<ライブレポート>Widescreen Baroqueが初ライブを開催 謎めく存在感の2人、映像、音楽が生み出した異世界

2025年9月5日 / 12:00

 異例づくしの初ライブだった。

 真部脩一(Composer)とHinano(Vo)によるユニットとして2025年6月に活動をスタートしたWidescreen Baroque。現時点で世に発表された楽曲は「Door to Door」と「NO.5」の2曲のみ。相対性理論での活動を経て、近年はano「ちゅ、多様性。」など数々のヒットソングを手掛ける作曲家として活躍してきた真部だが、ユニットとしては依然として謎めいた存在である。

 そんなWidescreen Baroqueが、8月26日に初のライブ【Widescreen Baroque pre.『WIDE SHOW』vol.0】を東京・WWW Xにて開催した。イベントは入場無料、電子チケット内のURLから、Support Boxにその気持ちを自由投資するという形式。さらにライブの映像制作にはRhizomatiksの真鍋大度をはじめ、奥山裕大、中田拓馬、半田壮玄、吉田慧悟らが参加。ライブの本編は動画撮影およびSNSへの投稿が許可されている。一体どういうことになるのか。満員のフロアには開演前から大きな期待感が渦巻いていた。

 映画のオープニングのような壮大なSEが鳴り響く中、真部とHinanoの2人がサポートメンバーを従えてステージに登場し、ライブは未発表の新曲「QUEEN」からスタート。まず目を奪ったのは演出だ。ステージ前面には紗幕が張られ、そこに映像が投影される。それ自体は珍しくはないが、今回使用されていたのはフロアからは存在が認識できないくらいの透明度の高いスクリーンだ。それをステージ奥のLEDビジョンと組み合わせることで立体的な奥行きが生まれる。幾何学的な模様が映ると、まるで目の前の空間に物体が浮かんでいるかのように見える。たとえば「Door to Door」では次々と扉を開けて宇宙を旅するような映像が映し出されるなど、楽曲の世界観とリンクするような映像表現となっていた。Hinanoの衣装に照明があたってキラキラときらめく様子も幻想的で目を引いた。まるで異世界を垣間見るような空間を作り上げていた。

 この日に披露したのは未発表11曲を含む全13曲。ほとんどが初披露の楽曲なのだが、真部ならではのキャッチーなメロディセンスがすぐに身体に馴染んでいく。サポートメンバーは、奥野大樹(Key)、澤村一平(Dr / SANABAGUN.)、森夏彦(B / Shiggy Jr.)という布陣。真部はキーボードとギターを持ち替えながら自在に演奏を繰り広げた。

 音楽性は幅広く、とりわけダンサブルな楽曲が目立ったのも発見だった。スペースファンク調の「UFOLOGY」、ミニマルなビートからジャジーに展開する「Tokyo Cruising」、手拍子で会場に一体感が生まれた「Bell Epoque」など、踊れるサウンドでフロアを沸かせオーディエンスを巻き込んでいくナンバーも多かった。

 何より印象的だったのはボーカリスト、Hinanoの存在感だ。初ステージとは思えないほどの堂々とした佇まいで、芯の強い歌声を響かせる。可憐なルックスにクールで透明感のある歌声が重なり、真部の中毒性の高いメロディとも抜群の相性を見せた。ライブの演出にはHinanoが携わり、彼女のイメージが映像表現に反映されているという。Widescreen Baroqueの世界観は真部の発想だけでなくHinanoのセンスとの化学反応によって生まれているところも大きいのだろうと実感した。

 終盤には爽やかなポップチューン「STAND BY ME」やスケール感あふれる「Pool Beauty」を披露。Hinanoのボーカルの伸びやかな響きを活かしたエモーショナルな楽曲には、アンセムとなる可能性を秘めた強度を感じた。

 アンコールで真部は「今日演奏した曲は14歳の頃の自分に向けて作った曲です。みなさんの中にいる14歳の心に刺さったり、新しい風景を見せられたらいいなと思っています」と語った。

 鮮烈な初ライブだった。真部脩一のポップセンスの源流にある空想世界が、Hinanoの表現力と多彩な演出によって新たな形に結実するのを目撃する時間だった。世間的にはまだ謎めいた存在かもしれないが、ここから話題は大きく広がっていくだろう。その最初の瞬間に立ち会った余韻が、終演後のフロアに漂っていた。

 さらにこの日、Widescreen Baroqueは10月31日に東京・代官山SPACE ODDでナイトイベント【LATE SHOW vol.1】を開催することを発表。こちらはバンドセットのWWW X公演とは異なり、2人体制での出演となる。TAKU INOUEや真鍋大度らDJ陣の出演も決定している。

 Widescreen Baroqueの、次の一歩も見逃せない。

Text by 柴那典
Photo by 横山マサト

◎公演情報
【Widescreen Baroque pre.『WIDE SHOW』vol.0】
8月26日(火)東京・WWW X

<セットリスト>
1.QUEEN
2.Door to Door
3.Figure Out
4.mech mech
5.Mark
6.UFOLOGY
7.Tokyo Cruising
8.Powerful Sun
9.NO.5
10.Bell Epoque
11.STAND BY ME
12.Pool Beauty
En. Japanese Funk


音楽ニュースMUSIC NEWS

デヴィッド・バーン、オリヴィア・ロドリゴの観客との“素晴らしい関係”を称賛

洋楽2025年9月5日

 デヴィッド・バーンが、現地時間2025年9月3日に放送された米トーク番組『ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン』に出演し、6月に開催された【ガバナーズ・ボール】でオリヴィア・ロドリゴのステージにサプライズで登場した経緯を … 続きを読む

今夜9/5『Mステ』藤井 風が初出演&BE:FIRSTは「空」披露ほか、森山直太朗/なにわ男子/ねぐせ。feat. 汐れいら/ME:I

J-POP2025年9月5日

 今夜9月5日21時より放送のテレビ朝日系『ミュージックステーション』に、藤井 風、森山直太朗、BE:FIRST、なにわ男子、ねぐせ。feat. 汐れいら、ME:Iが出演する。  『Mステ』初出演となる藤井 風は、本日発売の3rdアルバム『 … 続きを読む

パルプ、『コモン・ピープル』30周年記念エディション発売

洋楽2025年9月5日

 パルプによる1995年のアルバム『コモン・ピープル(原題:Different Class)』のリイシュー盤が、2025年10月24日に発売されることが決定した。  4LPと2CDの各フォーマットでリリースされる今回のパッケージには、アルバ … 続きを読む

山田涼介がジェラート ピケのモデルに起用、リラックスした雰囲気と大人の魅力を表現

J-POP2025年9月5日

 山田涼介(Hey! Say! JUMP)が、ルームウェアブランド・gelato pique(ジェラート ピケ)の2025秋冬シーズンコレクションのモデルに起用された。  第1弾は「JOEL ROBUCHON & GELATO PI … 続きを読む

ゆるめるモ!、新体制初のアルバム『虚無泥棒』リリース決定

J-POP2025年9月5日

 ゆるめるモ!が、ニューアルバム『虚無泥棒』を9月30日にリリースすることを発表した。  結成13周年を迎えたゆるめるモ!による通算6枚目で6人新体制としては初のフルアルバムは、”みんなの虚無を泥棒として盗む”という … 続きを読む

Willfriends

page top