<ライブレポート>Mrs. GREEN APPLE、夢に見てきた光景に感動 計10万人動員した10周年記念ライブに続く次なる舞台は5大ドームツアー

2025年8月20日 / 16:00

 2025年7月8日にメジャーデビュー10周年を迎えたMrs. GREEN APPLEが、その記念ライブ【MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE~FJORD~】(読み:フィヨルド)を7月26日と27日に神奈川・山下ふ頭で開催した。本稿では2日目の様子をお伝えする。

 満面の笑みを浮かべてステージに登場した大森元貴(Vo.& G.)、若井滉斗(G.)、藤澤涼架(Key.)は、早速位置について「コロンブス」を鳴らす。頭上には虹色の花火が打ち上がり、アニバーサリーを盛大に祝福した。野外ライブならではの暑さ対策も万全。「ビターバカンス」のハイライトで放たれたウォーターキャノンがシャワーのように観客を包み、会場の気温を和らげると同時に、オーディエンスのテンションも一気に高めた。日も暮れてきて、心地よい海風が客席をクールダウンさせる効果もあったように思う。

 各日5万人・計10万人を動員した本公演。ステージから何百メートルも先にある山の形をしたもうひとつのエンドステージまで人でびっしり。ストリーミング総再生回数100億回を突破した日本初アーティストでありながら、「目に見えないところで誰かが聴いてくれている」現状が不思議でたまらないと、大森は以前語っていた。しかし、この日ばかりはドームクラスの数の観客を前に、「FJORD行けるか?」と問いかければ何倍もの声が戻ってくるのだから、その“目に見えていなかった”相手の大きさを実感せずにはいられなかっただろう。

 「FJORDへようこそ。今日は特別な日。5万人いるんだってさ。すごい人だな」とステージから見えるその景色に圧倒されている様子。大森曰く、ステージから最後列までは約1秒の音の時差があるという。そのズレを無くすという無謀ともいえる挑戦とオーディエンスのレスポンス練習を兼ねて、彼は煽り台詞を言い終わる前に「イエーイ!」を叫ばせる、5万人と“1秒先”のコミュニケーションを成立させてみせた。

 「早速だけど、みんなの近くに向かうね」と早くもセンターステージへ移動。テーマパークにあるような煌びやかなフロートに乗って、観客の間を抜けていく間も、3人は一生懸命に手を振るJAM’Sたちと積極的にコミュニケーションをしていた。

 大森が「楽しむ準備はできてますか?」と大いに煽って、「クスシキ」をライブ初披露。クラップを誘発しながら到着したセンターステージでは、藤澤のキーボードからスタートした「アンゼンパイ」が久々に披露された。一行はさらにフロートで移動していく。最後列に設けられたもうひとつのエンドステージからは、「ちょっと懐かしい曲やります」(大森)と言って、美しい紅掛空色を背景にデビュー年の楽曲「WaLL FloWeR」と「道徳と皿」が届けられた。

 「Magic」「Feeling」が演奏される頃には、すっかり日も暮れて開演からあっという間に1時間が経っていた。メインステージに戻ってきた3人は、ここでゆっくりMCの時間を取る。「涼しくなってきたけど暑いよね。具合が悪くなったら近くの人に言ってください」と気を配りながら、当の本人たちはいまだ興奮を抑えられない様子。若井は「待ちに待ったFJORD。昨日はドキドキして眠れなかったです。眠気がぶっ飛ぶくらいの熱気で興奮してます」、藤澤は「こんなにたくさんの人が遊びに来てくれてうれしいです。みんな元気なの?」と、うれしさのあまり、大森と若井さえも聞いたことのない、ハイテンションっぷりだ。

 Mrs. GREEN APPLE誕生の裏で犠牲にしてきたものも多かったと大森は言う。「青春を捨てて、このバンドにかけてきました。レコーディングや音楽の活動でその穴を埋めてきました。どうしたら多くの人に届けられるのか悶々と考えて、ストレスを溜め続けてきたけど、(今では)こんなに多くの人の前で演奏できて……これを夢に見てきました。ありがとうございます!」と誰よりもバンドの成長を噛みしめる。

 しかし、こんな景色を夢見ていた大森少年だが、バンドが大きくなっても心の穴はいつまで経っても埋まらないことに気づく。「こんな特別な日のために、柄にもなく曲を作ってきました。なんで音楽をやっているのか、なんでこのメンバーで鳴らしているのか。僕にとっても異色な曲です。僕の、僕ら3人の、Mrs. GREEN APPLEの楽曲です」と言って、新曲「Variety」が披露された。「若井!」「涼ちゃん!」と、大森がバトンを繋ぎ、受けた側は自分のパートを全うする場面が印象的だった。埋めてくれるものは何なのか、それはいつ訪れるのか。音楽家は孤独な職業と言われるが、一瞬で多くの誰かを喜ばせることで自分の存在意義を確認できるのも、人前に立つ者の特権でもある。私たちは、彼らがその「埋まらない何か」を埋めるものを探す永遠の旅の同伴者なのかもしれない。

 音頭調の切り替わりが楽しい「No.7」、風鈴がチリンと揺れ、何万もの青い光と合唱が呼応した「青と夏」には、人とのふれあいや楽しい気分が溢れていた。しかし、どんなに楽しい一日を過ごしても、布団に入るとある思考が頭の中を巡り、気持ちが沈み、感情が爆発して、ひとりで涙を流しながら眠る夜が来る。「どこかで日は昇る」と激昂する「Loneliness」の対比のあとに「breakfast」で朝を迎えた。ポップな調べにのせて届くのは、“なりたかった自分になれてなくても大丈夫”というやさしいメッセージ。憂鬱な気分から一転、「ベッドから起き上がれた自分、えらい!」と思えるような、あたたかで小さな魔法だ。

 しかし、藤澤の旋律で始まった「天国」で、再び日常は影を落とす。大森の苦悩に満ちた表情には、“あの頃”を思い出してか、時折、笑みが浮かび、それはどこか諦めのようにも見えた。最後には自分で自分を抱きしめる大森。本来はぶつっと途切れるように終わるこの曲も、この日のライブでは藤澤によって静かに締めくくられ、大森の中で何かが折り合いをつけたように思えた。そして、先ほどのことなどなかったかのように、間髪入れず「ニュー・マイ・ノーマル」へ突入。こんな感情のジェットコースターを颯爽と乗りこなす大森を見ていると、すべてがまるでフィクションのように思えて、少し混乱した。

 藤澤の映画初出演の話題や、雑誌の表紙&番組MCを務める若井の近況報告を経て、本編のラストスパートへ。「ここからもっとかっ飛ばしていきます。知ってたら歌ってください」の声とともに、「ダンスホール」「ケセラセラ」という、フェーズ2の勢いを象徴する大ヒットナンバーが立て続けに披露された。前を向いて歩いていく勇気をくれるヒーリング・ソングのあとに続いたのは、大本命「ライラック」。〈僕は僕自身を愛してる/愛せてる。〉――まるで、自分が欲しかった言葉を自分に突きつけるようなこのエンパワメント・ソングを、観客たちが一語一句、まっすぐに歌う光景は希望に満ちあふれていた。

 過去へと遡っていくライブのダイジェスト映像のあと、3人がアンコールに選んだのは「我逢人」。小さなライブハウスから蒔いてきた種の開花をあらためて実感させる。この日までに様々な史上初を作ってきたミセスは、新たに日本人アーティスト初となる、本ライブとドキュメンタリー映画の同時公開を発表した。

 快挙が立て続けに生まれている中でも、大森はこう語った。「ランキングとかチャートとかありがたいことが起きていて、僕らもよくわかんないんですけど、そこに惑わされることなく、僕らは僕らがいいと思うもの、楽しいと思うものに邁進していくことを大事にして、これからも活動していきます。いつもありがとうございます!」

 音楽を始めた頃の初心は決して見失っていない。「いつでもスタートに戻ろう」という言葉とともに始まった、正真正銘のラストナンバー「StaRt」に合わせて、1200機のドローンが巨大なバンドロゴや「THANK YOU ALL JAM’S」というメッセージをステージ上空に描き、最後にはこれでもかと言わんばかりに連続花火が打ち上がる。ドレミの音階と共に盛大なフィナーレを飾った。

「幸せな時間でした。こうして10周年をこの場にいる方たち、そして配信を見ている方たちと一緒に迎えることができて本当にうれしいです。これからもMrs. GREEN APPLEをよろしくお願いします。」(若井滉斗)

「本当に最高な一日でした。みんなと一緒にライブを楽しみながら、自分が音楽を始めた頃やメンバーに出会ってミセスに入ったことなど、いろんな瞬間を思い出しました。今日来てくれたみんな、配信を見てくれているみんなと最高な時間を作れたことが幸せです。一生忘れません。ありがとうございました!」(藤澤涼架)

「皆さん、今日は楽しかったですか? 僕たちもです。素敵な思い出が増えました。どれも濃密で大切な思い出だけど、これからもっと思い出が増えていくんだと感じました。多くの人が聞いてくれている事実がありますが、多かろうが少なかろうが、僕らは僕らのために曲を書いて、巡り巡って誰かのもとに届いていることが、たまらなくうれしいです。それは今日ここにいる5万人や配信や映画館で見ている人数が(多くて)うれしいということでもなく、一人一人が生活の中でミセスを聴いてくれていたり、誰かに誘われてライブに来てくれたり、そういう一つ一つの瞬間がたまらなくうれしいです。見つけてくれて、気づいてくれてありがとうございました! 大きいステージでキラキラと演奏するステージマンを空想・妄想する子どもだったんですけど、今日の景色は想像していたその日よりも、とっても素敵なものでした。ありがとうございました! また会おうぜ。」(大森元貴)

 最後、「以上、Mrs. GREEN APPLEでした!!」と声を合わせ、深々とお辞儀をする3人に拍手喝采が鳴りやまなかった。各日5万人動員ながら、それでもチケットが手に入らなかったファンも多く、その人気の高さは計り知れない。そんなMrs. GREEN APPLEは、10月25日・26日の愛知・バンテリンドーム ナゴヤを皮切りに、自身史上最大規模となる5大ドームツアー【DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”】が控えている。こちらは全12公演で計55万人を動員する予定だ。

 ここからは筆者の私見になるが、当日は開演前こそ日照りが強かったが、夜になるにつれて海風がいい冷却効果をもたらし、予想以上に快適だった。会場付近の催しにも多くの人が集まり、その経済効果は◎。新たなエンタメの地・横浜に、一度に多くの観客を収容できる会場があることは、今後もっと盛んになるであろう音楽イベントの救いだ。しかし、天候や風向きに大きく左右されるという課題もある。気候変動と向き合いながら、問題を解消・軽減するためのケーススタディとして今回の事例が活用されることを願うと同時に、コンサートを主目的としない会場で、観客に快適な音響体験を届けるまでに重ねられた数えきれない検証、現場のプロフェッショナルたちのたゆまぬ努力にも敬意を払いたい。一つ一つの挑戦が今のスタンダードを築いたことにあらためて気づかされた。また、私たちプロフェッショナル以外の人たちが少しの知識を持っているだけでも、物事の捉え方も格段と変わるだろう。

Text by Mariko Ikitake
Photos by 田中聖太郎写真事務所

◎セットリスト
【MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~】
1. コロンブス
2. ビターバカンス
3. フロリジナル
4. ANTENNA
5. クスシキ
6. アンゼンパイ
7. WaLL FloWeR
8. 道徳と皿
9. Magic
10. Feeling
11. Variety(新曲)
12. No.7
13. 青と夏
14. どこかで日は昇る
15. Loneliness
16. breakfast
17. 天国
18. ニュー・マイ・ノーマル
19. ダンスホール
20. ケセラセラ
21. ライラック
<アンコール>
1. 我逢人
2. StaRt


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