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『DEAD END~The first four works~Vinyl Collection』と題して、DEAD END の初期 4 作品の アナログ盤が6月30日(水)に再発される。1989年にリリースされた『ZERO』に関しては、初のレコード盤でのリリースとなる。このバンドに強い影響を受けたことを公言しているミュージシャンは数知れないので、リアルタイム世代でなくてもこの4作を愛聴しているリスナーは多いだろうが、やはりCDやストリーミングで聴いている人が大半なのではないだろうか? DEAD ENDが登場し、唯一無二の存在感を放ったあの頃の息吹を追体験する上でも、アナログ盤を通じて聴くのは楽しい時間となるに違いない。この4作品の最初のアルバム『DEAD LINE』も、まさしく音楽を聴く手段の主流がレコードだった頃にリリースされたアルバムだ。
1986年に大阪のインディーズレーベル“Night Gallery”からリリースされた『DEAD LINE』が音楽シーンに与えた影響を分かりやすく紹介するには、当時のインディーズについて最初に説明するべきなのだろう。90年代末辺りからメジャー作品と同等のセールスを記録することも、それほど珍しくなくなっていったインディーズ作品だが、80年代半ば頃だと“アンダーグラウンドシーンでのみ流通するアイテム”という印象が強く、当然ながら全国流通するはずもなく、取り扱う店舗も限られていたので、ごく僅かな枚数が売れることしか期待できなかった。しかし、『DEAD LINE』は驚異的なセールスを記録し、1万枚を突破したことを記念してピクチャー盤もリリースされた。ほぼ同時期に他のいくつかのインディーズ作品が上位ではないもののオリコンチャート入りするようになり、それは2、3年後のバンドブームにもつながっていった。そういう状況と少なからずリンクしていた作品としても『DEAD LINE』は位置づけることができそうだ。いずれにせよ、“インディーズとは何か?”を幅広い層に認識させて、“メジャーデビューしていないながらも、高い音楽性を持ったミュージシャンはいるのだ”と、ライヴハウスシーンへの注目を集める起爆剤になった点でも、『DEAD LINE』には注目させられる。
そして、言うまでもなく音楽面でも『DEAD LINE』が当時のリスナーに与えた衝撃は大きかった。この頃、海外では数々のハードロック/ヘヴィメタルバンドが高い人気を誇り、日本でもジャパニーズヘヴィメタル、通称“ジャパメタ”と呼ばれる様々なバンドが活躍していたが、DEAD ENDの『DEAD LINE』はそれらとは異なる香りを何処となく漂わせていたことに、まずは触れておきたい。例えば「Spider in The Brain」の歌い出し、《慟き叫ぶ鬼の串刺し 何かに憑かれた餓鬼の群れ》は、この頃のDEAD ENDの作風を象徴するフレーズのひとつだろう。頽廃的、猟奇的な禍々しさを想起させる要素がアグレッシブなサウンドと共に迫ってくるのが、『DEAD LINE』の曲たちの独特な味わいであった。
収録されている8曲のうち7曲はTAKAHIRO(Gu)が作曲を手掛けている。彼はこの作品の制作の途中で脱退し、TERRA ROSAのメンバーだったYOU(Gu)が後任として加入した。少々入り組んでいるので分かりやすく整理すると…
・「Spider in The Brain」「Back in The Shadows」「Sacrifice of The Vision」「Perfume of Violence」「Beyond The Reincarnation」:バッキングはTAKAHIROがプレイ。
・「Frenzy」「The Awakening」:バッキングはYOUがプレイ。
・上記の7曲のソロをプレイしているのは、全てYOU。
・「Definitive Urge」:CRAZY“COOL”JOE(Ba)が作曲。ギターは全てTAKAHIRO。
…というかたちでレコーディングされている。
「Definitive Urge」に関しては、「ちょうどニューウェイブブリティッシュメタルが出てきた頃で、IRON MAIDENがその頃好きだったのもあるのかもしれませんね」とCRAZY“COOL”JOEが本稿のためにコメントを寄せてくれた。
「YOUちゃんが加入というか参加したのは、レコーディングが終わってツアーが控えていたので、そのままツアーに引っ張ってきたという成り行きです。“バンドに入ってくれ”と言われたこともないし、“入る”と言ったこともないと、本人はしばしば言っていました。弾いてもらうにあたって、“思いっきり好きに弾いてくれ”というようなことを僕が言ったらしく、そのことに心を動かされたようなことを後年言っていました」(MORRIE)
「YOUちゃんを誘ったのは俺じゃないと思うよ。急に東京でライヴを演ることになって、無理矢理YOUちゃんを拉致して車に乗せて鹿鳴館かなんかに連れて行ったことは覚えています(笑)」(CRAZY“COOL”JOE)
TANO(Dr)の在籍時、MIANATO(Dr)の加入前だったこともあり、本作は多くのリスナーが“DEAD ENDサウンド”として思い浮かべるはずのものとは趣きが異なっているのは確かだ。しかし、MORRIE(Vo)の歌詞の作風や歌唱スタイルは、後のものにつながる色合いがすでにある。YOUのメロディアスかつスリリングなフレージング、楽曲を活き活きと躍動させるCRAZY“COOL”JOEのプレイにも引き込まれずにはいられない。この時点でDEAD ENDが只者ではないことが、各曲を聴けばよく分かる。
「売れたこと自体は嬉しい反面、複雑な心境でした。というのは、自分の出来栄えの不甲斐なさに、“売れないでくれ”と願っていましたから」(MORRIE)
「その頃、そんなイメージはなかったかな? あまり覚えてないけど。そんなに売れると思ってなかったし、そんなにウケると思ってなかった。関西であの頃、派手で変なバンドが面白かったのかな?」(CRAZY“COOL”JOE)
『DEAD LINE』は半ばデモテープに近い感覚で制作が進められたようで、本人たちの言葉も裏付けるとおり、売り上げ枚数の多さや反響は予想外のものだったらしい。しかし、「Perfume of Violence」「Back in The Shadows」「Frenzy」など、秀逸な曲が並んでいて、今聴いてもとてもフレッシュだ。偉大なバンドの初期の姿が記録されているという点でも、このアルバムの存在感は非常に大きい。
text by 田中 大
LPアナログ盤『DEAD LINE』
2023年6月30日(金)発売
LHMV-2003/¥6,000(税込)
※完全生産限定アナログ盤
※180グラム重量盤
※1986年作品
<収録曲>
■SIDE A
1. Spider in The Brain
2. Frenzy
3. Back in The Shadows
4. The Awakening
■SIDE B
1. Sacrifice of The Vision
2. Definitive Urge
3. Perfume of Violence
4. Beyond The Reincarnation
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