<ライブレポート>MyGO!!!!!、大きな一歩を踏み出した【4th LIVE「前へ進む音の中で」】

2023年4月26日 / 19:00

 4月9日、【MyGO!!!!! 4th LIVE「前へ進む音の中で」】が東京・TACHIKAWA STAGE GARDENで開催された。

 MyGO!!!!!は、ブシロードの「BanG Dream!」(バンドリ!)プロジェクトから生まれたガールズバンドだ。「バンドリ!」は、これまで同名のアニメやゲームなどに登場するキャラクターの担当声優自身もPoppin’Party、Roselia、RAISE A SUILEN、Morfonicaといった“リアルバンド”を結成し、音楽活動を展開しているが、MyGO!!!!!はそのコンセプトをさらに進化し、深化させている。アニメやゲームの担当声優がバンドを組むところは「バンドリ!」バンドと同様ながら、ある種、 “歌ってみた”、“弾いてみた”的なアプローチを採用。2022年春の結成以来、声優陣の名前やビジュアルは公開しない覆面バンド、つまり“現実”と“仮想”のあわいの中に生きる存在として活動することで二次元コンテンツとの密着度をより高くしていた。

 そんなMyGO!!!!!にとって今回の立川公演はバンドのエポックともなるステージに。結成から1年の時を経て、ネクストステップへと歩み出すことを高らかに宣言する内容となった。

 この日のライブは、ステージ最前に貼られた透過スクリーンにその内容がテキスト表示される中、燈(Vo.)による3分に及ぶ朗読でスタート。その後、スクリーン越しに姿を現した燈、愛音(Gt.)、楽奈(Gt.)、そよ(Ba.)、立希(Dr.)は、「バンドリ!」シリーズのファン、通称・バンドリーマーの大声援と彼らが手にした色とりどりのペンライトの光、そして彼らの<Oh oh>の大シンガロングを背に、ストレートなパンクチューン「名無声」をドロップした。

 燈の「みなさんこんばんは! MyGO!!!!!です。本日はよろしくお願いいたします!」とのひと言でこの曲を締めくくった彼女たちは、ライブ序盤のセットリストをパワフルな楽曲群で構成する。自身4度目となるライブに多くのバンドリーマーが駆けつけたことを喜ぶMCを挟みつつ、「バンドリ!」プロジェクトの先輩バンド・Poppin’Partyの楽曲「ティアドロップス」のカバーバージョンと、自身の最新シングル「音一会」のカップリング曲「影色舞」(シルエットダンス)をプレイ。そして燈は、ここでごあいさつとばかりにボーカリストとしての能力の高さを発揮する。「ティアドロップス」では、愛美(Vo. / Gt.)の巻き舌を駆使した威勢のいい歌声がオリジナルバージョンを大胆にお色直し。一見、危うげで儚げながらも、ピッチは正確で、かつパワフルなハイトーンボーカルを披露し、四つ打ちダンスロック「影色舞」では軽快なステップを踏みつつ、立希とそよの生み出す力強くも心地よいグルーヴを見事に乗りこなしてみせていた。

 かと思えば「潜在表明」ではギタリスト2人がそのテクニックでバンドリーマーたちを魅了。愛音がかき鳴らす不穏なコードストロークをバックに楽奈がフィードバックノイズ混じりのリードギターを弾きまくる。さらにこの日初披露となる新曲「無路矢」(のろし)はこれまでのMyGO!!!!!のイメージを更新する1曲に。1970~80年代を彷彿とさせるオールドスクールな後ノリハードロックチューンにして、燈と楽奈のツインボーカルで魅せるこの曲を堂々たる佇まいでプレイ。あらためてメンバー全員がこのバンドのアンサンブル力の高さを見せつけていた。

 楽奈のワウを駆使した早弾きソロと、VOCALOID顔負けのリズム感で高速リリックをまくし立てる燈のボーカルが印象的だった、DECO*27「二息歩行(Reloaded)」以降のライブ中盤戦は、彼女たちはカバー曲を連投する。ピアノを大フィーチャーしたOrangestar「Henceforth」と、ストレートなギターロックである一二三「猛独が襲う」という2つのVOCALOIDナンバーと、J-ROCKの最新モードともいえる04 Limited Sazabys「swim」という、曲想や楽器の構成がまるで異なる3曲を、ボーカル、ツインギター、ベース、ドラムというロックバンドの王道編成のMyGO!!!!!なりにアレンジ。また「Henceforth」と「猛独が襲う」の曲間を立希のキックとクラッシュによるインプロビゼーションで繋ぎ、「swim」では愛音とそよがお見合いしながらそれぞれの得物をプレイしてリズムを支える中、楽奈が燈と背中合わせになりながらソロを披露するなど、ロックバンドらしいステージングを見せて、フロアの大歓声を巻き起こしていた。

 2022年11月リリースのメジャーデビュー曲「迷星叫」のプレイ後、「次が最後の曲です」とつぶやく燈にバンドリーマーたちが「えーっ!?」と返すや、その燈が「『えーっ!?』っていうの、ありがとうございます」とはにかむファニーなやりとりののち、MyGO!!!!!の5人はライブ本編最後の1曲に、2023年4月リリースの最新シングル曲「音一会」をセレクト。ハイティーンの彼女たちだからこそ抱える孤独感やそれに伴う切迫感をまくし立てる燈のポエトリーリーディングと、立希とそよが繰り出す高速ツービートが絡み合うこのパンキッシュな1曲をパフォーマンスした彼女たちは「ありがとうございました!」の言葉とともにステージをあとにした。

 直後に巻き起こったアンコールに応え、新衣装で登場した5人は「無路矢」をあらためて披露すると、直後のMCで、今夏、MyGO!!!!!の物語を追ったバンドリ!プロジェクトのアニメ新シリーズ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』がテレビオンエアされることと、8月12日に神奈川・KT Zepp Yokohamaで【5th LIVE「迷うことに迷わない」】を開催することを発表。これに大きな歓声が寄せられると、彼女たちはさらなるサプライズでバンドリーマーの度肝を抜いてみせる。

 ステージ最前の透過スクリーンにアニメの主題歌の情報が映し出されると、そのスクリーンが振り落とされ、ついにリアルバンド版MyGO!!!!!メンバーの正体が明らかに。燈役の羊宮妃那、愛音役の立石凛、楽奈役の青木陽菜、そよ役の小日向美香、立希役の林鼓子は怒号のような大歓声の中、「壱雫空」をプレイして、この日一番の熱狂を生み出していた。

 そしてステージ前方に並んだ“素顔のMyGO!!!!!メンバー”は新衣装をあらためてお披露目。バンドリーマーに「かわいい!」コールを強要するファニーなやり取りののち、キャラクターとして、そして声優自身としての意気込みを語り出す。青木が自身のMyGO!!!!!としてのこれまでの取り組みと今後の目標を大いに語り、感極まった小日向が泣き出す一方で、立石が「(ドラム経験者で声優としてのキャリアもある)鼓子ちゃんがお姉ちゃんみたいな存在で心強かった」と語れば、当の林は「あなたよりお姉ちゃんじゃないんだけど!」と笑顔でツッコミ。また羊宮は透過スクリーンが取り払われたことを受け「みんなの顔がめっちゃ見えますね」と笑顔を見せるなど、これまた5人の“素顔”の一端がうかがえるものとなっていた。

 この日のラストナンバーは「音一会」。ライブ本編以上にパワフルなプレイを披露した5人は、新たなるMyGO!!!!!としての一歩を踏み出したことを祝福するかのように、この曲を締めくくる<ありがとう>のリリックとともに拳を天高く突き上げていた。

 過日、Billboard JAPANで公開された彼女たちのインタビューの中で青木が語っていたとおり、これまでのMyGO!!!!!はずっと真夜中でいいのに。やAdoのようにネットを媒介に“現実”と“仮想”をシームレスに横断する、最新型の音楽家・バンドだった。だからこそ今後、自らの素姓を明かすことには、5人はもちろん、スタッフ陣、クリエイター陣にも多大な勇気や覚悟が必要だったことは想像に難くない。

 とはいえ、“素顔の5人”のプレイヤーとしての能力、そしてタレントしての魅力が十分なのはレポートやインタビューのとおり。しかもこの1年、覆面バンドとして活動していた事実はは、確実に今後のメンバーとバンドにとってもなんらかの影響、ケミストリーを起こすことになるだろう。それだけにある意味“普通”のバンドとなったMyGO!!!!!、“剥き出しのMyGO!!!!!”のこれからに期待を寄せたくなる。そんなワクワクの止まらない公演だった。

Text by 成松哲
Photo by ハタサトシ

◎公演情報
【MyGO!!!!! 4th LIVE「前へ進む音の中で」】
2023年4月9日(日)
東京・TACHIKAWA STAGE GARDEN
<セットリスト>
01. 名無声
02. ティアドロップス
03. 影色舞
04. 潜在表明
05. 無路矢
06. 二息歩行(Reloaded)
07. Henceforth
08. 猛独が襲う
09. swim
10. 迷星叫
11. 音一会
<アンコール>
12. 無路矢
13. 壱雫空
14. 音一会


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