<コラム>XGが世界的成長を果たす兆し?【コーチェラ】出演前後のストリーミング再生回数を考察【STREAMING WATCH】

2025年5月1日 / 20:00

 デビューから約3年で【コーチェラ・バレー・ミュージック&アート・フェスティバル2025】への出演という快挙を成し遂げたXG。悪天候ながらも力強いパフォーマンスを見せた1週目、そしてガラリと衣装を変え、一層パワフルなステージを繰り広げた2週目の公演はいずれも、SNSで話題となり多くの音楽ファンを惹きつけた。今回の出演は彼女らの楽曲の視聴にどのような影響を与えたのだろうか。本稿では、現地ストリーミング再生回数の変化をデータに基づき考察する。

 「分析には、LUMINATE社によるグローバル音楽データ分析ツール「CONNECT」を使用。全米、ならびに会場近郊の3都市(ロサンゼルス、サンディエゴ、パームスプリングス)におけるストリーミングデイリー再生回数(集計期間:現地時間4月6日~4月24日)を抽出した。

 また比較対象として、【コーチェラ】のメインステージにヘッドライナーとして出演したレディー・ガガ、グリーン・デイ、ポスト・マローンの再生回数も集計した。各アーティストによって実数に差があるため、集計開始日である4月6日の再生回数を基準にし、その変化率の推移に着目して分析を行った。

※(Local)はロサンゼルス、サンディエゴ、パームスプリングス3都市の合計再生回数、(Local)なしのは全米の再生回数 

  図が示す通り、【コーチェラ】出演後、XGは最高で約200%と、ヘッドライナー陣の最大約150%を上回る全米における再生回数増加率を記録した。特に、全米平均よりも、会場近隣3都市における増加率がさらに顕著であるのはXG(約217%)とレディー・ガガ(約150%)の2組で、ダンス・パフォーマンスによるローカルな盛り上がりが考えられるだろう。

 なお、4月17日にはシアトルにて【XG 1st WORLD TOUR “THE FIRST HOWL”】の追加公演が開催され、その影響か、【コーチェラ】のウィークエンド1とウィークエンド2の間においても再生回数の増加が観測された。

 さらに、【コーチェラ】は近年YouTubeとの連携をさらに強化し、両週末にわたって全世界配信する体制を整えた。このグローバル配信体制は、従来の「現地体験」にとどまらない、世界同時参加型のフェスとしての新たな価値を創出している。こうした取り組みにより、アメリカ国内にとどまらず、世界各地の音楽ファンとの接点が劇的に拡大していることが示唆される。下図に示すように、XGの【コーチェラ】出演に伴うアメリカ国外でのビデオ再生数の推移は、注目すべき変化を示している。

 
 比較対象として、圧巻のパフォーマンスが話題となったレディー・ガガ、ならびに同じく非米国出身であるLISAとJENNIE(いずれもBLACKPINKメンバー)のデータも抽出。3組の最大変化率が約170%に留まる一方で、XGは最大約228%という伸びを記録した。これは、母国・日本を含む複数の地域での認知度が高まったことを示唆している。特に、【コーチェラ】というグローバル・フェスにおいて、リアルタイム配信やアーカイブ視聴を通じた可視性が飛躍的に高まり、ソーシャル・メディアとの連動による爆発的な拡散力が、その認知拡大に大きく寄与していると考えられる。

 現在、【コーチェラ】をはじめとする主要音楽フェスティバルは、YouTubeや自社配信プラットフォームを駆使しながら、配信収益と国際的ファンベースの構築に注力している。その結果、デジタル・ステージはアーティストのキャリア形成における不可欠な要素となりつつある。特に、XGのような非英語圏出身のアーティストにとって、配信を通じたグローバル展開は、自国の壁を越えた新たなマーケットへの扉を開く鍵になっている。

 以上から、【コーチェラ】といった世界屈指の音楽フェスに出演する効果は明らかだ。では、海外で単独公演を開催することにはどのような効果があるのか。以下は、XGが2024年に【XG 1st WORLD TOUR “THE FIRST HOWL”】のアメリカ公演を開催した際、各都市における再生回数増加率の推移となる(2024年9月19日を基準、前述追加公演を除く)。主要都市近郊にて開催された公演は、隣接する主要都市のデータを使用している。

 
 このデータによると、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスといった大都市では、公演の開催が再生回数に与える影響は比較的小さいことが明らかとなった。一方で、XGは2024年11月8日にアルバム『AWE』をリリースしており、図が示すように、これらの都市では公演よりもリリースの影響の方が顕著であった。

 それに対し、ラスベガスなどの中小規模都市では、公演の開催が再生回数の増加に対してより大きな効果を示した。この違いは、都市規模によるファンダムの成熟度の違いに起因している可能性がある。つまり、大都市ではXGの認知度やファン層がすでに形成されており、公演参加者も既存リスナーが中心となるため、公演による再生回数の変化は限定的だったと考えられる。

 一方、地方都市においては、これまでXGを知らなかった人々に公演を通じてリーチでき、新規リスナーの獲得につながったことで、再生回数の増加がより顕著になったと推測される。また、新作リリースの際には、都市による差異が小さく、再生回数の増加率が概ね一様であったことから、リリースによる影響は主に既存のリスナーによるものであり、新規参入者への影響は比較的に限定的であったと考えられる。

 総括すると、【コーチェラ】出演はXGのストリーミング再生回数を世界規模で瞬時に押し上げる強力なカタリストとなり、ヘッドライナーを凌ぐ増加率を生み出した。一方、単独ツアーは都市ごとのファンダム成熟度に応じて効果が分化し、大都市では既存ファンのエンゲージメント維持、中小都市では新規層の開拓という役割を果たした。さらに、アルバム『AWE』のリリースは地理的偏在をほとんど伴わず既存リスナーを中心に底上げをもたらした点から、作品発表とライブ施策は相補的に機能していると言えるだろう。

 もちろん、前回の【STREAMING WATCH】でも触れた通り、再生回数の絶対値や全体シェアから見ると、日本発アーティストの海外進出には依然成長の余地が大きい。しかし、XGが展開した「単独ツアー」「新作リリース」「フェス出演」という異なるスケールでの立体的なアプローチは、短期的なバズを長期的なファンダム拡大へと転換し、世界規模での持続的な成長につながる鍵となるかもしれない。


XG

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