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THE YELLOW MONKEYのホールツアー【THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~ <BLOCK.2>】のファイナルが、岡山・倉敷市民会館にて開催された。
昨年5月に通算10枚目となるアルバム『Sparkle X』をリリースしたTHE YELLOW MONKEY。今回、そのツアーは<BLOCK.1><BLOCK.2><BLOCK.3>そして、<FINAL BLOCK>と4つに分けて行われている。
昨年12月28日に東京・日本武道館で幕を閉じた<BLOCK.1>は、リリース30周年を迎えた彼らにとって通算3枚目のアルバム『jaguar hard pain』と、新作『Sparkle X』を織り交ぜたセットリストが話題となった。そして、今年1月8日の愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホールを皮切りにスタートした今回の<BLOCK.2>は、今年でリリース30周年を迎える4thアルバム『smile』と『Sparkle X』のコラボレーションである。
2016年に再集結して以降、今なおシーンの第一線を走り続けているTHE YELLOW MONKEY。今回の試みは、そんな彼らの「軌跡」を振り返り、それが「今」へとどう繋がっているのかを再確認する絶好の機会といえよう。
なお、この<BLOCK.2>ファイナル公演は、公式動画サブスク『TYM STORAGE』(THE YELLOW MONKEYのライブ映像を視聴できるサブスクリプションサービス)にて定点カメラ生中継が行われ、チケット争奪戦となったこの日のステージを、全国各地のTHE YELLOW MONKEYファンがサイト上でも楽しんだ。
冷たい小雨がぱらつく中、美しい倉敷の街並みを歩き会場へと向かう。およそ2000人キャパの倉敷市民会館には、再集結後に彼らを知ったと思しき若い世代のファン、そして親子で揃いのツアーグッズを身につけた2世代ファンまで、実に幅広いオーディエンスが駆けつけ2階席までびっしりと埋まっている。
開演時刻の17時半が近づき、ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「I’m Waiting for the Man」がホールに響き渡ると、そのリズムに合わせたオーディエンスのハンドクラップが次第に大きくなり、あちこちから声援が飛び交い始めた。1階席はもちろん、2階席まで気づけばほとんどの人が立ち上がり、バンドの登場を待ち焦がれる人々の熱気で溢れ返った。
突然の暗転と共に、「考える煙」(東京ドーム公演でも使われ、その日の演奏も取り入れられたインスト曲)が爆音で流れ出すと会場は早くも最初のピークへ。歓声と拍手が渦巻くなか、メンバーの吉井和哉(Vo/Gt)、菊地英昭(Gt)、廣瀬洋一(Ba)、菊地英二(Dr)が、サポートメンバーの鶴谷崇(Key)とともにステージに姿を現す。
まずはアルバム『Sparkle X』の最後を飾り、喉の病気を経て「復活」を果たした吉井の心情を歌う「復活の日」から、この日のライブをスタートした。エマこと菊地英昭のアーシーなギターカッティングに導かれ、冒頭の掛け声〈Wow wow-oh, wow wow-oh〉を全員でシンガロング。モット・ザ・フープル「All The Young Dudes」(吉井が敬愛するデヴィッド・ボウイによる提供曲)をオマージュしたサビを歌い上げた後、「倉敷!」とフロアに向かって吉井が呼びかけると、地響きのような歓声が上がった。
続く「SHINE ON」は、『Sparkle X』冒頭曲。黒いストラトギターを抱えた吉井が菊地と共に、息の合ったギターオーケストレーションを奏でる。まるで太陽の塔・内部にあるオブジェ「生命の樹」を思わせる巨大なセットがステージ後方に設置され、そこに太陽フレアのような燃え盛る炎を映し出す。サビのリフレイン〈shine on, shine on〉に応えるように、客席からはキメをバッチリ合わせたハンドクラップが鳴り響いた。
「元気ですか、倉敷!」と改めて吉井が会場に呼びかける。「(倉敷市民会館は)なんだかコンパクトでいいね、アットホームで愛し合いやすい雰囲気」とコメントすると、客席からは歓喜の声が。「<BLOCK.2>へようこそ。今日はファイナル公演、最後まで楽しんでくださいよろしく!」と挨拶し、アルバム『smile』に収録された「See-Saw Girl」を披露。アニーこと菊地英二のタイトなドラムの上で、ヒーセこと廣瀬のベースとエマのギターが艶めかしく絡み合い、吉井も身をくねらせながらセクシーに歌い上げる。間髪入れず、エマの切れ味鋭いギターカッティングが空気を切り裂くと、フロアから再び大きな歓声が。16ビートの躍動するリズムセクションの上で、吉井が伸びやかな歌声を聴かせる「嘆くなり我が夜のFantasy」は、インディーズ時代からのライブでの定番ナンバーだ。
ここで、一息つく形でMCタイム。「倉敷は9年ぶり? すみません長いこと待たせてしまって……結構、遠いんですよ」と吉井が冗談混じりに話し、会場は笑い声に包まれる。「<BLOCK.2>のセットリストは、アルバム『smile』と『Sparkle X』のコラボレーション。前作『jaguar hard pain』までは僕ら、下世話なサウンドを好き勝手に作っていたんですけど、『そろそろ売れる曲を作らないとレコード会社に切られる!』と思ってポップな路線を目指したのが『smile』です。だから、このアルバムから知ってくれた人は多い気がする」
アルバム『smile』の制作背景を明かした後、披露したのは「イエ・イエ・コスメティック・ラヴ」。オーギュメントなどヒネリの効いたコードを随所に散りばめたこの曲は、60年代のフレンチポップから70年代のUKグラムロック、そして90年代のブリットポップへと受け継がれていくヨーロッパ的なデカダンを感じさせる。続く「ヴィーナスの花」は、初期ビートルズや初期ローリング・ストーンズを彷彿とさせるストレートなロックンロールサウンドに、〈もしも奇麗な花びらを見たら / 僕は蝶になり君に舞うのさ〉〈咲き乱れてるヴィーナスの花 / 君とたわむれていたいだけ〉などと、意味深な歌詞を載せているところがTHE YELLOW MONKEYらしさといえよう。
サポートメンバーの鶴谷によるピアノソロを経てライブも後半戦へ。「サイケデリック・ブルー」は、シャッフルビートに半音進行を乗せた、まるで場末のキャヴァレーやサーカスで流れているような猥雑かつ妖艶なガレージサイケ。その、むせかえるようなサウンドに酔いしれていると、気づけば最新アルバム収録の「ドライフルーツ」へ。90年代ブリットポップの中でも、前述したようにグラムロックの流れを汲んだスウェードやパルプといったバンドに深く共鳴したTHE YELLOW MONKEYの音楽性が、『smile』から30年経った今も変わらず貫かれていることを証明する見事な演出だ。
「去年、『jaguar hard pain』とコラボした時も、自分たちですら気づかなかった共通の世界観やメッセージがそこにあって。あのアルバムでテーマの一つに掲げていた『戦争』へのメッセージ、その名残も『smile』の楽曲に受け継がれていました」
そう吉井が言って演奏したのは「争いの街」。戦争で離ればなれになった恋人をテーマに、湾岸戦争の3年後に作られたこの曲は、ウクライナやガザなど今も世界のあちこちで続いている戦争や紛争に思いを馳せながら聴くと、当時とはまた違う痛みや切実さを伴って胸に迫る。またこの曲では、ステージ後方の巨大なオブジェや紗幕に投影したライティング、スモークなどを融合させた幻想的なヴィジュアルも印象的だった。
一転、縦ノリのリズムとヘヴィなギターリフ、地を這うようなベースラインが高揚感を煽る「ソナタの暗闇」へ。「ヘイ、倉敷! あったまってきましたか? 人生の『罠』に気をつけて!」そう叫ぶと、ステージ後方には蜘蛛の巣の映像が映し出される。楽曲「罠」とシンクロする演出に、観客の興奮も上昇していく。そこから「熱帯夜」へとなだれ込み、吉井とエマ、ヒーセがステージ狭しと練り歩く。吉井が最前列のオーディエンスとハイタッチしたり、エマとヒーセがステージ端の通路席ギリギリまで身を乗り出したりするたびに、客席からは歓声が上がった。
「いいね<BLOCK.2>、もっとやりたいわ(笑)。さらに盛り上がっていきましょう。愛し合ってるかい?」そう吉井が叫び、シーナ&ザ・ロケッツやRCサクセションにインスパイアされたような、疾走感あふれる「ラプソディ」を披露。自身の喉の病状をフランス民謡「クラリネットをこわしちゃった」をベースに、卑猥なメタファーをふんだんに盛り込んだこの曲を、オーディエンスとも〈オパオパオパオパ……〉の大合唱でさらなる一体感&背徳感を高めていく。
「自分でもどういう歌を歌えるのか、個人的には不安を抱えながら10月からスタートしたこのツアー。スタッフやメンバー、そしてみんなに支えられ、一度は死んだ細胞に生きたエネルギーが注がれ『歌』が戻ってきたような感覚がありました」
「Love Communication」を演奏した後、ツアーに向けての心情をそう語る吉井。「この年代になってくると、若い頃には想像もしなかったようなことも起きます。でも、そのおかげで1本1本のライブに対し、以前よりさらに真剣に向き合うようになりました。変な言い方だけど、『この病気になって良かった』とさえ思っています。これからも見守っていてください」と挨拶し、「THE YELLOW MONKEYは大丈夫です」と力強く宣言すると、会場からは大きな拍手が湧き起こった。
そして、エマによる浮遊感たっぷりのポップチューン「Make Over」を演奏し本編を終了。アンコールでは「Kozu」と「BURN」を続け、再集結後初の新曲としてリリースする予定だった「未来はみないで」(2020年配信リリース)を、メンバー紹介の後に演奏してファイナル公演に幕を閉じた。
「この先も楽しいことをたくさん考え、できる限り皆さんを楽しませたいと思います」最後にそう挨拶した吉井。3月7日の熊本・熊本城ホール メインホールを皮切りにスタートする<BLOCK.3>は、一体どのようなセットリストになるのか。そして完全「復活」した吉井を中心に、THE YELLOW MONKEYは今後どんな景色を我々に見せてくれるのか。楽しみでならない。
Text by 黒田隆憲
Photo by 横山マサト
※写真は、名古屋国際会議場 センチュリーホールの模様
◎プレイリスト公開中
BLOCK.1
https://tym.lnk.to/sparkle_Block1
BLOCK.2
https://tym.lnk.to/sparkle_block2
◎公演情報
【THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~】
<BLOCK.1>
2024年10月15日(火)神奈川・神奈川県民ホール 大ホール
2024年10月20日(日)愛媛・ 愛媛県県民文化会館 メインホール
2024年11月1日(金)愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール
2024年11月7日(木)広島・広島文化学園HBGホール メインホール
2024年11月10日(日)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
2024年11月15日(金)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
2024年11月21日(木)宮城・仙台サンプラザホール
2024年11月26日(火)栃木・宇都宮市文化会館 大ホール
2024年12月1日(日)北海道・札幌文化芸術劇場hitaru
2024年12月7日(土)福井・福井フェニックス・プラザ エルピス 大ホール
2024年12月9日(月)大阪・フェスティバルホール
2024年12月13日(金)鹿児島・川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第1ホール
2024年12月28日(土)東京・日本武道館
<BLOCK.2>
2025年1月8日(水)愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール
2025年1月15日(水)大阪・大阪城ホール
2025年1月19日(日)宮城・仙台サンプラザホール
2025年1月24日(金)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
2025年2月7日(金)東京・東京ガーデンシアター
2025年2月11日(火.祝)福島・けんしん郡山文化センター 大ホール
2025年2月14日(金)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
2025年2月23日(日)岡山・倉敷市民会館
<BLOCK.3>
2025年3月7日(金)熊本・熊本城ホール メインホール
2025年3月14日(金)富山・オーバード・ホール 大ホール
2025年3月17日(月)大阪・フェスティバルホール
2025年3月20日(木.祝)宮城・仙台サンプラザホール
2025年3月27日(木)香川・レクザムホール 大ホール(香川県県民ホール)
2025年4月4日(金)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
2025年4月13日(日)山形・やまぎん県民ホール大ホール
2025年4月22日(火)愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
2025年4月30日(水)東京・NHKホール
<FINAL BLOCK>
2025年5月15日(木)北海道・札幌文化芸術劇場hitaru
2025年5月30日(金)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
2025年6月3日(火)愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
2025年6月6日(金)兵庫・GLION ARENA KOBE
2025年6月13日(金)神奈川・Kアリーナ横浜
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