの3人が会場中に細やかに手を振り、観客とハイタッチする姿はとても印象に残った。

 バンドの音だけでもめちゃくちゃかっこいいものに、さらにかっこいいDJの音と、かっこいいラップが乗る。これがキングオブステージだと、斬新なサウンドで示してくるRHYMESTERのパフォーマンスの強さよ。何より3人が最高に楽しそうで、こちらもたまらない。だからこそRHYMESTERのライブを見ることをやめられないのだ。

Text:桃井麻依子
Photo:Hoshina Ogawa

◎セットリスト
【RHYMESTER “King of Stage at Billboard Live OSAKA 2025″】
2025年11月15日(土)大阪・ビルボードライブ大阪
<1stステージ>
1.Beautiful
2.Still Changing
3.Future is Born
4.渋谷漂流記
5.POP LIFE
6.サバイバー
7.初恋の悪魔
8.Diamonds
9.B-BOYイズム
10.サイレントナイト
EN.The Choice is Yours


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