<ライブレポート>阿部真央、1年半ぶりのビルボードライブ・ツアー完走 “変わらぬ想いと今という軌跡”

2025年7月9日 / 20:00

 シンガーソングライターの阿部真央が東横阪ビルボードライブ・ツアー【Abe Mao Billboard Live Tour 2025】を開催した。初登場となる横浜、1年半ぶり二度目となる大阪と東京のビルボードライブでそれぞれ1日2公演、合計6公演を実施。6月21日(土)にビルボードライブ東京で行われた2nd Stageでファイナルを迎えた。

 開演時間になると、和田建一郎(Gt)、幡宮航太(Pf)、ぬましょう(Per)からなるバンドメンバーに続き、阿部真央が観客に向けて笑顔で手を振りながらステージに上がり、いきなりMCを始めた。「私はビルボードライブに立つといつも緊張しちゃうので、最初、乾杯からやります」と宣言。緊張してるようには見えなかったが、本来はここでバンドメンバーの紹介をやる予定だったそうなので、やはり緊張があったのだろう。「1曲目の前に乾杯する人はあんまりいないそうです」と苦笑いしながらも、「今日はリラックスして、ゆるっと楽しんでいってください」と乾杯した彼女は、2017年にリリースした出産後初となる7枚目のアルバム『Babe.』のリード曲「愛みたいなもの」でライブをスタートさせた。愛のネガティブな部分や深い悲しみが綴られた歌詞だが、アコギ、ピアノ、カホーンからなるアコースティック編成で奏でるワルツのビートと優しく温かい歌声が、まるで泣き疲れた子を寝かしつける子守唄のようにじんわりと心に響く。続いて、「君に出会うまでは、本当の愛がどういうことなのか、愛するというのがどういうことかわからなかった曲です」という言葉から「I Never Knew」へ。ピアノとヴォーカルのみの歌い出しから手拍子が始まるとパーカッションによるファンキーなビートも加わり、阿部のソウルフルな歌声は熱を増していった。さらに、「皆さんと一緒に歌いたいなと思いまして」と呼びかけた「Somebody Else Now」では大合唱が巻き起こり、観客が歌う主旋律に阿部が上ハモを重ね、この場でしか味わえれないようなかけがえのない一体感を生み出していった。

 「大変久しぶりにやる曲です」と前置きをした後、「先のことは何にもわからないけど、あなたを思う気持ちだけは本物で、ずっとあなたを愛しますという歌です」と説明した「always」では耳元で囁きかけられているような親密な歌声とピアニカ、オルガンの音色によって場内を穏やかで温かいムードで包み、「母である為に」では“私”や“僕”ではなく、“母”という一人称で息子への揺るぎのない強い愛を表現。さらに、「また違った母の愛について歌った、一番新しい曲」と言葉を添えた「マリア」では、まるで教会で膝まずき、天に向かって繰り返し<微笑みは愛か支配か>と問いかけるかのような切実な歌声を響かせた。“支配”よりも“慈愛”を感じさせた歌声に続き、「側にいて」「傘」では彼女の歌声に宿っている圧倒的な熱量を放出し、オーシャンドラムとボンゴに導かれた「I’ve Got the Power」では静から動、ローからハイへと一気に飛び移り、息を飲むほどのダイナミズムを体現。臨場感たっぷりのアンサンブルによって観客を歌の世界観に引きずり込んで没頭させた。

 ここで、阿部は「小学5年生、11歳くらいかな。私が人前で歌うの楽しいな、歌手になりたいなと思ったきっかけのカラオケ大会で歌わせていただいたアーティストの曲です」と語り、宇多田ヒカルの16歳でのデビュー曲「Automatic」のカバーを披露。「これまでの5公演で一度も歌詞をちゃんと歌えたことがないくらい難しい」と語っていた楽曲を見事に歌いきると場内からは大きな拍手と歓声が送られた。続いて、阿部が高校生時代に作った「ポーカーフェイス」では明るく楽しい雰囲気の中で観客が座ったままでお馴染みのフリを繰り出すと、遠距離恋愛の相手に対する苛つきや寂しさ、不満をポップに昇華した「ロンリー」では<貴方だけでいいのに>というフレーズで大合唱が起こり、会場が1つとなった。

 これまでの公演はこの「ロンリー」で終わり、アンコールはなしという構成だったが、「ファイナルの2nd Stageのみ、もう1曲やります」と宣言。15年くらいお世話になっているという照明スタッフの娘さんが会場に来ていることを明かし、「私が勝手に妹のように思ってる娘さんが婚約されまして。『真央ちゃん、娘のためにサプライズで“いつの日も”を歌ってほしい』とお願いされたんですが、『当たり前じゃないですか! 私の妹だよ!!』と返しました。新しい門出に対して歌いたいと思います」と語り、「いつの日も」を歌唱。一回目は途中で間違い、「もう一回いいですか!」と歌い直すシーンもあったが、今、側にいる大事な人を死ぬまで愛していけたら幸せだという思いを込めたラブバラードを心を込めて歌い上げると、最後のサビではステージ後方の幕が開き、東京の夜景が広がった。2010年のリリース当時は別れた相手に対する歌という印象だったが、この日の歌唱では永遠の愛を誓うプロポーズソングにも聞こえたし、親から子へのラブレターにも聞こえた。特に<次に生まれ変わっても 貴方を捜すから もう一度見つけて>というフレーズには全くの部外者ながらも感動の涙が誘われ、場内からは祝福を込めた拍手が湧き起こった。「ポーカーフェイス」「ロンリー」「いつの日も」と、15年前となる2010年の楽曲を続けたのもこの日ならではだろう。阿部は「私情ですみません」と謝っていたが、照明スタッフの娘さんの結婚式で阿部真央が歌うプライベートな場面に同席させてもらったような特別な一夜となった。

Text by 永堀アツオ
Photos by Kana Tarumi

◎セットリスト
【阿部真央「ABE MAO Billboard Live Tour 2025」】
2025年6月21日(土)東京・ビルボードライブ東京 2ndステージ
01. 愛みたいなもの
02. I Never Knew
03. Somebody Else Now
04. always
05. 母である為に
06. マリア
07. 側にいて
08. 傘
09. I’ve Got the Power
10. Automatic(オリジナル:宇多田ヒカル)
11. ポーカーフェイス
12. ロンリー
13. いつの日も

 

◎ツアー情報
【阿部真央ホールツアー2025 – On My Way Home -】
10月11日(土)大阪・オリックス劇場
10月13日(月・祝)福岡・福岡市民ホール 中ホール
10月18日(土)北海道・共済ホール
10月26日(日)愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
11月3日(月・祝)東京・LINE CUBE SHIBUYA

【阿部真央アコースティックツアー2025 – On Your Way Home -】
11月22日(土) 広島・BLUE LIVE 広島
11月24日(月・祝) 兵庫・神戸朝日ホール
11月28日(金) 宮城・仙台darwin
11月30日(日) 新潟・新潟LOTS
12月3日(水) 大分・DRUM Be-0
12月4日(木) 大分・DRUM Be-0
12月6日(土) 熊本・B.9 V1
12月19日(金) 東京・草月ホール


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