<ライブレポート>星屑スキャット 卓越した歌唱力と絶妙な選曲カバー、軽妙なトークで沸かせたツアー東京公演

2023年5月29日 / 18:00

 ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵、メイリー・ムーの3人によるユニット「星屑スキャット」が、2023年5月18日・19日に東京・EX THEATER ROPPONGIにてワンマンライブを開催。歌とトークによる2時間にわたるステージで、大勢の観客をたっぷりと楽しませた。

 このライブは、【星屑スキャット TOUR 2023『023』】と題した東名阪福ツアーの東京公演として行われたもの。本稿では、19日に行われた2日目の模様をお届けする。

 この日、東京は突然の豪雨が降るなど朝から不安定な天気だったものの、開場時間の18時頃には徐々に雨足も弱くなってきた。会場前では、【星屑スキャット TOUR 2023『023』】の文字が流れる電光スクリーンと共に多くの人が記念撮影をしていた。また、場内にはたくさんの祝い花が並んでおり、メンバーそれぞれの華麗な交友関係を想像させた。

 19時ちょうど、暗転すると小気味良いギターリフが流れ出して4つ打ちのリズムが加わるOvertureから、ステージ下手にミッツ、センターに和恵、上手にメイリーが姿を現して大きな拍手で迎えられてショーがスタートした。オープニング曲は、3人の声が重なるアカペラコーラスから始まる新曲「FREAK SHOW」。ギターのカッティングとシンセサイザーをメインとしたダンサブルなサウンドに乗って<鬼さん鬼さん 手の鳴る方へ>と繰り返すフレーズが印象的で、クールで音数が少ないトラックがデヴィッド・ボウイの「レッツ・ダンス」を連想させた。ステージは2段構成になっていて、それぞれの立ち位置の背後に、上段へと昇る階段があり、曲ごとに変化する電飾で彩られている。パンツルックに人の顔らしきデザインが施されたガウン調の衣装で身をひるがえしながら「ANIMALIZER」を歌う3人に向けて、客席からはペンライトの光もちらほら。

 2曲を終えるとMCへ。「どうもみなさん、こんばんは! 星屑スキャットです。今日はお足元が悪い中、たくさんお運び頂き本当にありがとうございます。今年のツアー【023】、先日大阪で初日を迎えて、昨夜こちらで2日目、そして今日は3日目ということで……3日目だろうとなんだろうと息は上がるんです」と、オープニングからの激しいパフォーマンスに息を切らせながら挨拶するミッツに会場からは笑いと拍手が起こる。コロナ禍を乗り越えて声出し解禁となったこのツアーを迎えたことに触れ、「みなさん、最初から野太い声援ありがとうございます(笑)」(ミッツ)、「ねえ!? すごかった! 黄色い声援というより黄土色ぐらい(笑)」(和恵)、「でもちょっと嬉しかったわよ!」(メイリー)と軽妙なトークを繰り広げる。まるで3人のお店に来たような気さくな雰囲気が楽しい。

 今日の会場にピッタリな「六本木心中」から「聖母たちのララバイ」と、昭和ヒット曲の定番カバーから、衣装をドレスにチェンジ。ハープシコードの音色で始まり文字通りポルカのリズムの乗せた「お姉さんポルカ」では、曲間にセリフもありドラマの中にいるような気分で曲に没入できた。賑やかなMCを挟んで、「BAD PARADISE」を作詞・作曲・プロデュースしたNONA REEVESの西寺郷太が再び手掛けた新曲「蜃気楼」を披露。スローテンポで妖しく揺蕩うようなサウンドとファルセットも織り交ぜたボーカルで、新境地を感じさせた。「大好きな曲です。なかなか攻略するのがむずかしい曲ではあったんですけど、噛めば噛むほど、という曲なので是非みなさまにも末永くかわいがっていただければと思っております。そのうち何かしらでお手元に届くと思いますので、健康だけには気を付けてお待ちください」(ミッツ)。今後、楽曲リリースが期待できそうだ。

 ライブ中盤で歌われたのは、昨年末にリリースされた竹内まりやのカバー「駅」。この曲が素晴らしかった。場内がノスタルジックなムードに包まれる中、3人の個性ある歌声がところどころで折り重なり1つになるコーラスワークを駆使して熱唱。見事な名演に、客席から拍手が鳴りやまなかった。ここで、「せっかく声が出せるようになったから」と、お客さんから直接リクエストを募るコーナーに。いろんな声が飛び交う中、松田聖子「青い珊瑚礁」を3人のアカペラによる絶品のハーモニーで聴かせて、客席からは大喝采。さらに日野美歌の大ヒット曲「氷雨」のサビをメイリーがソロ歌唱して唸らせた。ライブの本線に戻ると、エルヴィス・ウッドストックことリリー・フランキー作詞による「新宿シャンソン」で、しっとりとミュージカルのようなステージを見せた。

 お揃いの衣装にチェンジしてからの「半蔵門シェリ」では、EDMとレトロなユーロビートが融合したアレンジに乗って、艶やかにフリを決めながら歌い上げる。「すごく良い曲に出逢った」との紹介から披露されたのは、なんとヨッちゃんこと野村義男と、やっちんこと曾我泰久が率いたロックバンドThe Good-Byeの「浪漫幻夢 -Romantic Game-」。豪快かつキャッチーなサビを持つ極上のポップス曲で、伸びやかな歌声で大きなサウンドスケープを見せてくれた。続いては松任谷由実「真珠のピアス」をカバー。16ビート(厳密には90年代初頭にUKで大流行したグラウンドビート的アプローチ)で洗練されたシティポップが爽やかな空気を運んできた。

 コロナ禍で生まれたという曲「la distanza」からライブはクライマックスへ。「コスメティック・サイレン」では色とりどりのライトが行き交う派手な演出の中、フォーメーションを変えながらのエキサイティングなパフォーマンスで、客席からは黄色い声援が飛ぶ。「みなさん今日はありがとうございました! 最後の曲です!」(和恵)とのひと声から、大きな手拍子に乗って「REMEMBER THE NIGHT」をドラマティックに歌い本編を終えた。

 ツアーグッズのTシャツに着替えたアンコールでは、「BAD PARADISE」の心地良い演奏をバックに踊りながら、1人ずつセクシーに階段を降りて嬌声を集めていた。「こんな感じで私たちは17年も3人で歌っていますが、この先も変わらずこんな感じのままやっていくと思うので、是非ともご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます」とのミッツの挨拶に、客席からは万雷の拍手が送られる。「私たちが愛してやまないジャニーズソングを」と紹介されイントロが流れたのは、同じトリオグループ、少年隊のバラード「君だけに」。客席に向かい、思いを伝えながらメロウな旋律を歌う3人。星屑スキャットにとって特別な曲であることが感じられるシーンだった。ラストはミラーボールが回る中、「Absolutely Adorable」でステージと客席が一体となってライブは終了。「またお会いしましょう!」と、両手を広げてから深々と頭を下げて観客に感謝を示してエンディングとなった。

 オリジナル曲のクオリティの高さはもちろん、80年代の楽曲で統一されたカバーもセンスある選曲の妙が味わえた。そうした世界観を表現できるのは、3人の卓越した歌唱力があるからこそ。お客さんとの距離の近さも感じさせる愉快なトークも含め、2時間目一杯楽しませてもらった。ツアーは今後、5月27日福岡・ももちパレス大ホール、6月17日の愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホールと続いて行く。

Text by 岡本貴之
Photos by 唐澤友美

◎セットリスト
【星屑スキャット TOUR 2023『023』】
2023年5月19日(金) 、東京・EX THEATER ROPPONGI
1. Overture ~ FREAK SHOW(新曲)
2. ANIMALIZER
3. 六本木心中
4. 聖母たちのララバイ
5. Knock Me In The Middle Of The Night
6. お姉さんポルカ
7. 蜃気楼(新曲)
8. 駅
9. 新宿シャンソン
10. Interlude (Spin Me Round)
11. 半蔵門シェリ
12. 浪漫幻夢 -Romantic Game-
13. 真珠のピアス
14. la distanza
15. コスメティック・サイレン
16. REMEMBER THE NIGHT
<アンコール>
1. BAD PARADISE
2. 君だけに
3. Absolutely Adorable


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