<ライブレポート>台湾出身Elephant Gymが初ビルボードライブ公演 鳴り響く多彩なサウンド、平和への願い

2024年10月22日 / 21:00

 ビルボードライブ初登場となった、台湾の3ピースバンドElephant Gym。今回はメンバーのKT(Ba. / Vo. / Pf.)、テル(Gt. / Pf. / Syn. / Vo.)、チャーチン(Dr. / Per.)に加え、台湾高雄市のブラスバンド、高雄市管樂團(KCWO)のフルート奏者ユータイ(Yu-Tai)とサックス奏者シャンテ(Shang-Te)を迎えた特別な公演。KTはブルーのドレス、テルとチャーチンはジャケットスタイルで登場。瀟洒にドレスアップした姿からも、ビルボードライブ横浜での公演を特別なものとして準備したことを窺わせた。

 16時半をまわり、ほぼ定刻通りに開演。ライブ空間を優しく染め上げていくギターソロの「Mirror」とKTが歌う「Midway」でスタート。これらは、2nd EP『WORK』(2016)の1曲目と2曲目である。事前のインタビューでテルは『WORK』というアルバムタイトルには「音楽が私たちの仕事である」という意味が込められていると語っている。音楽に人生を賭ける決意をしたという、バンドにとって特別な意味を持つ作品で幕開けとなった。

 その雰囲気のまま「Underwater」。丁寧に紡がれる音と青系の照明も相まって、その世界観へ一気に惹きつけられる。続く「Spring Rain」では、原曲から更に緩急を強調したアレンジが施されていた。途中KTがドラムに向き合い、チャーチンとの阿吽の呼吸がさく裂。テルのギターソロで雰囲気が緩み、KTのボーカルでは自然とハンドクラップが巻き起こる。曲中に施された仕掛けから、会場全体をElephant Gymのペースに引き込んでいく。

 続く「Head&Body」は、テルがグランドピアノへ。チャーチンが繰り出すタイトなリズムと多層に織られたような緻密な構成で、まだ序盤だというのにすっかりElephant Gymの世界に入り込んでいった。

 「Head&Body」の演奏後、KTからすべて日本語によるMCでビルボードライブ横浜のステージに立つ喜びが語られた。「今日のビルボードは、大人な雰囲気です。だから、みんな大人になります」。メンバー紹介で、テルがチャーミングなポーズをとっておどけると、KTが「大人、大人!」と突っ込む場面も。そして、「今日は本当に嬉しいです。こんな(素敵な)ベニュー、ビールあります!だからOKOK、ありがとうございます!」と、ビールグラスを掲げ、いつも通りの笑顔を見せるKT。

 テルから、「次の曲は『D』です。KTさん、ピアノ弾きます」と前置きしてドラマチックな展開の「D」とKTによるピアノソロ曲「Dreamlike」を披露。鍵盤が紡ぐ美しい重低音の立体感を味わえる楽曲が連なり、まるでピアノと会話しているようなKTの姿を見ることができた。

 「Dreamlike」の後、テルが平和への願いを語った。「台湾は小さな島で、北から南まで車で6時間で行ける距離。台湾の人はほとんどの人が民主主義、平等を信じています。台湾はアジアで初めて同性婚が合法化されました。でも、政治的にも国際的にも難しい状況にいます。だから僕は平和を当たり前なことだと思っていません。ライフルではなく、ギターを持っていられることが、とても嬉しいです。憎しみではなく、音楽を届けられることが嬉しいです」と語る。テルの平和への願いは、この発言だけに留まらず、彼らの音楽の一部として深く根付いているように感じられた。そんなテルの想いを受け止めるように、会場からは大きな拍手が起こった。

 一呼吸おいて、KTがキュートで多幸感たっぷりに歌う「Happy Prince」。続くアップテンポの「Go Through The Night」ではピアノ、ベース、ドラムと怒涛のフレーズが複雑に絡み合い、Elephant Gymの演奏技術を堪能できた。

 ここで高雄市管樂團(KCWO)のフルート奏者、ユータイが登場し「Witches」を披露。原曲ではアグレッシブなポストロックの印象が強いが、そこにフルートが加わることでより鮮やかにステージを彩っていく。

 その後、チャーチンがMCで高雄市管樂團(KCWO)を紹介。「今年1月のジャパンツアーでは象眠舎とコラボしましたが、ビルボードでは台湾の2人のプレイヤーと一緒に演奏します。技術がすごくて、フルートでビートボックスができますよ」と前置きし、ユータイがフルートで本格的なビートボックスを披露すると、会場からどよめきと拍手が巻き起こった。そしてサクソフォン奏者、シャンテが登場し「Anima」「Ocean In The Night」「Light」を続けて披露。

 特に印象に残ったのは「Ocean In The Night」。原曲は台湾の伝説的オルタナロックバンド透明雑誌のギターボーカル、ホン・シェンハオとの共作で1st EP『BALANCE』(2013)に収録され、そのオーケストラ・アレンジが最新アルバム『WORLD』(2023)に収録されている。今回はテルがメインボーカルを歌い、台湾オルタナロックの質感たっぷりのメロディと悲しみを湛えた歌詞、管楽器の響きが混ざり合い、台湾の夜の海の風景が身近に感じられた。

 その後、KTが日本への印象を語った。「今年はワールドツアーで(日本に)3回来ました。日本大好きです。みんな優しいです。いつも来たい。来年はしばらくライブをしないので、最後の3曲を思いきり楽しんでください、ありがとう!」と感謝を伝えた。「次の曲『Feather』はTENDREとコラボレーションですが、今日はお金ない。だからTENDREいない」と冗談交じりに前置きし、「だから今日、お兄さん(テル)が歌う。お兄さんも超セクシーです、楽しんでください!」と期待感を高める。テルの日本語ボーカルは節回しも完璧で、KTのいう通り「超セクシー」。このライブのために相当練習してきたことが窺えた。

 続いてムーディーかつアグレッシブな印象な「Wings」を演奏し、ラストナンバーは「Galaxy」。タイトルになぞらえて「銀河」のような照明演出の中、サポートメンバーともに時に体を寄せ合いながらステージを自由に動き回るテルとKT。そんなステージ全体を笑顔でまとめながらのびのびとドラムを叩くチャーチン。観客としっかり心が通い合い、多幸感の余韻で会場を包み、ステージを降りた。

 1時間強というコンパクトな時間でありながら、3人でのステージと管楽器とのコラボレーション、過去作から最新作、ライブアレンジまで彼らの集大成と言えるライブを見せてくれたElephant Gym。ビルボードライブ横浜の「大人」な雰囲気でパフォーマンスを行うElephant Gymを観ながら、どんな会場でもしっかり音を鳴らすことができる特別なバンドであることを改めて認識した。

 今後もビルボードライブ横浜ではアジアのアーティストのライブが行われる予定だ。10月23日にはタイのYONLAPA、10月28日には韓国のADOY×台湾のWhyteの公演なども特別なものとなるであろう。そんな予感を感じさせるライブだった。

Text:中村めぐみ
Photo:Chiaki Machida

◎公演情報
【Elephant Gym “The Hidden World” Billboard Live】
2024年10月14日(月・祝)神奈川・ビルボードライブ横浜
※終了


音楽ニュースMUSIC NEWS

TAGRIGHT、Aile The Shotaプロデュースの新曲「花言葉」&プレデビューEPをリリースへ

J-POP2026年3月10日

 TAGRIGHTが、2026年3月18日に新曲「花言葉」を配信リリースする。  新曲「花言葉」は、メンバーの西山智樹と前田大輔が仲間を探すプロジェクト「TAG SEARCH」のドキュメンタリー番組と連動して制作された楽曲。Aile The … 続きを読む

shallm、新曲がTVアニメ『勇者の肋骨』EDテーマに決定&OPテーマ担当の終活クラブと2マンライブ開催

J-POP2026年3月10日

 shallmの新曲「何なんですか?」が、2026年4月より放送のTVアニメ『女神「異世界転生何になりたいですか」 俺「勇者の肋骨で」』エンディングテーマに決定した。  『女神「異世界転生何になりたいですか」 俺「勇者の肋骨で」』は、転生先 … 続きを読む

Homecomings、主題歌を務めるドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』の撮影スタジオへ表敬訪問

J-POP2026年3月10日

 Homecomingsが、主題歌を務める日本テレビ系ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』の撮影スタジオへ表敬訪問した。  本作は、杉咲花演じる主人公・土田文菜がこれまでに経験してきたさまざまな別れや叶わなかった恋などから、人を好きになるこ … 続きを読む

yonige、TVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』OP主題歌を書き下ろし&CD発売決定

J-POP2026年3月10日

 yonigeが、ソニー・ミュージックレーベルズとメジャー再契約し、その第1弾となる新曲「芽吹くとき」が2026年4月クールのTVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』オープニング主題歌に決定した。  お酒を通じて心を通わせる女子大学生 … 続きを読む

ジャック・ホワイト、テイラー・スウィフトへの発言を釈明「彼女の音楽が“退屈”だとは言っていない」

洋楽2026年3月10日

 ジャック・ホワイトが、テイラー・スウィフトの音楽に対する自身の見解について誤解を正した。少なくとも見出しだけを見る限りでは、ホワイトがスウィフトの楽曲を退屈だと思っているように受け取れるかもしれないが、本人はそうした認識を否定している。 … 続きを読む

Willfriends

page top