lynch.【TOUR'25「UNDERNEATH THE GREED」】ツアーファイナルの公式レポート到着

2025年7月4日 / 20:00

 lynch.の20周年アルバム『GREEDY DEAD SOULS / UNDERNEATH THE SKIN』をひっさげた【TOUR’25「UNDERNEATH THE GREED」】のツアーファイナルとなるSpotify O-EAST公演のライブレポートが到着した。

 クライマックスの先にはさらなる絶頂があり、チャレンジし続けることでそれは際限なく高められていく。2025年6月20日、渋谷Spotify O-EASTで行なわれたlynch.の東京公演での熱狂は、ふとそんなことを思わせた。早々に完全ソールドアウトになっていただけに会場内は2階席も含めて立錐の余地もないほど。そのライブ自体も、アンコールを含めて24曲に及ぶ濃密な演奏プログラム終了後、鳴りやまない歓声に応えてさらにもう2曲披露されるという大盛況となった。

 この公演は、去る4月18日に横浜で幕を開けた全国ツアー 【TOUR’25「UNDERNEATH THE GREED」】を締め括るもの。このツアー自体は、lynch.の結成20周年を記念して多角的に展開されている「lynch. 20th ANNIVERSARY PROJECT」の第5弾にあたるものだ。彼らが2005年4月に自主リリースした1stアルバム『greedy dead souls』、同年11月に発売されたシングル『underneath the skin』の全収録曲の再構築とアップデートを狙いとする最新アイテム『GREEDY DEAD SOULS / UNDERNEATH THE SKIN』の発売を受けてのものである。そもそもツアー開始直前にリリースされる予定だった同作品は、制作上の事情により4月30日に世に出ることになった。そのためツアー序盤の公演は、オーディエンスにとって、生まれ変わった約20年前の楽曲群を音源解禁前に体感することのできるプレミアムな機会となった。そしてこのファイナル公演における熱狂は、今回のツアーを通じてそうした楽曲群が5人の中でさらに消化され、切れ味と説得力を増してきたこと、ファンがこの期間中に音源をどれほど聴きこんできたかということを実証するものとなっていた。

 ほぼ定刻に会場内が暗転すると、オープニングSEの「SLEEPY FLOW」が流れ、「ここは本当にSpotify O-EASTなのか?」と感じさせられるほど大きな歓声と手拍子が渦巻き始める。玲央(gt)、晁直(dr)、明徳(ba)、悠介(gt)の順でステージ上に姿を見せたメンバーたちが各々の配置に就き、悠然とした足取りで葉月(vo)が歩み出てくる。まず、この“登場感”がたまらない。そして、歓声がいっそう高まるなかで、フロントマンはいつものように「lynch.です。よろしくお願いします」と最初の挨拶を丁寧に済ませ「遊ぼうぜ!」と呼びかける。次の瞬間に炸裂したのは「UNKNOWN LOST A BEAUTY」だ。背景には今回のツアーのキー・ヴィジュアルが映し出され、晁直を除く4人は各々の定位置にとどまることなくステージの前線を動き、一瞬たりともその場に立ち尽くすことを許さぬかのようにポジションを入れ替え続けていく。

 序盤は、勿体をつけるような展開ともソロ・パート的なものとも無縁な、3分間にすら満たない曲ばかりが4曲続いた。そうしたコンパクトさは、いわゆるハードコアを背景の一部としながら始まったこのバンドの初期楽曲の特色のひとつといえる。当時のlynch.は葉月、玲央、晁直という3人体制で、そこにサポート・ベーシストを加えて活動していたわけだが、現在の彼らは、その頃のような突進力にまかせて激情を吐き出していた未成熟なバンドとはわけが違う。悠介、明徳との合流を経て完全体となったlynch.は、当時の勢いはそのままに、模索と実験、試行を重ねながら自分たちならではのアイデンティティを確立し、説得力に裏付けられた攻撃力とでもいうべきものを持ち合わせている。今回のリテイク作品を通じて感じさせられた“変化”も、まさしくそうしたものだった。つまり、彼らの根底にあるものは少しも変わっていない。やりたいことが大きく変わったわけでもない。その“変化”は変わることを目的とするものではなく、あくまで自分たちを高めていくために重ねられてきた“進化”であり“深化”だったのだ。実際、懐かしく感じられて当然であるはずの楽曲ばかりが続いているというのに、それらすべてが新鮮であると同時に「これぞlynch!」と言いたくなるような“らしさ”に溢れていた。

 しかもこのバンドの“らしさ”は烈しさや激情ばかりではない。「矛盾と空」から「無題」、そして「らせん」、「ラティンメリア」を経て「QUARTER LIFE」へと続いていった中盤のブロックには、それとは対を成すような彼らの繊細さ、感傷的な匂いが集約されていた。そこで感じられた二面性には、光と闇、静と動というようなきっぱりとしたコントラスト以上の深みが感じられた。セットリスト上でいえば、山場ばかりが続く中に設けられた“谷”の部分がこのブロックということになるのだろうが、それは過熱状態にあるオーディエンスをクールダウンさせるためのものではまったくない。むしろ内的な興奮や高揚感がもたらされ、外側からも内側からも熱くなっていく。だからこそ逆に、こここそが“山”なのではないかと感じさせられもした。逆もまた真なり、ということなのだろう。

 セットリストといえば、このツアーにおいて彼らは2種類の演奏プログラムを用意してきたが、この夜の演奏内容はそのどちらとも異なったものだった。このファイナル公演のために、A案でもB案でもない、新たなC案が採用されていたのだ。当初、バンド内には「最終公演だけ特別感が強まり過ぎてしまうのでないか」という懸念もあったようだが、最終的には「一度くらいは、リテイクした楽曲すべてが網羅された日があってもいいのではないか」という判断に至ったのだという。そして結果、このライブにおいて彼らは『GREEDY DEAD SOULS / UNDERNEATH THE SKIN』の3枚のディスクに収められていた22曲をすべて披露したのだった。ひとつだけ補足しておくと、本編にもアンコールにも組み込まれていなかった「ABOVE THE SKIN」は、再度のアンコールに応えた際に満を持して演奏された。

 また、アンコールの演奏が始まる前には、一度にはすべてを覚えきれないほどの新情報が葉月の口から明かされた。この場で「lynch. 20th ANNIVERSARY PROJECT」の今後の展開について公表されることを予測していたファンも当然ながら少なからずいたはずだが、まさか彼らのリテイク作品に“つづき”があること、しかもそのレコーディングが完了に近付いていること(正確に言うと、演奏パートはすでに終了し、葉月のヴォーカル録りだけが残された状態にあるそうだ)は想像できていなかったことだろう。そのリテイク作品第二弾は『THE AVOIDED SUN / SHADOWS』と題されており、そのタイトルが示しているように、やはりインディーズ時代の作品である『THE AVOIDED SUN』と『SHADOWS』に新たな生命が吹き込まれたものとなる。

 しかも9月24日の同作リリースを受け、10月下旬からは【TOUR’25「THE AVOIDED SHADOWS」】と銘打たれた全14公演のツアーも実施。そしてさらにlynch.の結成記念日の翌日である12月28日には、20周年記念プロジェクトの流れを華々しく締め括るべく、彼らにとって初となる東京ガーデンシアターでの公演が開催されることが決定した。ちなみに同公演には【lynch. 20TH ANNIVERSARY XX FINAL ACT「ALL THIS WE’LL GIVE YOU」】とのタイトルが掲げられている。

 そうした最新情報がひとつひとつ明かされていくたびにオーディエンスは歓喜の声をあげ、それがさらに会場内に充満しきった熱を高めていくことになった。また、メンバーたちがこの日のステージ上で発した言葉の数々にも、印象深いものが多かった。なかでも本編終了の際に葉月が口にした「本当にありがとう。これがやりたかったんです!」という言葉からは、彼自身が20年前から抱えてきた願望がついに成就したかのような素直な喜びが伝わってきた。彼は序盤にも「20年後にこんな景色の前でやれるとは、(当時は)思ってもみなかった」とも語っていた。そうした想いを、当時から彼と活動を共にしてきた玲央と晁直も共有していたはずだし、lynch.を“完全体”へと導くことになった悠介、明徳にも特別な感慨深さがあったに違いない。

 ダブル・アンコールを含むすべての演奏が終わるころには、すでに演奏開始から2時間15分ほどが経過していた。こうしてひとつの流れが終わり、また新たな流れが始まっていく。とはいえ今現在は、彼らにとって大きな節目となるべき大切な年の、上半期が終わったばかり。アニヴァーサリーに伴うこうした一連の動きを経た先にどんな未来が広がっているのかが楽しみなところだが、まずは今年後半に控えているさまざまなことを、ひとつひとつじっくりと味わっていきたいところだ。この先も間違いなく、クライマックスが更新され続けていくことになるはずである。

Text:増田勇一

◎公演情報
【lynch. 20th ANNIVERSARY PROJECT “XX act:5”TOUR’25「UNDERNEATH THE GREED」】
2025年6月20日(金)東京・Spotify O-EAST

セットリスト
1 UNKNOWN LOST A BEAUTY
2 VERNIE
3 59.
4 DIZZY
5 STUCK PAIN
6 REW
7 MELT
8 LIZARD
9 THE WHIRL
10 矛盾と空
11 無題
12 らせん
13 ラティンメリア
14 QUARTER LIFE
15 GOD ONLY KNOWS
16 STARZ
17 ALIEN TUNE
18 DISCORD NUMBER
19 PULSE_
20 A GRATEFUL SHIT
アンコール:
21 GALLOWS
22 FAITH
23 OBVIOUS
24 EVIDENCE
Wアンコール:
25 ABOVE THE SKIN
26 TIAMAT


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