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所属アーティストの楽曲原盤権をNFTで所有し、収益の一部はファンへリターンされる音楽サービス『OIKOS MUSIC』。同サービスについて発起人のひとりであり、数多くのアーティストへの楽曲提供、プレイヤーとしてもOfficial髭男dismやeillなどのライヴサポートを行なう、宮田’レフティ’リョウに訊いた。
【座談会参加者】
■宮田’レフティ’リョウ
OIKOS MUSIC代表取締役。Official髭男dism、MISIA、あいみょんなど多くのアーティストへ楽曲提供・プロデュースするほか、演奏家としても活動中。OIKOS MUSICよりリリースした全楽曲をプロデュース。
■石田博嗣
大阪での音楽雑誌等の編集者を経て、music UP’s&OKMusicにかかわるように。編集長だったり、ライターだったり、営業だったり、猫好きだったり…いろいろ。
■岩田知大
音楽雑誌の編集、アニソンイベントの制作、アイドルの運営補佐、転職サイトの制作を経て、music UP’s&OKMusicの編集者へ。元バンドマンでアニメ好きの大阪人。
まずはサービスから ヒット曲を出すことが大切
岩田
「2022年4月にOIKOS MUSIC株式会社が起業され、8月30日に原盤権(楽曲自体の権利)などを扱うマーケットプレイス『OIKOS MUSIC』をローンチされました。宮田さん、コバヤシユウジさん、市村ヒロさんの3人で起業されましたが、どのような経緯で始まったのですか?」
宮田
「コバヤシは作曲家など音楽業界で裏方の仕事をしていますが、私は10代の頃に一緒にバンドを組んでいたことがあるので、長年の仕事仲間なんです。市村はビジネスサイドの人間でウェブチケットサービスの会社を立ち上げたりしていますが、彼も昔はバンドでギタリストをしていて、そのバンドのプロデュースを私がさせてもらっていたので面識がありました。市村が本腰を入れて音楽ビジネスをやりたいという話をコバヤシにしていたそうで、私がふたりに呼ばれたんですね。私も楽曲制作やアーティストのプロデュースをする中で、クライアントワークだけではなく、新たにアーティストを生み出したいという想いを3年前からコバヤシにしていたので。それで集まった時に説明を受けて、音源の権利をNFT化して新しいものを作り、マネタイズしていくという仕組みが面白いと思って参加したのが始まりですね。」
岩田
「なるほど。ふたりは宮田さんが参加されることで実現できる想定だったんでしょうね。」
宮田
「話を聞いて、私はミュージシャン側に立ってプロデュースや楽曲制作にフォーカスして動けると思えました。ただ、NFTについての理解が難しくて(笑)。理解していくと理にかなったサービスですし、新人開発をするだけではなく、プラットフォーム自体がムーブメントを起こせるとも感じました。」
岩田
「『OIKOS MUSIC』は“OIKOS”という名称で楽曲の原盤権をオンライン上で購入することにより、アーティスト活動費を支援できます。そして、応援しているアーティストが各配信サービスで得た収益に応じてOIKOSを所有しているファンにも収益分配がされ、所有者限定のイベントへの参加もできる。これはありそうでなかったサービスですよね。起業するまでには時間がかかったのではないでしょうか?」
宮田
「実はその話をされてからからすぐに立ち上げました(笑)。突貫工事ではないですが、とにかく善は急げの精神で進めて、4月からローンチされる8月までの間に5アーティストを探して音源制作をして…という流れでしたね。」
石田
「確かにNFTが話題になってから2年も経っていないので、その短い期間での準備も納得です。とはいえ、すごいスピードですよね。」
宮田
「3人とも思い立ったらすぐに動けますし、全員に決定権があるので。携わっているスタッフのみんなも同じように動ける人ばかりだからこそ実現できましたね。」
石田
「柱の3人がそれぞれプロとしてのノウハウを持っているからこそ、力を合わすことで実現できたわけですね。」
岩田
「先ほどNFTを理解するのに苦労されたとおっしゃっていましたが、『OIKOS』について、私は一般的な企業の株を買うというイメージだと分かりやすいと思いましたね。」
宮田
「まさにおっしゃるとおりだと思います。私も株価のような投資商品の側面は強いサービスだと思うので。それと同時にアーティストを応援できるというクラウドファンディング的な側面もあって。最終的に原盤をファンとシェアして、収益の一部をアーティストとシェアして、ファンも収益が得られる投資商品になるかたちを目指しています。しかし、現在はアーティストの原盤制作費をファンが一緒になってカバーするというクラウドファンディング的な側面がメインですね。でも、その流れを変えるためにもまずはヒット曲を『OIKOS MUISIC』から出すことが大切で、それがないと先に進めないので、みんなで頑張っています。」
アーティストに近い位置で ファンがサポートをできる
岩田
「『OIKOS MUSIC』は、アーティストのファンクラブよりも近い位置で応援できるところもいいですよね。」
宮田
「『Club OIKOS』というサービスでは、OIKOSを所有しているファン限定コンテンツが視聴できたり、限定ライヴに招待で観に行けたりもします。そこも大きな魅力ではありますが、ファンのみなさんにはアーティストに近い位置でサポートができる、まさに株主のように応援できることで、自分の意見もアーティストへ発信でき、その結果として収益を得られるというプロデュース面も独特な仕組みです。」
岩田
「ファンはどのくらいの距離感でアーティストと接することができるのですか?宮田:アーティストによって異なりますが、将来は意見交換ができるイベントを開催して、もっと密にかかわれるようにしたいです。すでにそのような広がりは起こっていて、ファン同士で“こんなラジオがあるので、みんなで楽曲のリクエストをして広めていきましょう!”というやりとりをされているのを見たりするので、サービスを作って良かったと感じています。」
石田
「ファンもアーティストを育てることで、その実績が収益の分配につながるし、クラウドファンディングとは違った目線で支援できるんでしょうね。」
宮田
「実際に先行投資してアーティストを一緒に育てるという点は、株式投資に似ていますので、将来的にその目線でも楽しめるようにしていきたいですよね。」
石田
「そうですよね。近い将来、いわゆる投資家の人たちがアーティストの未来へ投資するかたちで参加すれば、もっと大きなサービスになっていく気もします。」
宮田
「そのためにもっと頑張って、まずはヒット曲を生み出したいですね!」
岩田
「ファンのみなさんもアーティストが飛躍したら、“私が育てたんです!”と胸を張って言えるのもいいですよね。」
宮田
「そうです。OIKOSがそれを証明してくれますから。昔からその視点での話って多いじゃないですか。“私はインディーズから応援していたよ”と言ってもかたちが見えない的な。それが、実質的なかたちとして証明になるわけです。自慢したから何があるということでもないんですけどね(笑)。でも、アーティストも嬉しいんですよ。そういうのって。」
岩田
「それをきっかけにファンの輪が広がるでしょうし、好きなアーティストについてファン同士で話せる機会が増えるかもしれませんよね。」
宮田
「音楽コンテンツの触れ方や見せ方が変わってきている今だからこそ、ファン同士の交流が大切になるでしょうし、アーティストも目に見えるかたちでファンとつながっていくのがいいと思うんです。」
岩田
「OIKOSはオンライン上の商材ですから、メタバースとも相性が良いと思います。仮想空間でライヴやフェスが開催されているので、現実と仮想空間を行き来しながら交流できるんじゃないですか?」
宮田
「まさにおっしゃるとおりで。メタバースでの展開も面白いという話は出ているので、今後は展開していければいいですよね。」
アーティストも一緒に育つ サービスになるようにしたい
岩田
「ローンチ時には、LALATAN、リトルスクーター、Canata、カネコミレン、群青マキという5アーティストが所属して楽曲をリリースしました。さらに、2023年の3月には、さわりさとDumyy Louも加わって。シンガーソングライター、バンド、ユニットなど幅広いジャンルが揃っていますが、どのアーティストも無名に近い若手です。新人発掘に苦戦しているレコード会社もある中、どのようにしてアーティストを見つけているのでしょうか?」
宮田
「主に探してきたのはコバヤシですが、草の根戦法というか、実際にライヴハウスに足を運んでいますね。また、私も10代の頃にお世話になったバンドコンテストの審査員をやらせてもらっているので、そこから見つけたりもしています。」
岩田
「その手法は今の時代では珍しいくらいですよね。5アーティストをどのように決められたのかも気になります。」
宮田
「私は音楽に関して雑食なところもありますし、ある程度はどのアーティストも売れるための施策やイメージが湧いてしまうんです。なので、同じものをずっとやっていると飽きてしまうんですよね。だからこそ、いろんなジャンルの音楽、アーティスティックなものを『OIKOS MUSIC』には置いてみたくて。アーティストもクリエイターもそうだし、チーム全体でワクワクできたのが、あの5アーティストだったんです。例えば、LALATANは面白いことがしたくて、あの組み合わせにしました。」
岩田
「LALATANはデビューが決まってから組まれたユニットなんですか!?」
宮田
「実はそうなんです(笑)。18歳のヴォーカルのCocoと21歳のドラムのManaのユニットなんですけど、初めは“Cocoちゃん、面白いよね”と話していた中で、コバヤシから“ピンヴォーカルだけだとね”という意見があって。そこで、ドラムとヴォーカルのユニットは少ないと思い、Manaちゃんにも参加してもらったんです。」
石田
「なるほど。でも、それがアーティストのプロデュースということですからね。ピンでヴォーカルを売るよりもユニットを組んだほうが華やかになると考えて動かれたと。」
宮田
「この考えはプロデューサーの目線かもしれませんね。」
岩田
「弊誌で群青マキさんに取材した時には、宮田さんが楽曲制作にしっかりとかかわっているとうかがいました。楽曲制作にも参加されているのでしょうか?」
宮田
「アーティストによりけりですが、群青マキは自分で楽曲の絵がある程度描けるので、彼が思い描いている絵を話してもらってからアドバイスというか、アレンジメントに入ることで彼が描いた歌詞のイメージに近づけました。そんなアーティストもいれば、楽曲制作の根本的な部分から携わってハンドリングしないといけない場合もあって。ただ、曲が私たちのものになってはいけないので、どういうアーティストでも、そこはしっかりとディスカッションして当事者意識を持った上で制作してもらえるかたちを目指してやっています。」
岩田
「全国を弾き語りで回られているCanataさんをどこから見つけてきたのかも気になるのですが。」
宮田
「彼は人となりを見せながら歌っていくことに大きな魅力があるアーティストなので、“日本を一周して、いろんな経験を積んだらどうかな?”という話をしたんです。彼も頑張りたいと言ってくれたので、活動をサポートしながら一緒に楽曲制作をしています。」
岩田
「リトルスクーターはデビュー後まもなくヴォーカル以外が脱退したという衝撃的なバンドで。」
宮田
「バンドなので、転機の時期にはいろいろありますよね。ファンのみなさんにどう説明しようかと悩みました(苦笑)。それでもバンドとして辞めなかったところが、ある種の強さだと思います。」
岩田
「馴染みやすい人柄もポイントのカネコミレンさんにも注目しています。」
宮田
「彼女はチャーミングで、声がとても良くて。洋楽が好きで、魅力的なバックボーンを持っているところも含めて世界へ発信していきたいひとりです。」
岩田
「これからのアーティストも『OIKOS MUSIC』に所属すれば、現役で活躍されているプロの方に育ててもらえるのも大きな魅力ですね。今年でサービスは2年目を迎えますが、どのような施策を考えているのでしょうか?」
宮田
「この春を目処に収益の分配化がスタートするので、サービスとしては新しいステージに移行します。それと同時に今までどおりにアーティストを見つけて広げていきながらも、インディペンデントなアーティストが利用しやすいものとして『OIKOS MUSIC』を広めていきたいです。」
石田
「『OIKOS MUSIC』がブランド化して、所属しているアーティストの楽曲なら聴いてみたい、アーティストからも参加したいと思ってもらえるようなものになればいいですね。」
宮田
「そうですね。“あそこのラインナップを見ればいいアーティストがいるぞ”と思ってもらえることは所属アーティストにとってもいい影響があると思います。なので、他社のアーティストの楽曲配信も『OIKOS MUSIC』からできるようにもして、サービスの充実化を目指して動き続けたいですね。」
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