エンターテインメント・ウェブマガジン
V系シーンの異端児バンド・SuGのフロントマンとしてデビューしてから15年。2018年のソロプロジェクト・sleepyhead始動後も画期的なアプローチで注目を集め続けた武瑠が、2022年11月22日に自身の活動の集大成となる主催フェス【武瑠 15TH ANNIVERSARY「STREET GOTHIC FES」】を東京・豊洲PITにて開催した。
<神使轟く、激情の如く。「このまま帰るのはイヤなんですよ!」>
SuG時代からジャンルレスなフェスを主催してきた武瑠だが、今回のイベントには、親交深い多種多様なアーティストが集結。その中でトップバッターを務めたのは、イヴ(ViViD)が作曲提供している縁からミュージックビデオを制作したこともある、アイドルを超越したプログレッシヴミクスチャーロックグループ・神使轟く、激情の如く。。今春、日本武道館でのワンマンライブを大成功に収めた実績は伊達じゃなく、凄まじい轟音に包まれながらメンバー6者6様に個性を爆発させながら歌い叫ぶ姿は圧巻で、誰もがまるでロックスター。「武瑠さんの15周年のすげぇ素敵なイベントに呼んでもらって、ただ火を付けてそのまま帰ります。それはイヤなんですよ! せっかくあなたたちとこうやって出逢えたのに、このまま帰るのはイヤなんですよ! あなたが想像したことのない、ここにいる全員が想像したこともない未来へ繋げていきたいんだよ!」と神激の世界を命懸けで創造していく様は、デビュー5年目とは思えないロックレジェンドの様相を呈していた。
<夕闇に誘いし漆黒の天使達「豊洲PITのみんなぁー! おーはーよー!」>
そんな初見のオーディエンスの誰もがぶったまげたであろう彼女たちのアクトを受けながらも、一瞬にして唯一無二のマイワールドに会場を染め上げてみせたのは、初めて買ったCDがSuGの「MISSING」だったメンバーを擁する、次世代からの刺客。コミック系ラウドバンド・夕闇に誘いし漆黒の天使達。若者から絶大な人気を誇るYouTubeチャンネルでも爆笑を生み続けている彼ららしく、1曲目から「豊洲PITのみんなぁー! おーはーよー!」と刺々しさと開放的なキャッチーさを同居させたボーカル&バンドサウンド、思わずニヤけてしまうネタ満載でユーモア溢れる歌詞のミクスチャーで、絶え間なくオーディエンスを熱狂させていく。また、今回のイベントへ出演が決まったタイミングで、小柳(vo)がTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也と偶然呑む機会に恵まれたそうで、何とか自分のことを印象付けようと酔っ払い過ぎた結果「おまえ、今すぐ帰れ」と怒られたエピソードを披露し(笑)、その気まずさを振り払うように(?)爆発的なステージングを繰り広げていく姿も印象的だった。
<SHIN「武瑠の15周年のお祝いに贈ろうと思います」>
V系シーンの異端児的存在だったSuG同様、他の誰のようでもないアクトを繰り広げた後輩たちに続いて登場したのは、武瑠とはSuGとViViDのボーカル同士の時代からライバル関係にあり、今では互いに唯一無二の戦友と呼べる仲になったSHIN。「武瑠の15周年、みんなで一緒に祝っていこうぜ!」とキラーチューンを惜しみなく畳み掛けながら、同じ時代を共に駆け抜けたそれぞれのファンを一体化させていく、その光景の美しさたるや。そんな歴史を背負った者にしか生み出せないパフォーマンスを繰り広げていく中で「こんなにもたくさん、僕の戦友である武瑠のお祝いに来てくれて、僕も嬉しいです。ありがとう! 同じ事務所で、SuGとViViDというバンドでふたりとも走り続けて、ライバル心もあってお互い手を取り合えなかった……それでも、今日、ようやくこうやって一緒にイベントができて本当に嬉しいです」と語り、さらに、ViViDが解散した日のことを歌ったバラード曲「2015.4.29」を「明るい未来に向けて、今日はこの曲を武瑠の15周年のお祝いに贈ろうと思います」と熱唱する場面は、ふたりの人生が重なり合うようで実に感動的であった。
<luz「おまえらを支配させてもらいますよ──」>
ステージのセットチェンジを経て登場したのは、2018年にオファーされた「M.B.S.G. feat.武瑠(sleepyhead)」をきっかけに仲良くなった、武瑠いわく“3次元から出てきたような悪魔貴公子”luz。歌い手として動画共有サイトで音楽キャリアをスタートさせながら、今や自身がオーガナイズする主催イベントを横浜アリーナで開催したり、東京ドームのステージにも立った経歴を持つほどの存在となったわけだが、そのスケール感のデカさは大所帯の技巧派バンド集団を従えたこの日のライブでも存分に発揮されていく。「おまえらを支配させてもらいますよ──」という宣言どおり、多種多様な音楽ファンを幻想的かつ攻撃的なマイワールドで圧倒したかと思えば、「神激さん、夕闇さん、SHINさん、THE ORAL CIGARETTESさん、武瑠さん、いろんな人に逢いたくて来ている人たちが集まった、今日この日は奇跡だと思っています。そんなすべての人の想いをひとつにしましょう!」と、あらゆるアーティストの信者たちを「キョウソスウハイ!」「全て捧げろ!」と狂乱させていき、最後は笑顔で「みんなのこと、大好きになっちゃいました!」とみんなでめちゃくちゃに飛び跳ねながら大団円を迎えてみせた。
<THE ORAL CIGARETTES「友達を救ってくれて、ほんまにありがとう」>
そして、満を持して5番手に登場したのは、SuG解散直後に放心状態だった武瑠を救済した縁もある、山中拓也(vo,gt)率いる百戦錬磨のライブバンド・THE ORAL CIGARETTES。ステージに現れるなり今や日本のライブシーンに欠かすことのできない存在となった理由を痛感させる、巧みで爆発的なパフォーマンスをノンストップで畳み掛け、凄まじい熱狂を生み出していく。また、MCでは「武瑠くんが音楽を辞めようか悩んでいたときに、ちょうど彼と出逢って。なるべく“終わる”という結末にならないようにずっと一緒にいたんですけど、彼は一週間ぐらいかな。お風呂にも入らずに、闇の底辺ぐらいまでいました。それは彼にとって恥ずかしいことかもしれないんですけど、彼はその一週間ですごくいろんなことを考えたんだと思います。それが今の音楽に繋がってると思うし、俺はそれを支えたのは武瑠くんのファンやと思います。だから、俺はすごくみんなに感謝しています。友達を救ってくれて、ほんまにありがとう」と語り、その上で「盛り上げて武瑠くんに繋げようなんて1ミリも思っていなくてですね、彼がめちゃくちゃ良いライブが出来るように、思いっきり燃え尽きて俺らは帰りたいなと思ってます」との宣言どおりの容赦ない、まるで大トリのような全身全霊のアクトで今日これまでで最大のスパークを生んでみせた。
<武瑠「武瑠の15周年を創ってくれて本当にありがとう」>
そんな敬愛する仲間たちの粋な計らいを受け、大トリでステージに登場した武瑠。15周年フェス限定スペシャルバンド(Ba. MOMIKEN(SPYAIR)、Gt.yuji(ex.SuG)、Gt.coHzy、Dr.前田遊野)に加え、かのSuGの日本武道館ワンマンライブを彷彿させる大所帯のダンサーも携え、まるでパレードのようなショーを展開していく。また、今や聴く人それぞれが主人公の名曲となった「桜雨」をミュージックビデオに出演している俳優・北村諒とデュエットしたり、今や親友と呼べる間柄となったラッパー・GOMESSと「ぼくのじゃない」を強烈に深化させたり、同じく盟友・圭-kei.-のコンテンポラリーダンスのようなギターパフォーマンスと共に「感傷終末世界」を披露したり、シドのベーシストでもあるAKiとまさかのL’Arc~en~Ciel「HEAVEN’S DRIVE」をカバーしたりと、夢のようなセッションを次々と繰り広げ、それに心底嬉しそうな表情を浮かべる武瑠とファンの姿が印象的だった。
さらに「叩き上げの百戦錬磨の共演者たちに今日だけのバンドで挑むのは無謀だと思います。だけど、音楽というのは、気持ちとか人生とか乗っかっているモノを全部掛け算して戦うものだと思っています。さぁ、この即席バンドが奇跡を起こします!」と、15年分のありったけのエモーションを込めて「heartbreaker」「1 2 3 for hype sex heaven」「SICK’S」とキラーチューンを畳み掛けると、各出演者のファンが入り混じっている会場を丸ごと巻き込んで、凄まじい熱量と一体感を生んでいく。そして、事前に発表されていたセットリストを走破し終えると、武瑠は「この最高の舞台を作ってくれた関係者、出演者、メンバー、ここにいるみんな、そして今日来れなかったみんな、武瑠の15周年を創ってくれて本当にありがとうございます」と感謝を述べ、未来へ向かう為の心情吐露を始める。
<「不完全でも美しくありたい!」>
「今初めてスランプになっています。今年の頭に『センチメンタルワールズエンド』という小説とアルバムを出して、その作品が大きすぎて、それ以降1曲も書いていません。自分は曲を作っていないと価値がないとずっと思っていたから、それから逃げる為にバリアを張って、自分が書いてきた歌詞を裏切るかのように心を鈍くして、今生きてます。でも、いろんなことを振り返って思ったんです。俺はロックスターになれなくていいし、アイドルになれなくてもいいし……弱くても強くある、自分らしい道をこの先見つけていきたいと思っています。だから、ここからまた心を敏感に戻していこうと思います。その勇気を今日15周年フェスでもらいました! 本当に最高の、貴重な、ふたつとない唯一無二のチャンスをくれてありがとうざいます! 16年目もよろしくお願いします!」
そして「不完全でも美しくありたい!」と、かつて“無理やり前向き=Heavy Positive Rock”という概念を多くのファンやリスナーに刻んだアンセム「不完全Beautyfool Days」をオーラスに披露。今から10年前にリリースされたSuGのシングル曲だが、今それを歌っても何の違和感もないどころか、武瑠の生き様の写し絵のように感じられ、客席には涙しながらはしゃぎまわるオーディエンスも多数見受けられた。振り返ってみれば、今も昔も武瑠がメッセージしてきたことは、傷だらけでも「人生絶好調だぜ」と笑い飛ばす在り方であり、死んでも良いから生き抜く姿勢であり、この15年は、不器用な人生と戦い続ける自分とリスナーを繋ぐ為の音楽の歴史そのものだった。すべてを歌い終えた武瑠は、それを証拠づけるように「不完全で醜くて最高に美しい15周年でした! ありがとうございました!」と満面の笑みでステージを後にした。
来年【HIMEHAJIME】なるイベントや誕生日ライブを開催することがすでに決定している武瑠。15TH ANNIVERSARY ALBUM『STREET GOTHIC STYLE』発売時のインタビュー(https://www.billboard-japan.com/special/detail/3631)で「不幸な材料を探すんじゃなくて、幸福な材料を集めていって、その上で自分にしかできないカルチャーミックス、音楽だけじゃない表現方法をこれまで以上に発信していきたい」と語っていたが、15周年以降も自身にしか表現できない、唯一無二の作品や光景を生み出していくであろう活動にぜひ注目してほしい。
取材&テキスト:平賀哲雄
◎イベント情報
ライブ【武瑠 LIVE 2023『HIMEHAJIME』】
2023年01月10日(火)下北沢BASEMENTBAR
OPEN 18:30 / START 19:00
・通常チケット 6,500円+tax
DRINK代別
一般発売日:2022年12月10日(土)10:00~
INFO:akubi Inc. / contact@akubiinc.tokyo
ライブ【武瑠 birthday scream party 2023】
2023年5月13日(土)THE超PINK(大阪)
OPEN 15:00 / START 15:30
イベント内容:
LIVE / DJ TIME / BINGO
・STANDARDチケット 6,500円+tax
ドリンク代別
INFO:akubi Inc. / contact@akubiinc.tokyo
J-POP2024年11月25日
GLAY×JAY(ENHYPEN)とBMSG POSSEが、東京・TOKYO NODEで開催中の【MUUUSE : MUSIC MUSEUM】の第2期に、コラボレーションアーティストとして参加する。 【MUUUSE : MUSIC MU … 続きを読む
J-POP2024年11月25日
TWSが、新曲「Last Festival」のミュージックビデオを公開した。 新曲「Last Festival」は、2024年11月25日にリリースされた1stシングル『Last Bell』のリード曲。1993年にソテジワアイドゥルが発 … 続きを読む
J-POP2024年11月25日
Aぇ! groupが、2024年12月4日にリリースとなるLIVE Blu-ray&DVD『Aぇ! group Debut Tour ~世界で1番AぇLIVE~』より、初回盤に収録されるビジュアルコメンタリーのダイジェスト映像を公開した。 … 続きを読む
J-POP2024年11月25日
ハルカミライが、4作目のフルアルバム『生きるとは鼻くそくらいの希望を持つことだ』を2025年2月1日にリリースすることを発表した。 11月25日に大阪・Zepp Osaka Baysideにて、【ハルカミライpresents「ヨーロー劇 … 続きを読む
J-POP2024年11月25日
澤野弘之が率いるチームプロジェクト、NAQT VANEのツアー【NAQT VANE Prologue Tour 2025 – DUOVERSE ep.1】が、昼夜異なるセットリストで行われることが発表となった。 新メンバーY … 続きを読む