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Silica Gelの来日公演が6月26日、27日に東京・渋谷WWW Xにて行われた。
Silica Gelは現在の韓国シーンでもっとも勢いのあるバンドだ。かの国のグラミー賞と呼ばれる『韓国大衆音楽賞』で2022年、2023年に最優秀モダンロック・ソング部門を連続受賞し、2024年にはNewJeansやJUNG KOOKらを抑えて「今年のアーティスト」部門を獲得。さる5月にはソウル・奨忠体育館(キャパ4,000人)での単独公演3デイズを早々に完売させた。
そんな彼らは2018年1月、渋谷WWW Xで開催されたイベント【In&Out】にて、韓国のParasol、トクマルシューゴ、シャムキャッツと共演する形で初来日。これが兵役に伴う活動休止前のラストライブだった(2020年に活動再開)。昨年11月には、アジア各国から20組を招いた日本発ショーケース・フェスティバル【BiKN shibuya】に出演。そして今回、【BiKN】の主催で単独来日が実現したわけだが、なにせ6年前とは状況が違う。再びWWW Xを会場とした6月26日の東京公演は、betcover!!という理想的な対バンも決まり、はるかに想定オーバーの申込が舞い込んで即日完売。翌27日に同会場で急遽行なわれることになった追加公演(ゲスト:maya ongaku)もソールドアウトとなった。
26日の夜。開演時刻の19時をまわると、まずはbetcover!!がステージに登場する。この日はサックスの松丸契を含む6人編成。柳瀬二郎が「1、2、3、4」とカウントしたのを合図に、重厚なベースラインが唸る「火祭りの踊り」から「壁」でのフリージャズ的な混沌、「馬鹿野郎!」の怒声でおなじみ「バーチャルセックス」など冒頭6曲をノンストップで畳みかけると、演奏に見入っていた観客からようやく歓声が上がった。観るたびに曲が豹変するライヴブアレンジは驚きの連続で、ラストの「超人」では鬼気迫るアンサンブルでピークまで登り詰めたあと、ドラムブレイクを挟んで轟音の未体験ゾーンへと突入。やがて嵐が過ぎ去ると、柳瀬は「ありがとうございました」と一言口にして去っていった。Silica Gelたっての希望でゲスト出演した彼らは、中国~香港~韓国とまわる初の海外ツアーを完走したばかり。音楽集団としてさらなる進化を感じさせる40分弱だった。
転換タイムでは、FKAツイッグスの「Cellophane」が流れるなか、Silica Gelのメンバーたちがセッティングのために姿をあらわす一幕も。超満員のフロアは熱気で充満しており、今のSilica Gelを600人キャパの至近距離で観れる幸運を改めて実感した。【BiKN】の中心人物・藤澤慎介さん(THISTIME RECORDS)によると、国内と海外のオーディエンスは半々ぐらいとのこと。韓国はもちろん、アメリカやマレーシアから駆けつけたという熱心なファンもいた。
そして20時15分ごろ、Silica Gelの4人が手を振りながら登場すると、昨年12月に発表した最新アルバム『POWER ANDRE 99』のサイバーな世界観を象徴する「APEX」からスタート。イントロの金属質な不協和音にフロアがどよめく。鍵盤も担当するキム・ハンジュ(Vo./Key.)の歌声は加工され、グランジとハイパーポップが交差するように言葉を吐き出す。さらにアウトロでは、凄まじいドラムの乱打。アリーナを掌握してきたバンドらしい起伏に富んだダイナミズムに圧倒されると、彼らは自身最大のヒット曲「NO PAIN」を早くも投下。鋭く歪んだギターリフに喝采が上がり、サビではシンガロングも巻き起こる。
風変わりなシンセリフが先導する「Eres Tu」や、手打ちのビートと生ドラム、シューゲイザー的なノイズが重なり合う「Juxtaposition」では、冷たい電子音と熱を帯びた演奏が共存することでスリリングなグルーヴを生み出す。エレクトロニクスと肉体的なサウンドの融合、もしくは実験精神とポピュラリティの両立をここまで成し遂げているバンドは、世界的に見ても珍しいはず。個人的には『Kid A』~『Amnesiac』期のレディオヘッドを引き合いに出したくなるレベルだと思う。
その後、キム・チュンチュ(Gt./Vo.)とハンジュが歌を分け合う「Realize」で盛り立てると、日本語によるMCタイム。チェ・ウンヒ(Ba.)は6年前の初来日を振り返ったあと、「私たちを覚えてください」と謙虚に語っていたが、こんなに鮮烈なパフォーマンスを見せられたら忘れる方が無茶だ。今回のセットリストは『POWER ANDRE 99』の収録曲が中心だが、テーム・インパラ的なサイケデリック感覚をもつ「9」など、2016年に発表されたセルフタイトル作からのナンバーも印象深い。
Silica Gelは個々のプレイヤビリティも突出している。豊富な手数で疾走感をもたらすキム・ゴンジェ(Dr.)、空間を活かしたセンス抜群のベースでバンドサウンドを下支えするチェ・ウンヒのリズム隊も絶妙だし、とりわけ圧巻なのはキム・チュンチュ。ハードオフのギターストラップも目を引いた彼は、ジミー・ペイジばりのブルージーなリフメイカーでありながら、メタル由来のテクニックもお手のものだし(27日の公演ではメタリカ『And Justice For All』のTシャツを着用)、ジョニー・グリーンウッド以降のモダンな感性も兼ね備え、涼しい顔で強烈なソロを弾きまくる。最大の見せ場は「Tik Tak Tok」で、唸るギターを5分近くも弾き倒し、この日一番の大歓声が巻き起こった。
そして終盤は、シンガロング必至の「Ryudejakeiru」、除隊後の初リリース曲「Kyo181」、広大なスケールの「Mercurial」と、ハンジュのエモーショナルな歌が際立つ3曲を続けると、「またね」と言い残して本編を終えた。熱望されたアンコールでは、2015年の初期EP『Pure sun』から「II」~「sister」をメドレーで披露。シンセの切ないメロディで始まり、パワフルなドラムが炸裂するハイテンションな二部仕立てで最後まで盛り上げた。
Silica Gelは今年の5月末、スペインの大型フェス【プリマヴェーラ・サウンド】に出演したばかり。この革新的なサウンドが世界に発見されるのも時間の問題だろう。ここ日本でも、今回の来日で一気に知名度をアップさせた彼ら。繰り返しになるが、ここまでユニークなバンドは世界中を見渡してもそうはいない。もしまた来日する機会があったら、後悔する前にチケットを速攻で入手してほしい。
Text:小熊俊哉
◎公演情報
【Silica Gel Live in Tokyo 2024 with special guest: betcover!!】
2024年6月26日 (木)
東京・渋谷WWW X
<セットリスト>
1. APEX
2. NO PAIN
3. Eres Tu
4. Juxtaposition
5. Realize
6. Andre99
7. 9
8. Pupil
9. Tik Tak Tok
10. Ryudejakeiru
11. Kyo181
12. Mercurial
En1. II
En2. sister
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