エンターテインメント・ウェブマガジン
のんぴーが、2024年6月28日に東京・shibuya eggmanで全国ライブハウスツアー【のんぴー 「一日一生」 Tour 2024】のファイナル公演を行った。
「人間パワースポット」をキャッチフレーズに掲げて活動しているのんぴーは、2022年に活動を開始したシンガー・ソングライター。ストリートライブでは数百人を集め、2023年11月5日に東京・LIQUIDROOMで開催した初ワンマンライブを大成功させるなど、いま注目を集めている新人アーティストだ。その目標は、「たくさんのファンの皆様からのスポットライトを浴びて、存在することで人々にパワーを与えられるような人になる」。その言葉を証明すべく、1st EP『一日一生』を引っ提げて4月5日の北海道・Bessie Hall公演を皮切りにスタートしたツアーを締めくくるこの日のライブはソールドアウトとなった。
満員のお客さんで賑わう会場は、若い世代を中心に親子連れの姿もあり、アットホームな雰囲気。驚いたのは、そんな開演前のフロアにのんぴー本人が現れたこと。何の気なしにスタッフと会話している様子を、お客さんも取り立てて騒ぎ立てることもなく普通に眺めている。そんなファンとの距離の近い関係は、この日のライブで如実に表れていた。
ファンファーレの音が勇ましく場内に響き渡ると、大歓声を浴びてのんぴーがステージに登場した。右手を上げて歓声に応えると一礼し、ハンドマイクで歌い出したオープニング曲は「ウロボロス」。力強いボーカルとビートに、場内が一斉にクラップで反応して、「振り回せ!」と彼女が煽るとタオルを回す光景が広がった。笑顔で一人ひとりの顔を見ながら歌い、ゆっくりと手を振りながら「歌えるか!?」と呼び掛けると大合唱となり、1曲目にして早くもクライマックスを迎えたような一体感となった。
「はじめましてこんにちは、のんぴーです!【一日一生ツアー】ファイナルにようこそお越しくださいました!近くにステージが見えなさそうなお子さんがいたら前に出してくれたら嬉しいです。みなさんがハッピーになるようなライブを一緒に作り上げていきましょう! いけますかー!?」
お客さんの様子に気遣いながらのMCから続いたのは、アコースティックギターの弾き語りによる「たら福」。ステージにはスタンドマイクが2本立っており、2本のアコギとあわせて使い分けていた。軽快なギターのストロークとともに情感豊かに歌うと、独特なハスキーボイスがより際立って耳に残る。曲の後半、〈笑ってみれば/福が来る〉と歌うくだりでは、マイクから離れて圧巻のロングトーンを聴かせた。続けてアップテンポでギターを弾きながら、「長く感じた21か所のツアー、ファイナルですよ! 今週なんのために頑張ってきたんですか?このためでしょー!?」と歌った「楽笑」では、大きな声で合いの手を入れ、両手を高く掲げて叩きながら歌うフロアの人々を、ステージ前に出て煽るのんぴー。サビでは〈笑えば〉と会場全体からコーラスが入る。シンプルなギター弾き語りでありながら、お客さんと一緒に歌うことで完成しているような一曲だった。
「初めて出したEP『一日一生』のリリースツアーとして全国を回らせていただきました。“2026年までに日本武道館に行きたい”という夢を掲げて音楽活動をしている中で、のんぴーを好きな人も好きじゃない人にも、いいなと思ってもらえるような曲が作れたらと思って、雰囲気の違う曲をEPに入れました」とのMCから披露されたのは、“アイスの実”をテーマにして書いたという「Eye’s on Me」。ギターを置き、幻想的なトラックに乗せての歌唱で、先ほどまでとはガラリと変わって、ひとりの世界に没入したステージングを見せる。
「去年路上ライブツアーをしている中で、学生だったクソガキから、初めて音楽が仕事になりました。最後、LIQUIDROOMで見た景色は今でも昨日のことのように思い出します。路上ライブで学んだことは、やらなきゃいけないこととやりたいことは似ているようで少し違うということでした。今回、すべてワンマンでツアーをする中で、良い意味でちょっと鼻を折られた気分にもなりました。会場がスカスカなライブハウスもたくさんありました。みなさんの中にも、やりたいこととやらなきゃいけないことの葛藤があると思います。私がそんな葛藤の中で聴いていいなと思った曲です。今のあなたに歌います」
歌ったのは、ギターを教えてもらっているというシンガー・ソングライター、TOMIのカバー「Perfect」。〈完璧って何? 幸せって何?〉と自問自答するように歌い出す。親指でベース音を出しながらの流麗なアルペジオがボーカルを惹き立てている。途中からはボディを叩きビートを作ってルーパーで重ね、歌声も熱を帯びていく。終盤、ギターを背に回して伸びやかに歌うシーンが印象的だった。ツアーのメインタイトルにも掲げられた「一日一生」では、〈今日一日だけを/たった一日だけを/自分に嘘つくことなく/頑張ってみれるなら/怖かった明日が/気づけば今日に変わる〉と、老若男女問わずに心に刺さる歌詞に、誰もが静まり返って聴き入る。激しいストロークをサンプリングして、ボディを叩き出すと場内は自然に手拍子が湧き起こった。ルーパーで作ったリズミカルな演奏に自らどんどんハーモニーを重ねて構築していき、拳を握り、身振り手振りで歌の世界を表現していくさまは、神々しさすら感じさせる名演だった。歌い終わると、万雷の拍手がステージに送られた。
そんなパフォーマンスを見せた後、笑いながら「のんぴーが歌ってる間は絶対に静かにしとかなあかん、みたいな。終わった瞬間めっちゃ喋るじゃん(笑)」と、フロアを見渡すのんぴー。確かに、お客さんたちのオンオフもはっきりしていて面白い。「21か所回ってきて、盛り上がり1位は大阪だったかな。超えられますか、eggman!?」と煽ってから、軽快にギターを鳴らして「でんせん」へ。緩急をつけながら音を重ねていき、グッと感情を抑え気味な前半の歌いまわしから、早口でまくし立てるBメロを経て、〈もっともっと足は止めない〉と歌うキャッチーなサビメロに気分が高揚する。会場を左右に二分してのコーラス対決を促すと、フロアは歌いながらタオル回しとジャンプでカオスな雰囲気に。延々と続く全員の歌声で、まるで巨大なスタジアムにいるようなサウンドスケープを描き出した。
「まだいける!?」と再び「楽笑」を歌うと、「一つひとつ、すべて奇跡が重なってできていると私は思っています。なかなかうまく行かないこともありますが、“人間パワースポット”のんぴーはここに存在します。今日は来てくれてありがとうございます。そして私に出会ってくれてありがとう」と、歌詞から引用した言葉と共に感謝を示してから「てんさい」へ。薄暗いライティングの中で噛みしめるように歌いながら、「一緒に歌えますか!?」と呼び掛けて大合唱に。何度も「出会ってくれてありがとう!」と言葉にしてからステージを降りると、場内はそのまま大合唱を続けてアンコールを求める。
アンコールでは、リクエストに応えてアカペラで「はじめての記念日」を歌うなど、より一層ステージと境界のないファンとのコミュニケーションを見せた。そんな様子からは想像できないようなシリアスさが感じられたのが、〈夢の街東京は思ってたより/汚くて冷たくて寂しかった〉と歌い出した「へいよう」だ。「去年の路上ライブツアーをしているときに、自分の中で煮えたぎる“悔しい!”と思う感情を歌った」というこの曲は、挫折感を包み隠さずに歌う姿が胸を打った。
「新曲、聴いてくれましたか!?」と問いかけると、もちろん、とばかりの大歓声。6月26日にリリースしたばかりのDa-iCE花村想太との共作曲「オレダノミ」が紹介された。「想太くんはのんぴーのことをSNSでめちゃくちゃ確認してくれて、やりたいこと、言いたいことをすごく研究してくれたみたいで、何度も話して作らせてもらいました。聴いたとき歌ったときに誰もが主人公になれるような、自己肯定感が上がるような曲になっています。今日が初歌唱、緊張しています(笑)」
幾何学的なイントロから歌い出した「オレダノミ」は、張り詰めたエレクトロビートと、がなるような歌いまわし、歌詞が強烈無比。〈俺こそがパワースポット〉〈俺に向かって神頼み〉なんて堂々と歌えるシンガーはなかなかいないだろう。歌い終えると、興奮気味にライブ中の20時にミュージックビデオが公開されたこと、サビのダンスの振付はクリエイターチームのローカルカンピオーネが担当していることを明かした。
「今日ここにいる人たちが、明日また今日よりもひとつ頑張れたらいいなと思います」。ラストの曲は、「ヲレら」。豪快にギターをかき鳴らしながら、ネガティブな感情を明るくポジティブに変換する歌で会場全体を巻き込んで締めくくった。「あ~、楽しかった!【一日一生ツアー】、最高でした。ありがとうございました!」何度の感謝を伝えてステージを後にしたのんぴーに、お客さんは「一日一生」を大合唱して再びステージに呼び戻す。「何してんの!?」と驚きの表情でステージに戻って来たのんぴー。満面の笑みで一緒に歌い上げてファンから花束を受け取ると、最後はフロアをバックに記念撮影して、ツアーファイナルは大団円となった。個人的な感情を真っすぐに歌うことで、自分のことのように共感を集められるのが、のんぴーのアーティストとしての特徴であり強みなのだろう。多くの曲で大合唱になっていたのが印象的だった。そうした曲たちからすると異色な新曲「オレダノミ」のリリースを経て、今後はどう展開していくのか。その才能に無限の可能性を感じたライブだった。
Text by 岡本貴之
Photo by Shohei Katada
◎公演情報
【のんぴー 「一日一生」 Tour 2024 】
2024年6月28日(金) 東京・shibuya eggman
▼セットリスト
1. ウロボロス
2. たら福
3. 楽笑
4. Eye’s on Me
5. Perfect(TOMIカバー)
6. 一日一生
7. でんせん
8. 楽笑
9. てんさい
EN1. へいよう
EN2.オレダノミ
EN3.ヲレら
洋楽2024年11月22日
故マック・ミラーの遺族が、2020年にリリースされた最初の遺作アルバム『サークルズ』の5周年を記念して、2枚目の遺作アルバムをリリースする予定だ。『サークルズ』は、2018年に急逝したミラーが生前に制作していたアルバムだった。 米ピッツ … 続きを読む
J-POP2024年11月22日
Eveが、TVアニメ『アオのハコ』エンディングテーマとして書き下ろした「ティーンエイジブルー」のミュージックビデオを公開した。 現在配信中の本楽曲は、11月27日発売のニューアルバム『Under Blue』にも収録される。 ◎映像情報 … 続きを読む
J-POP2024年11月22日
TM NETWORKのドキュメンタリー映画『TM NETWORK Carry on the Memories -3つの個性と一つの想い-』が、2025年春に劇場公開される。 1984年4月21日に、シングル『金曜日のライオン』でデビュー … 続きを読む
J-POP2024年11月22日
モーニング娘。’24の一発撮りパフォーマンス映像『モーニング娘。’24 – 恋愛レボリューション21 / THE FIRST TAKE』が、2024年11月22日22時にYouTubeプレミア公開される。 一発撮りのパフォー … 続きを読む
J-POP2024年11月22日
tuki.が、2025年1月8日に1stアルバム『15』を発売する。 同作は、tuki.が15歳を迎えるまでに作ったという楽曲が収録されたアルバム。「晩餐歌」をはじめ、「一輪花」「サクラキミワタシ」「ひゅるりらぱっぱ」といった既発曲のほ … 続きを読む