<ライブレポート>ポルカ雫生誕祭【#教祖爆誕】 第二章バンド初の本領発揮ライブで厄払い

2024年10月23日 / 19:00

 ポップミュージックに必要な大衆性は宿しつつ、唯我独尊的オリジナリティをも兼ね備えた稀有な存在感で、音楽シーンに独自のポジションをすっかり築き上げた感もあるポルカドットスティングレイ。一度耳にしただけで脳内ループ確定な中毒性の高い楽曲たちのソングライティング、そしてバンドにまつわるクリエイティブの根幹を一手に担っているのが雫(Vo.& G.)だ。

 ジャンルに縛られない自由な発想から生み出されるバラエティ豊かなサウンドと、曲ごとに主人公を設定し、自身の感情は極力介在させないプロフェッショナルな視点で紡ぎあげられた歌詞によって織りなされる多彩なその世界は、その音楽を聴く一人ひとりの自分事に寄り添って離れない。そんな傑出したクリエイターであり、バンドのメインエンジンとしてポルカドットスティングレイを牽引する彼女の生誕を祝して毎年、雫のバースデーである10月15日に行われている恒例のワンマンライブが【教祖爆誕】であり、32歳を迎えた今年も【ポルフェス85 #教祖爆誕ワンマン】と銘打って東京・Zepp Haneda(TOKYO)にて開催された。

 一言で表すなら独壇場だった。雫の、雫による、雫のためのワンマンライブ。開演前と終演後の影アナまで本人が担当するという、徹頭徹尾のセルフプロデュースっぷりだ。だが、そんなところも彼女らしくていい。彼女にとって“雫のため”は“ポルカドットスティングレイのため”とイコールであり、何はさておき“ファンのため”。自ら舞台を用意してまで彼女が率先して祝われにいくのは、それがファンへのいちばんのおもてなしになると直感および直観的に理解しているからだろう。そうした彼女の意図をファンもまた的確かつ無邪気に受け止めて、結果【ポルフェス85 #教祖爆誕ワンマン】はバンド史上最高と呼びたい熱狂と多幸感に満たされた。

 フロアいっぱいに響き渡るハンドクラップに歓迎されながら、「SURF」でオープニングを飾ったポルカ。ピンクの猫耳ニット帽にピンクのエクステンション、ミニスカート仕様の制服風衣装に身を包んで飛び出してきた雫にどっと歓声が上がる。どうやらテーマはギャルらしい。取材用に配られたセットリストのタイトルに“(スーパー平成ぎゃるver.)”と併記されていたのはそういうことか。その後、自身も高校時代はギャルとして過ごしていたこと、16歳だった当時からちょうど倍の16年経った今、もう一回ギャルになっておこうかと思って今回の衣装を考案したことが本人の口から明かされたが、まるで違和感のないキュートさとハイテンションな暴れっぷりは現役高校生ですら霞んでしまいそうなほど(ちなみにメンバーも雫とお揃いの制服風衣装で、これまた実によく似合っていた)。

「32歳になりました。今日から本厄が始まったんですけど、こんなにたくさんの人たちにおめでとうって言ってもらえるんやったら私、全然厄年じゃないね。」

 「ブラックボックス」「ICHIDAIJI」とたたみ掛けたあと、そう言って破顔一笑する雫。そこからバンドは「DENKOUSEKKA」や「ヒミツ」といったライブ人気も高いナンバーや8月に配信リリースされた最新曲「アウト」など新旧まんべんなく織り交ぜた幅広い選曲で矢継ぎ早にオーディエンスを踊らせ、前半戦から容赦なく場内をヒートアップさせていく。会場を陶酔させるアンサンブルがいつにも増してスペシャルに感じられるのはサポートキーボードのtoriyama takashiを加えた5人編成で奏でられているからでもあるだろう。1年ほど前から折に触れ、ポルカの楽曲制作やライブに参加するようになったtoriyama takashiは、この日のつい数日前にもレコーディングを終えたばかりだという。そうした最近のエピソードをメンバーやtoriyama takashiとわちゃわちゃやり取りしながら報告する雫の表情は明るく晴れやかで、バンドを取り巻く現在の状況がとてもいいことが窺い知れる。

 この7月、これまでのチームの体制を一新し、新曲「JO-DEKI」の配信リリースとともに第二章のスタートを切ったポルカドットスティングレイ。その経緯は当サイトの「JO-DEKI」インタビューにて雫が詳細に語ってくれている通りだが、自身の求める環境を掴み取った彼女たちは今や無敵と呼んで過言ではないだろう。雫の生誕祭であると同時に第二章に突入して初めてのワンマンライブともなったこの日はまさに本領発揮のステージでもあった。メンバー全員、黒を基調にしたシックな衣装に着替えて臨んだ「FICTION」からの中盤以降、特に「リドー」「夜明けのオレンジ(原曲ver.)」という雫いわく「神様&教祖繋がり」で連投された2曲は、世界観を表裏一体にすることで音像に宿った不穏さをひときわ増幅させて聴く者を圧倒した。

 さらには「初めて演奏する曲、聴きたい?」と雫が思わせぶりに囁くと、ボーカリスト・Souに提供した楽曲「WHAT」のセルフカバーを披露。シティポップなニュアンスをふんだんにまとわせた洒脱な「JET」を大人びたムードもたっぷりに演奏したかと思えば、「10月でパーティーと言えば?」「ハロウィン!」と観客との阿吽の掛け合いで「ゴーストダイブ」になだれ込むなど、後半に進んでも勢いはまるで衰えることなく、むしろジェットコースターのごとく容赦なく揺さぶりをかけてくるのだからたまらない。

 極めつけは詳細未発表にしてまだ制作中だという新曲の初披露だ。ダンサブルでありながら、どこか憂いをはらんだサウンド、楽器隊の見せ場も随所に散りばめられたメリハリの効いたアンサンブル、雫のハイトーンなウィスパーボイスに胸の奥をキュッと掴まれる、これまたバンドの新境地を期待せずにはいられないエモーショナルな1曲に釘付けになるオーディエンス。今年はアッパーな楽曲を中心にリリースしてきたポルカだが「みんなが一人でモヤモヤと悩んだり考えごとをしたりするときも私たちが寄り添っていたい」という想いからこの曲を作ったのだという。ボーカルレコーディングが順調に進めば近いうちにお届けできるはず、だから継続的に応援してねと笑う雫をさっそく激励するようにフロアから盛大な拍手と声援が送られた。

 「みなさんのおかげで迎えることができた第二章初のワンマンに、私からみなさんへの愛を聴いてください」と雫が告げ、エジマハルシ(G.)、ウエムラユウキ(B.)、ミツヤスカズマ(Dr.)の4人で本編のラストに奏でたのは「ラブコール」だった。前述したように雫の歌詞にはそれぞれ曲のテーマに合わせた主人公がおり、自身の気持ちは基本的に反映されない。そんな彼女が自分の感情、ファンのみんなに対する親愛を素直に綴ったこの曲。ザンザンと拳を突き上げ昂揚するオーディエンスに真正面から対峙し、〈ごちゃごちゃうるせぇ! かかってこい!〉と歌詞の一部を歌い替えてシャウトした直後のサビはフロアの一人ひとりに歌唱を委ね、そのシンガロングに耳を傾け、笑顔を炸裂させる感動的な一幕もあった。そうして〈それでも少しは知っていてほしい/あなたのために生まれてきただけってことを〉と渾身の力で歌いあげた雫。このフレーズこそは今日、彼女がもっとも手渡したい想いだったはずだ。

 満場の“教祖”コールによって再びステージに姿を現した4人。誕生日の雫からのプレゼントとしてサイン入りTシャツが抽選で3名に贈られた企画コーナーを挟み、アンコールに応えてドロップしたのは「JO-DEKI」、そして「テレキャスター・ストライプ」だ。前者が第二章の幕開けならば、後者はポルカドットスティングレイが今のメンバーになって初めて世に出した始まりの曲。実は「JO-DEKI」は「テレキャスター・ストライプ」のセルフオマージュなのだと「JO-DEKI」のインタビュー時に雫が教えてくれたのをふと思い出す。始まりを重ねたその先にポルカドットスティングレイはどんな道筋を切り拓いていくのだろうか。

「私は一生をかけてクリエイティブでみんなに恩返ししていきたいなと思います。みなさん、私を毎日、幸せにしてくれてありがとうございます!」

 まっすぐな目で雫はそう誓った。ならば、まずは新曲の完成を心待ちにすることとしよう。それからこの日、対バンアーティストがKANA-BOONであることが公表された【#ポルカVS ~お世話になった先輩を殴りに行く~】の追加公演(2025年1月29日、東京・Spotify O-EAST)も。これから果たしてどれだけの未知なる景色をポルカドットスティングレイは見せてくれるのか。想像するだに気が逸る。

Text by 本間夕子
Photos by AZUSA TAKADA


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