<ライブレポート>Official髭男dismの可能性は無限大――TOYOTA ARENA TOKYOこけら落とし公演で見せた進化し続ける姿

2025年10月14日 / 17:00

 今年10月3日、東京・お台場エリアに新たな多目的アリーナ施設、TOYOTA ARENA TOKYOがオープン。同会場はB.LEAGUEのアルバルク東京のホームアリーナとして使用されるほか、ライブ/コンサートも開催される。そして、10月11日、12日に行われたのが、Official髭男dismによる音楽ライブのこけら落とし公演【Official髭男dism one-man live in TOYOTA ARENA TOKYO】だ。

 この公演が実現したきっかけは、「可能性にかけていこう」というTOYOTA ARENA TOKYOのコンセプトにOfficial髭男dismが共感したこと。今回の公演で彼らは、自らの可能性をダイレクトに見せつける、圧巻のステージを繰り広げた。

 18時半過ぎに会場に入ると、アリーナ、スタンドともにぎっしりと観客が入っていた。チケットは当然、ソールドアウト。記念すべき“TOYOTA ARENA TOKYOのこけら落とし公演”とあって、開演前から会場全体を心地よい熱気が包み込んでいる。

 いつものようにマイ・ケミカル・ロマンス「Welcome to the Black Parade」が流れ、オーディエンスは手拍子で応える。ここで暗転、再び照らし出されたステージには、藤原聡(Vo/Pf)、小笹大輔(Gt)、楢﨑誠(Ba/Sax)、松浦匡希(Dr)の姿が。10名のサポート・ミュージシャンとともに放たれたオープニング・ナンバーは最新アルバム『Rejoice』収録曲「Get Back To 人生」。さらに「TOYOTA ARENA TOKYO、こけら落としにようこそ! Official髭男dismです!」(藤原)という挨拶とともに届けられた「ミックスナッツ」、〈いつだってこうやって駆けつけるから〉というフレーズが印象的な「Second LINE」によってステージを取り囲む観客のテンションは早くも最初のピークへと達した。

 楢﨑がサックスを演奏した「ペンディング・マシーン」からは、このバンドの多様な音楽性を実感できる場面が続いた。「TOYOTA ARENAで絶対やりたかった曲です」(藤原)と紹介された「ブラザーズ」では、歌詞を“TOYOTAの車”に変更し、客席を沸かせる。さらにホーン隊がステージの前に進み、藤原がステージ後ろの花道でオーディエンスとコミュニケーションを取ることで、会場の一体感がさらに強まっていく。「360°(の客席)面白い!」と笑顔で叫ぶ藤原からは、この特別なライブを全身で楽しんでいることが伝わってきた。

 「今日はちょっと珍しい曲、“久しぶりにやりたい、今みんなに聴いてほしい曲”もミックスしています」(藤原)という言葉通り、この日のセットリストには新旧の楽曲が散りばめられていた。〈笑っちまうほど 夢見がちなのだ〉というフレーズから始まった「バッドフォーミー」では切なさと高揚感を同時に表現。さらに小笹のギターカッティングに導かれた「Same Blue」では爽やかな疾走感と緻密なギミックを交えたアレンジのなかで、青春という季節の葛藤や希望を鮮やかに描き出す。青空をモチーフにした映像も、楽曲のイメージをしっかりと増幅させていた。

 そしてメンバーの4人だけで演奏された「日常」(シャープに研ぎ澄まされたアンサンブルが素晴らしい!)からは、藤原のボーカルをじっくりと堪能できるゾーンへ。まずはバラードナンバー「LADY」。不確かで切なくて愛おしい、〈世界で一番素敵なLADY〉に向けた思いを抒情豊かに描き出す歌声には、ソウルフルという形容が良く似合う。ボーカルラインに絡む、アンディ・ウルフ(Sax)のサックスも素晴らしい。「Sharon」も絶品。神聖さ、温かさ、美しさを同時に感じさせてくれる藤原の表現力は、ここに来てさらに向上しているようだ。

 藤原のボーカルをしっかりと支え、楽曲の世界観を生々しく体現するバンドサウンドも明らかに進化していた。昨年7月23日に約1年5か月ぶりのワンマンライブ(東京・Zepp Haneda)を開催し、完全復活を遂げたOfficial髭男dism。その後、アルバム『Rejoice』を携えたアリーナツアーを行い、今年5月からは大阪・ヤンマースタジアム長居、神奈川・日産スタジアムにて初のスタジアムツアーを開催。さらに【SUMMER SONIC】、【ROCK IN JAPAN FESTIVAL】などの音楽フェスに出演するなど、精力的なライブ活動を続けてきた。そのなかで彼らは、ライブバンドとしてのポテンシャルをさらに引き上げてきたのだ。

 インディーズ時代の機材車“小豆色のトヨタ・ノア”(グッズのキーホルダーのデザインにも使われていた)のエピソードを話したあとで披露されたのは、「115万キロのフィルム」。大切な人と過ごす人生を記録(≒記憶)に残したいという思いが真っ直ぐに伝わってきて、豊かな感動へとつながる。リリースされたのは2017年だが、8年の時が過ぎ、メンバー自身も様々な経験をしてきたことで、この曲の深みはさらに深まっているように感じた。

 観客のシンガロングが鳴り響いた「TATTOO」からライブはクライマックスへと進み締める。エモーショナルなインスト曲を挟んで披露されたのは、最新曲「らしさ」(劇場アニメ『ひゃくえむ。』主題歌)。鋭い疾走感に貫かれたバンドサウンド、エモさ全開のメロディがぶつかり合うロックチューンだが、新曲にも関わらず、観客の反応も最高潮。現実に抗い、何が何でもやってみせるという思いを刻んだ歌詞を含め、「らしさ」は間違いなく、彼らの新たなアンセムとして浸透しているようだ。

 「ホワイトノイズ」ではステージ前に炎が立ち上がり、“エディ・ヴァン・ヘイレン”モデルのギターを持った小笹の速弾きソロが炸裂。エンディングは藤原のロングトーンによって、会場の興奮をさらに引き上げる。「Stand By You」ではこの日いちばんデカい合唱が巻き起こり、爆発的なテンションを生み出してみせた。
 
 ここで藤原は、TOYOTA ARENA TOKYOの“可能性にかけていこう”というコンセプトについて改めて言及した。ヒゲダンにとっての未来の可能性は、これから出していく曲、これからみんなと一緒に作っていくライブ。さらに大事にしたいのは、これまでの楽曲の可能性なのだ、とーー。「今まで僕たちが出した曲で、たとえば“この曲はちょっと意味がわからないな”と思っていた曲があるかもしれない。でも、その曲が持っている本当の力、本当の可能性をあなたたちが見つけるかもしれない。僕たちはそれを願って曲を作っています」

 そんな言葉とともに演奏されたのは、2019年にリリースされたアルバム『Traveler』の収録曲「ラストソング」。大らかなメロディと〈まだ遊びたりないよ もっと歌いたいのにな〉というフレーズが広がり、本編は終了した。

 アンコールの1曲目は「SOULSOUP」。ラテン濃度高めにパーカッション、巨大なミラーボールの光、開放的なホーンセクション、最高出力で放たれるボーカルが一つになり、エンターテインメントに溢れた音楽空間が出現。体を揺らし、大声で歌い、手拍子を打ちまくる観客たちもめちゃくちゃ楽しそうだ。

 「TOYOTA ARENA、こけら落とし公演の2日目、ボーナスステージのアンコール、お互い悔いのないようにやろうぜ!」という藤原のシャウトに導かれたのは「50%」。ダイナミックな松浦のドラム、“Whoa,Whoa”という壮大なコーラスから始まり、〈休んで備えて ここぞでだけで放って君の“100”%!〉というメッセージを響かせる。曲のなかで叫んだ「可能性にかけていこう。その言葉を背負って、俺達らしく、今までの曲、これからの曲、これからのライブ、すべてに可能性を感じて生きていくぞ!」という藤原の言葉も強く心に残った。

 TOYOTA ARENA TOKYOの記念すべきこけら落とし公演を“これ、キャリアハイでは?”と言っても過言ではないステージで飾った4人。その視線は既に次に向けられている。10月17日より全国47都道府県の映画館で劇場版『OFFICIAL HIGE DANDISM LIVE at STADIUM 2025』の上映がスタート。さらに12月から来年1月にかけて、4人だけで回るFC限定Zeppツアー【OFFICIAL HIGE DANDISM one-man tour FOUR-RE:ISM】、4月からは全国のホール、アリーナを巡るツアー【OFFICIAL HIGE DANDISM?one-man tour 2026】の開催も決定。ライブを重ねることによって彼らの音楽はさらにアップデートされるはず。この先で奏でられるOfficial髭男dismのポップミュージックはどんなものになるのか? 今から楽しみでしょうがない。

Text by 森朋之
Photo by 小杉歩

◎セットリスト
【Official髭男dism one-man live in TOYOTA ARENA TOKYO】
2025年10月12日(日)東京・TOYOTA ARENA TOKYO
1. Get Back To 人生
2. ミックスナッツ
3. Second LINE
4. ペンディング・マシーン
5. ブラザーズ
6. バッドフォーミー
7. Same Blue
8. 日常
9. LADY
10. Sharon
11. 115万キロのフィルム
12. TATTOO
13. らしさ
14. ホワイトノイズ
15. Stand By You
16. ラストソング
En1. SOULSOUP
En2. 50%
https://hgdn.lnk.to/TOYOTA_ARENA_TOKYO

※記事初出し時に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。


音楽ニュースMUSIC NEWS

イングリッシュ・ティーチャー、デビュー作のリミックス版配信 フォンテインズD.C. DJsら参加

洋楽2025年10月14日

 今年の【FUJI ROCK FESTIVAL】にも出演した英リーズを拠点に活動するイングリッシュ・ティーチャーが、デビュー・アルバム『ディス・クドゥ・ビー・テキサス』のリミックス・アルバムとなる『ディス・クドゥ・ビー・ア・リミックス・アル … 続きを読む

以前から交流のあるミッツ・マングローブが登場、『松任谷由実のオールナイトニッポンGOLD』

J-POP2025年10月14日

 10月17日22時よりオンエアのニッポン放送『松任谷由実のオールナイトニッポンGOLD』に、ミッツ・マングローブがゲスト出演する。  ミッツ・マングローブは、2005年に結成した音楽グループ・星屑スキャットとして、イベントやコンサートも開 … 続きを読む

ザ・ベス、初来日ツアーが2026年2月に決定

洋楽2025年10月14日

 ニュージーランド・オークランド出身のポップ・ロック・バンド、ザ・ベスの初来日ツアーが決定した。  2026年2月24日に東京・WWW X、25日に大阪・Yogibo Meta Valleyにて開催され、チケットの一般発売は11月1日からと … 続きを読む

ルーシー・デイカス、初来日公演が2026年2月に決定

洋楽2025年10月14日

 ルーシー・デイカスによる初来日公演が2026年2月18日に東京・Zepp Shinjukuにて決定した。  今年リリースしたニュー・アルバム『フォーエヴァー・イズ・ア・フィーリング』をひっさげたツアーの一環で、チケットの一般発売は11月1 … 続きを読む

吉田拓郎、1年1か月ぶり『オールナイトニッポンGOLD』パーソナリティ担当

J-POP2025年10月14日

 ニッポン放送『吉田拓郎のオールナイトニッポンGOLD』が、2025年10月24日22時よりオンエアされることが決定した。  吉田拓郎が『オールナイトニッポンGOLD』のパーソナリティを務めるのは、2024年9月13日以来、1年1か月ぶりと … 続きを読む

Willfriends

page top