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4月になりました。寒い冬を越えて、今年も春がやってきましたね。気持ちが明るくなるような“春”が四季の中で一番好き、というわりと世の中で多い意見とは逆に、春生まれでありながらもだんだんと空気がしっとりしてもの悲しくなっていく“秋”が断然好き、と思っていた私ですが、コロナ禍になってからなぜか春を待ち望んでいる自分がいます(単に部屋が寒いだけかも?笑)。そんな春になると、無意識で思い出す人であったり曲であったり。並べてみたらちょっと寂しい気持ちにもなっちゃったけど、直接私の思い出を共有していなくても、どこかリンクする部分ってあったりして、読み終えた後に何か思ってくれたら嬉しいな、と。あなたがこの季節思い出すのは誰?
「アウトサイダー」(’20)/清春
コロナ禍になって実に4度目の4月を迎えた。10年前も20年前も毎年、当たり前のようにライヴに行き、いつも観ているアーテイスト以外の出会いの機会にもワクワクした。まさかこんなことになるとは思わず、あの年の2月24日“今年こそはワンマンが観たい! アーティスト5選”というコラムを書き、その2日後にライヴイベントの自粛が言い渡されることに…。あのタイミングの悪さがやけに残っているのと、やはり時がきたらリベンジしたいなという想いがあった。その時あげた5組の中で今も一番気になっているのが清春だ。ちょうどその頃、2020年3月にリリースとなったアルバム『JAPANESE MENU/DISTORTION 10』は11曲中9曲がベースレスで録音。まったくその違和感を感じるどころか、むしろ逆手に取ったカッコ良ささえ感じてしまうラインナップだが、中でも「アウトサイダー」はイントロのギターリフからもうヤバい。そして何よりヤられたのは清春のその声だ。黒夢時代のような艶のある声もいいが、ヒリヒリするような危うい渋みと色気が楽曲と結び合って、正直、なんだこれ!?とわけがわからなくなるほどたまらなくカッコ良い。まるでランダムに言葉を組み合わせたような、意味をつなげようと思うと解読が難しい歌詞の響きも、個人的には絶妙に心を掴まれた。妖艶なビジュアルもその楽曲センスも歌声も、“歌う”ために生まれてきたとしか思えない存在だと、嫌という程感じられるナンバーだ。
「GOOD BYE」(’96)/hide
春はhideを二段階で思い出す。《また 春に会いましょう》なんて言葉を残すから、寒さが和らぎ始めるとまるで草花が土の中で芽吹く準備をするかのように“春”を意識する。じゃあ、それって具体的にいつ? そう考えると、結局それは“5月2日”に行きつくんだよね。そして、告別式が執り行なわれた築地本願寺にて出棺の際流れたのが「GOOD BYE」。2ndアルバム『PSYENCE』よりシングルカットされたこの曲は、hideの声とギター、その他極限まで削ぎ落としたシンプルさゆえに、目の前で弾き語って聴かせてくれているような、そんな気さえしてしまう。いつだったか《手の中の持ちきれない 思いは全て捨てて行こう》という歌詞が、大切なものを何ひとつ手放すことができない私には、あまりに酷で号泣したことがある。でも、ふともしかしたらhideもそうで、この曲自体が自分に向けて語りかけているんじゃないか?なんて思ってみたりもした。一曲の中に、彼の強さや弱さ、やさしさ、いろんなものが息づいてる。“GOOD BYE”という言葉とあまりにもその歌声がやさしくて、胸がキュゥってなってツラくなるけど、聴き終わるとまた頑張ろう!って思える不思議な曲。まるで、いつか自分がいなくなった後も、誰もが壁を乗り越えて歩いてゆけるように、置いていってくれたかのよう。hideはいなくなってしまったかもしれないけれど、この歌が存在する世界としない世界では大きく違う。永遠の効力を持つ素敵な曲に、2023年の現在も私たちはきっと助けられているのだろう。ありがとう、hideちゃん。
「Thanx」(’95)/DIE IN CRIES
1995年に解散したDIE IN CRIESのことがたまらなく好きだった。Vo.KYO(現D’ERLANGER)、Gu.室姫深(元THE MAD CAPSULE MARKETS)、B.TAKASHI(元THE ACE)、Dr.yukihiro(現L’Arc~en~Ciel)からなるこのバンドと共に過ごせたのはわずか2年。今でも結論のでないことがある。それは“解散ライヴ”はあったほうがいいか、ないほうがいいか。たぶん、やり場のない思いや悔いが残らないのは前者なのだろう。ただ、刻一刻と近づいてくるその時を秒読みするような毎日は本当に辛いものだったから、いっそのことある日突然いなくなってくれた方が楽かもしれない(もちろんそんなはずはない)と思えてしまうほどだった。でも、実はその期間よりも解散ライヴ当日よりも、一番苦しかったのは目の前で解散を告げられた瞬間でした。それが、奇しくも後にKYOの親友であるhideの命日となる“5月2日”のライヴ終演後で、係員に退場を促されながらも涙が止まらずステージを呆然と見つめていた、そのバックで会場内に流れていたのが、まだ発売前のアルバムに収録されていた「Thanx」でした。解散することが決まってから制作された曲だからこその、夢を描いてバンドが産声を上げた夜から時を経ていま別れてゆこうとする心情…いま聴いてもたまらないな。あの時蒔いた4つの種は、それぞれの場所で花を咲かせているけれど《いつの日か また逢おう my friends この場所で必ず その日までサヨナラ》そろそろ“その日”はどうですか?
「桜の花咲くころ」(’01)/ ILLUMINA
綺麗な花はたくさんあるけれど、桜の花にこんなに日本人が胸を弾ませるのは、陽射しがやわらかになる季節であるとともに、きっと一年の中でほんのわずかな期間にしか出会えない美しさだから、より人の記憶に残るのだろう。その記憶と自分の思い出が重なったら、それは何倍も美しくも悲しくも楽しくも、胸に刻まれるに違いない。2001年にリリースされたILLUMINAの3rdアルバム『ACCIDENT』に収録されている「桜の花咲くころ」は、Vo.Naoが亡くなった祖母を想って作った曲だ。心のざわめきを畳み掛けるように高ぶらせるドラミングと、切なさが頂点に登り詰めるような文字通りの“泣きのギター”が、とても印象的なドラマチックなナンバー。そして、悲しい曲ではあるけれど素敵だなと思ったのは、歌詞に反映されたNaoの考え方。《愛する人のもとへ静かに》《不思議と涙こぼれてきたよ それが彼方の幸せでも》もちろんシチュエーションはそれぞれあると思うが、そんなふうに思えたら、きっと救われる人はたくさんいるんじゃないか、そう思ったのです。また《こんなに晴れた》《夜は雨になり》と、その“春の一日”を特定する描写が、よりリアルに切ない気持ちに拍車をかけて感情移入してしまう。さっき久しぶりに聴いてみたら、何を思い出したのか涙が勝手に流れていました。本日、窓の外は快晴の青空、そして夜は雨に。今日の日も、誰かの“桜の花咲くころ”としてインプットされたかもしれない。
「女神」(’21)/ALICE IN MENSWEAR
あれから一年が経とうとしている。昨年の4月15日、ALICE IN MENSWEARのKOJI(ex.La’cryma Christi)が旅立った。このコラムでもその後“追悼”の記事を書かせてもらったが、今年の春は特に、冷たい雨の降ったあの日を思い出す。このユニットはVo.michiとGu.KOJIからなっている。それゆえ、メンバー同士の絆や友情、喜びや悲しみetc..全てが“ふたり”での共有になるため、その結び付きは普通のバンド編成とは比べられないのだ。特にこのふたりにとって、その片方の翼をなくした残されたひとりの喪失感とツラさは計り知れない。2ndアルバム『GRAPPLE THE WORLD』収録の「女神」を聴くたびに、同じことを思う。michi.にとっての女神はKOJIだったのだと。この曲で、人間らしい弱みを曝け出すことを厭わず、愛や癒しへの枯渇を純粋に求めたというmichi.に、強がることも大事だし理想を追いかけることも大事だけど、時には素直な気持ちを曝け出すことで、心通わせたり強くなれる、という解釈で受け止めたKOJI。《君が笑う声で癒されて 僕の歌声で守る世界》という歌詞には、ふたりの笑顔しか重ならない。この一年を経て感じたのは、KOJI不在の今、ファンの存在がmichi.にとっての“女神”になっていること。とても美しく羨ましいほどの関係性だ。だから、“君”の居ない世界で生きたとしても、これからも“僕”の命は輝き続けてほしい、心からそう願っています。
TEXT:K子。
K子。 プロフィール:神奈川・湘南育ち。“音楽=音を楽しむ”ことを知り、好きな音楽の仕事がしたい!とOLをやめてオリコン株式会社に9年所属。旅行業界に転職後、副業で旅・エンタメ関連のWEBで執筆するも、音楽への愛が止められず出戻り人に。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。最愛のバンドがついに復活してくれてもう泣くしかない。
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