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2025年7月、DIR EN GREYが約7か月ぶりとなる国内ツアーを開始した。【TOUR25 THE MORTAL CHAPTER 0】という、新章への突入を予感させるタイトルを冠した全13公演。まだ名も無い新曲もセットリストに組み込まれた本ツアーの中から、8月2日に開催された大宮公演の模様をお届けする。
新アルバムの制作中であることはメンバーが以前から言及しているものの、明確な新作のリリースが伴っていない今回のツアー。どんな楽曲が飛び出してくるかが全く想像がつかない中で、息を飲みながら席に付く。場内が暗転しSEが鳴り始めると、スクリーンには波形のような線が映し出される。SEをかき消す勢いで会場中から怒号のような歓声が響き渡る。このDIR EN GREYファンの爆発的なエネルギーはあらゆるアーティストの中でもトップクラスだ。
メンバーが位置に付くと、薫(Gt.)のタッピングが作り出す浮遊的な音像、そして静から動へと変化していく中で京(Voice)が客席を睨みつけるように表現していく猟奇的な世界観が特徴的な「鴉」からスタート。オープニングとしては意外な選曲だったが、会場を一気に自分達の色で染め上げるこの濃厚な世界観は秀逸の一言。昨年発売された最新シングル「The Devil In Me」がこれに続く。鬱屈とした心情、生きる意味を問う歌詩を赤裸々に投げかけてくるナンバーだ。その壮絶さに圧倒はされるものの、楽曲の持つグルーヴ感を筆頭に非常にライブ映えする楽曲でもあり、その証拠にファンのシンガロングが発生する箇所も複数あった。そして、美しいピアノの旋律が鳴り出す。ストリングスが加わり、薫、Die(Gt.)、Toshiya(Ba.)、Shinya(Dr.)重厚なバンドのサウンドが重なる。「LOTUS(Symphonic Ver.)」だ。京のハイトーンボイスが輝く、ただでさえ壮大なサウンドがシンフォニーによって何倍にも増幅。DIR EN GREYの中でもトップクラスに神秘的なこの名曲はいつ聴いても惚れ惚れする。
「LOTUS(Symphonic Ver.)」が終わると、スクリーンに<生 Living>という文字が浮かび上がる。そして始まったのは「Jesus Christ R’n R」。狂気的な詩世界がファンキーでダンサブルなサウンドに絡むロックチューンだ。過去のツアーで披露された時よりもさらに会場を一つにする力が増しており、オーディエンスとのコール&レスポンスでソニックシティの熱量も上昇していく。休む間もなく怪しげなSEが鳴ると、本ツアーで約8年ぶりの披露となった「Deity」へ。宗教的ヘヴィーチューンで会場を邪教徒のミサへと変貌させると、<もっと声を聞かせろ!>という煽りから聞き慣れない楽曲が始まる。本ツアーで披露されている1つ目の新曲だ。薫とDieによるザクザクしたグルーヴィーなギターフレーズや、アグレッシブに展開していく構成はライブ映え抜群。屠畜場を想起させる背景映像と共に強烈なインパクトを残していった。
Shinyaの民族的なタムフレーズが耳に残る「Celebrate Empty Howls」を経て、スクリーンには<破壊 Destruction>の文字が現れ、始まったのは最新アルバム『PHALARIS』収録の大曲「御伽」。難解ながらも赤裸々な世界観の歌詩を様々な声色で歌い分ける京のパフォーマンスにこちらも酔いしれる。そして、ここで再び聞き馴染みのない楽曲が始まる。本ツアー2つ目の新曲だ。こちらは重厚なグルーヴとパワフルなメロディーラインが特徴的でありながら、コンパクトな仕上がりに。もう1曲と共に音源化が待ち遠しくなるカッコよさだ。
スクリーンに<絶望 Despair>が映し出されると、不気味なSEとそれを切り裂くようなクリーンギターが響く。『The Insulated World』からプログレッシブ・メタルな「絶縁体」だ。心地よく会場を揺らすメロディックパートから激しく爆走する展開はどのような時でも血を滾らせてくれる。<信じる事>などの弦楽器隊によるコーラスワークも非常に“ロック”なカッコよさだ。そこから間髪入れずに「Ash」で畳み掛けていく。元は“Dir en grey”の最初期に生まれた楽曲の一つだが、それが形を変えた上で今もファンのヘドバンを誘発させていると考えると改めてこのバンドの濃密な歴史を実感する。『ARHCE』からスピードチューン「Revelation of mankind」でステージから放たれるサウンドの破壊力はさらに増していく。最後は、名曲「CLEVER SLEAZOID」でこの日最大の大合唱を生み出し、バンドはステージを去った。
アンコールにもサプライズが用意されていた。メンバーが再登場すると、始まったのは和のテイストが素晴らしく美しい名曲「かすみ」。ただ、何かが違う。『THE UNRAVELING』収録の再構築版ではなく、『VULGAR』収録のオリジナルバージョンが演奏されているのだ。バージョンの甲乙はつけがたいが、13年以上ぶりに原曲が披露される様子に思わず涙腺が緩んでしまった。
続いて、Toshiyaにスポットライトが当たり、「Bottom of the death valley」の印象的なベースイントロを奏でる。Toshiyaのスラップを駆使したベースソロからDieのブルージーな渋いギター・ソロへと突入する流れはいつ聴いても秀逸だ。京がこの曲で魅せる優しげな歌唱も素晴らしい。そして、余韻に浸る時間を与えないようにラストスパートに突入する。イントロのギターリフから会場を興奮の渦に変える「THE IIID EMPIRE」では、複雑なヴォーカルパートに難なくシンガロングで着いていくなど、オーディエンスの熱量が爆発。
ラストの前、京が最後の煽りに入ろうとするが、<生きてるか?生きてんだろ!生きてるよな!…今日俺ここの地名で一回も煽ってないねん…なんでか分かる?(どこにいるか)覚えてないからや。ここって埼玉ですか、千葉ですか?埼玉?埼玉のどこ?大宮?>と京が珍しくフランクにオーディエンスに話しかける形に。本日の会場が大宮にあることが確認できた瞬間、京はこの日一日分の<大宮!!!!>を何度も叫び煽った。レアな場面だったが、結果的にどのような煽りよりも一体感を生み出したと思う。その証拠に、締めくくりとして披露された「朔-saku-」において会場にいる全員が残りの力を振り絞りながら全身全霊で音を浴び、そして暴れ散らかしていた。
DIR EN GREYのライブは傍から見たら異様な光景かもしれない。だが、このようなダークで前衛的で、心の痛みや闇をさらけ出す表現を通してでしか観ることのできない光があり、それを必要としている人々が確かにいるのだ。本公演を観て改めてそれを実感することができた。このツアーで披露された新曲もおそらく収録されるであろう彼らの新アルバムは現在制作中。本公演を観て新作のリリースが待ちきれなくなったファンは筆者に限らず多くいるだろう。次の章ではどのような世界を魅せてくれるのか、楽しみで仕方がない。
Text:Haruki Saito
Photos:尾形隆夫
◎公演情報
【TOUR25 THE MORTAL CHAPTER 0】
2025年8月2日(土)埼玉・大宮ソニックシティ
<セットリスト>
1. 鴉
2. The Devil In Me
3. LOTUS(Symphonic Ver.)
4. Jesus Christ R’n R
5. Deity
6. 新曲
7. Celebrate Empty Howls
8. 御伽
9. 新曲
10. 絶縁体
11. Ash
12. Revelation of mankind
13. CLEVER SLEAZOID
アンコール:
14. かすみ
15. Bottom of the death valley
16. THE IIID EMPIRE
17. 朔-saku-
◎新規公演情報
【DIR EN GREY TOUR25 蜿蜒】
2025年11月10日(月)神奈川・KT Zepp Yokohama -「a knot」only-
2025年11月14日(金)愛知・Zepp Nagoya
2025年11月15日(土) 愛知・Zepp Nagoya
2025年11月21日(金)北海道・Zepp Sapporo
2025年11月23日(日)宮城・SENDAI GIGS
2025年11月28日(金)広島・CLUB QUATTRO
2025年11月29日(土)広島・CLUB QUATTRO
2025年12月6日(土)大阪・なんばHatch
2025年12月7日(日)大阪・なんばHatch
2025年12月10日(水)東京・Zepp Haneda
[開場/開演]
平日公演 17:45/18:30
土日祝日公演 16:45/17:30
◎イベント出演情報
【LUNATIC FEST.2025】
2025年11月8日(土)千葉・幕張メッセ国際展示ホール9-11
【BRAHMAN 30th ANNIVERSARY 尽未来祭2025】
2025年11月24日(月・振休)千葉・幕張メッセ国際展示ホール9-11
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