<ライブレポート> 小倉博和、FM COCOLO番組10周年イベントで大貫妙子/槇原敬之/森山良子らと音楽の“御COCOLO尽くし”

2025年1月24日 / 18:00

 FM COCOLOが主催するライブイベント【FM COCOLO『小倉博和のFriday, Sound of Strings』 10th Anniversary 新春!御COCOLO尽くし】が、1月18日大阪・新歌舞伎座にて開催された。

 本イベントは日本が誇るトップギタリスト・小倉博和がDJを務めるFM COCOLOのラジオ番組『小倉博和のFRIDAY,Sound of Strings』の放送10周年を記念して行われたもの。イベントにはゲストボーカリストとして大貫妙子、槇原敬之、森山良子、さらに小倉博和と佐橋佳幸によるギターデュオ・山弦が出演。バンドメンバーには佐橋も参加するほか、亀田誠治(Ba.)、斎藤有太(Key.)、屋敷豪太(Dr.)といった、日本のトッププレイヤーが揃い踏み。さらに、小倉のライブには欠かせないマニュピレーターの藤本一樹も参加。唯一無二のギタリストである彼の高いテクニックと幅広い音楽性に裏付けされたギタープレイはどれも極上のものばかり。歌うようにギターを鳴らし、名曲の数々に華を添えた特別な一夜の模様をお伝えしたい。

 開演前には、MCとして同局でDJを務める加美幸伸が登場。「日本を代表するミュージシャンが集う一日。ゆったりとライブやトーク、出演者の豪華なショーを楽しんで」と開幕を告げると、ライブはまずは小倉博和のソロステージから始まる。饗宴の幕開けに選んだ1曲目は自身の5枚目となるアルバム『SNOWFLAKES』から「Playground」。アコギ1本のインスト曲だが、ボディを叩きながらパーカッシブなグルーヴを押し出し、さらりと会場の熱を高めていく。「本日はようこそ。最後までゆっくり楽しんで」と、さっそく1組目のゲスト、山弦のパートナーでもある佐橋佳幸を呼び込む。

 山弦は小倉と佐橋、日本を代表するスーパーギタリストがタッグを組んだギターデュオ。「新春とイベントタイトルにつくからには春らしい曲を。」と「春(Spring)」を披露。温かな季節への移ろいを感じる。

 この日のライブはラジオ番組由来ということもあって、曲へ繋ぐ前にはリスナーからのお便りも紹介。昨年末の『NHK紅白歌合戦』にそれぞれギタリストとして参加していた2人についてのメッセージを受け、NHK繋がりの楽曲ということで、「Tell Me Something」(NHKの音楽番組『夢・音楽館』オープニングナンバー)へ。佐橋がリズムを生み、小倉のギターが情熱的なメロと、余韻たっぷりの音を奏でていく。心弾む旋律に誘われ、観客も手拍子で応える。

 続いてのゲストは大貫妙子。この日のゲストボーカリストは小倉や山弦とともに楽曲制作やライブ活動をともにしてきた仲間ばかり。まずは山弦の楽曲「祇園の恋(GION)」に大貫が歌詞を付けた「あなたを思うと」で、大貫の繊細でいてまっすぐな歌声に2人の旋律が華を添える。「やっぱりこの3人でやるとこうなっちゃうよね」と、長年の付き合いのある3人だからこその空気感に嬉しそうな表情を見せる。小倉はラジオ番組さながらの笑いたっぷりのトークで観客の笑いを誘い、アットホームな空気を作り上げていく。

 ステージには亀田、斉藤、屋敷のバンドメンバーも加わり、続いては名曲「都会」へ。名うてのミュージシャンがそろってのサウンドはとにかく圧巻! 小倉のギターソロも秀逸で、誰もが恍惚とした表情でステージに魅入っている。

 新歌舞伎座は演劇やミュージカル、歌謡ショーなどの舞台が中心の劇場。たとえベテランミュージシャンであっても、この日が初のステージという人も多く、槇原敬之もそのうちの一人だ。小倉と同じく、彼もまたFM COCOLOで番組を担当するDJでもあって、客席との距離の近さに驚きつつ、「歌いながら見得を切っちゃおうかな♪」とご機嫌にトークを展開。槇原にとって小倉、そして山弦は憧れのギタリストということで、1曲目に選んだ「島育ち~人の歩く道~」は「(山弦と)一緒にやりたくて歌詞つけちゃった♪」という、山弦が作曲した楽曲に槇原が詞をつけた楽曲。曲終わりには「ずーっとこうやってたい! 山弦と歌うのはミュージシャンとして幸せ!」と、感無量な表情を見せる。

 ライブはその後、亀田のウッドベースが加わっての「北風~君にとどきますように~」へ。心に染み入るメロディ、まるでひとつの物語を描いたようなリリック、そして楽曲の世界観をより一層押し上げる小倉のギターの旋律。名曲はいつだって心を掴んで離さないけれど、ギタリストが変わるだけで、こんなにも情景がよりくっきりと心に描かれるのかと驚かされてしまう。さらにその感動はバンドメンバー全員が参加したステージでも続いていく。昨年末に開催された槇原のライブツアーを観た小倉は「見落としている幸せを見つけられるのが彼のライブ」と絶賛し、「Counting Blessing」をリクエスト。槇原も「この曲を選んでくれてうれしい」と、丁寧に歌い上げていく。槇原のステージの最終曲「遠く遠く」では、それまで座りながらギターを演奏していた小倉が立ち上がり、バンドサウンドを引き連れるように珠玉のメロを奏でていく。

 最後のゲストは森山良子。「ティンカーベルみたいな人♪」と小倉が語っていたように、軽やかな足取りでステージに登場した彼女はイベント当日が誕生日ということで、FM COCOLO&全出演者からのプレゼントされたイスを持参してステージに。少し低めのイスにリラックスした感じで腰掛け、どんな歌を歌うのかと思いきや「大阪でのライブということで♪」と関西フォークの名曲「プカプカ/西岡恭蔵」を小倉と2人で披露。小倉は味のあるフォーキーなサウンドをジャズ風にアレンジしたり、森山も少し拳の効いた迫力ある歌声で歌い、新歌舞伎座の舞台がまるで小さなジャズバーにも見えてくる。

 バンドメンバーがそろっての次曲「夢の住家」は小倉が作曲&アレンジを担当した楽曲だ。「ジャンルを越えた曲」と紹介していたように、透明感ある歌声と凛としたメロディが観客の心をしっかりと掴んで離さない。その後も「Life is Beautiful」、「涙そうそう」と新旧の楽曲を立て続けに披露。名曲の存在感はそのままに、自由度を高めたバンドサウンドが心地よく、観客は気持ちよさそうに身体を揺らし、音を満喫していた。

 ゲストボーカリストたちのステージを終え、後半は小倉のギター+亀田、斎藤、屋敷のインストゥルメンタルでのライブへ。小倉はこの日のステージのために作って頂いたというレインボーカラーのエレキギターを抱え、「Clean Up」で多幸感いっぱいのギターサウンドを響かせる。今にもギターが歌い出しそうな、お祭り感たっぷりのナンバーは、この日のMCで登場したDJ加美幸伸が担当するFM COCOLOのラジオ番組『THE MAGNIFICENT FRIDAY』のテーマソング。小倉が担当する番組はこの番組プログラムの一部ということもあって、リスナーでもある観客はみなご機嫌に♪。続く「テキーラフラワー」はラテンとブルースを混ぜこんだような、自然と気持ちが昂る陽気なナンバー。ステージを右へ左へと歩み、観客のテンションを上げていく。インスト曲だけれど、ここに歌声が乗ればどんな曲になるんだろうと考えるのも楽しい。「Surf Surf Surf」では超絶テクは言わずもがな、繊細なギターの旋律もさらりと弾きこなすと、客席からは感嘆の声が漏れ聞こえてくるなか、本編はあっという間に終わりを迎えた。

 アンコールは出演者全員がそろい、「風をあつめて」へ。はっぴいえんどの名曲としてはもちろん、小倉のアレンジで森山良子がカバーをしたことでも話題となった曲だ。珠玉の名曲をトップアーティストたちが歌い、奏でる。ソロステージでは主線を奏でていた小倉も、歌い手の歌声がより一層映えるようにとバンドメンバーとともに華を添える。極上の時間を楽しんでいるのは観客だけでなく、ステージに立つメンバーも同じ。音楽で喜びを感じる瞬間があちこちにあって、誰もが嬉しそうな笑顔を見せているのも良い。その光景だけでなく、アンコールでステージにメンバーが集まる時も、みんなが小倉にハイタッチをしたり、肩を組んだりと“ファミリー感”を感じ取れたのもとても素敵だった。

 イベントの最後は小倉が一人きりのステージ。「素敵な年になりますように。またラジオで会いましょう」と、ラジオ番組のエンディング曲でもある「またね」をハープウクレレで披露し、至高の音で溢れた“御COCOLO尽くし”なイベントは幕を閉じた。

 なお、この日の模様は2月14日21時よりFM COCOLO『Whole Earth RADIO』にて、『新春! 御COCOLO尽くし ライブ音源特集』としてライブ音源などが放送される予定だ。

TEXT:黒田奈保子
PHOTO:田浦ボン・キシノユイ


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