エンターテインメント・ウェブマガジン
2022年も残すところ、あとわずか。ライヴ至上主義、超現場主義の俺としては、今年こそフェスやライヴハウスが通常運転に戻ってきて、モッシュやダイブは難しいとしても、歓声や合唱は当たり前になると思っていたんだけど、なかなかそうはいかなくて。2023年こそはロックンロールの爆音で復興の狼煙を上げて、溜め込んだ鬱憤をフェスやライヴハウスで大開放できるはずと期待しているのですが。コロナ禍でも超現場主義を掲げ、今年も99本(22年1月~12月5日現在)のライヴを観てきた俺。今回はライヴの記憶とともに、2022年の俺的ベスト楽曲を振り返ります!
「やっちゃえ!」(’21)/ ニューロティカ
さっそく2022年の曲ではないのですが(笑)。将来的にも2022年を振り返った時、きっとずっと記憶に残ってるであろうライヴが、1月3日に開催された、ニューロティカの日本武道館。結成38年目、“史上最遅”の武道館ワンマンという、今後も破られないであろう誇らしい記録を樹立したロティカ。そんな、武道館に向けて作った新曲が「やっちゃえ!」だった。さらに遡ること1年前、2021年の年明け。二度目の緊急事態宣言とか言って、世の中に暗いムードが蔓延して。誰もが消極的になってる時、「やっちゃえ!」と無謀とも言える武道館ワンマンの開催を発表。1年かけて、しっかり宣伝告知して、ライヴは見事、満員御礼の大成功! 逆境も味方に付けて“ピンチはチャンス”を体現したロティカは最高にパンクだったし、暗雲立ち込む世の中やロックシーンに希望の光を照らしてくれたし、俺たちを前向きな気持ちにしてくれた。あっちゃんが自称している“日本のロックの中心”は、まんざら嘘じゃないと思う。
「革命前夜」(’22)/氷川きよし
9月17~19日に行なわれた『氣志團万博 2022』。3年振りの現地開催&個人的にも久しぶりの大型野外フェスということで。3年振りに袖ケ浦の地に降り立って、万博のあの風景を見ただけで、感極まって泣いてしまった俺ですが。3日間に渡って繰り広げられた、ロック&エンタメ界の神々による夢の舞台は、10年間見続けて万博の中で指折りの素晴らしさだった! そんな中でも印象的だったのが、万博初参戦となった、氷川きよし。ライヴを観るのは初めてだったが、圧倒的存在感と尋常じゃない歌の上手さで、ジャンルも何もかもを超越してくる、氷川の凄まじさに驚愕! 全ての人の心を鷲掴みにした圧巻のステージに、エンターテイナーとしてのすごさを見せつけられたし、テレビや配信じゃ伝わらない生の素晴らしさを痛感。そして何より、『氣志團万博』最高かよ!と改めて思わされた。
「GR4VITY G4ME」(’22)/我儘ラキア
10月26日に行なわれた、我儘ラキアと新しい学校のリーダーズのツーマン。10月にライヴハウス収容率100パーセントと、楽曲の25パーセントまでの観客の声出しを認めるガイドラインが出されて。久しぶりに満員かつ声出しOKのライヴを観たのが、この日だった。観客の歓声を受けた我儘ラキアが、テンション最高潮の本当に素晴らしいライヴを観せてくれて。これまで健気に拍手や手拍子で想いを伝えてた観客が声を上げて気持ちを開放する姿、それに最高のパフォーマンスで応える彼女らの姿に感動して、ボロボロ泣いてしまった。考えてみたら、ラキアのライヴを初めて観たのは2019年3月。その後すぐ、コロナ禍に突入してしまったので、規制なしのライヴを見たのはそれっきり。しかし、厳しい規制が敷かれてる間も決して諦めることなくライヴを重ね、スキルを磨き続けてきた彼女ら。ライヴが通常運転に戻り始めてる現在。コロナ禍に生み出した「SURVIVE」や「GR4VITY G4ME」といった強力な武器を携えて、ラキアはさらなる快進撃を見せてくれるはず。
「Stardom」(’22)/King Gnu
11月19日、20日に行なわれた、King Gnuの東京ドーム公演。きっと日本のロック史に残る事件になると思ったし、今のKing Gnuを見届けなくてはいけないという使命感もあって。頑張ってチケットを獲って、高2の息子と参戦してきたのですが。まず、数年振りに観る東京ドームを観客が埋めつくす風景は圧巻だったし、そこに夢と希望があって嬉しくなってしまった。肝心のライヴも最高で、あんな大きな会場なら、過剰な演出があっても良さそうなもんだけど。メンバー4人だけでしっかりステージを作り上げて、4人の歌と演奏だけで超満員のお客さんを大満足させて。本編ラストで披露した、King Gnuの最新型と言える新曲「Stardom」が一番カッコ良くて。ここを頂点とするのでなく、今後にさらなる期待を抱かせて終わるという最高のエンディングを見せてくれて、本当に素晴らしかった。終演後、一緒に行った息子が大興奮してて。あのステージから何かを感じ取って、今後の人生の糧にしていくんだろうなと思ったら、すごく嬉かった。そう、俺たちにザ・ブルーハーツがいたように、君たちにはKing Gnuがいるのだよ。最高じゃん!
「Dandy Lion」(’22)/ G-FREAK FACTORY
地元である群馬県の高崎市芸術劇場にて、12月3日に自身主催の音楽フェス『山人音楽祭』、12月4日にワンマンライヴを開催。フェスや10月の25周年記念の日比谷野音など、今年はライヴを観る機会の多かったG-FREAK FACTORY。地元を愛して、ロックバンドを愛して、ライヴハウスを愛して、全国の地方都市が決して良い状況でない現在も諦めることなく、群馬の地で逆風やからっ風に吹かれながら戦い続けている。『山人音楽祭』を大成功させて、大会場でのワンマンを大成功させたG-FREAKの姿を群馬で観て、本当にカッコ良いと思ったし、俺も頑張ろうと思えた。最新曲「Dandy Lion」はこんな時代だからこそ強く広く優しい心を持って、たくましく生きたいと思わせてくれる楽曲。3年にも及ぶしんどい時期を乗り越えて、俺だって君だって、あの頃よりずっとタフになってるはず。なくしたものを嘆くのはお終いにして、そろそろ始めようか?
TEXT/フジジュン
フジジュン プロフィール:1975年、長野県生まれ。『イカ天』の影響でロックに目覚めて、雑誌『宝島』を教科書に育った、ロックとお笑い好きのおもしろライター。オリコン株式会社や『インディーズマガジン』を経て、00年よりライター、編集者、デザイナー、ラジオDJ、漫画原作者など、なんでも屋として活動。12年に(株)FUJIJUN WORKSを立ち上げ、バカ社長(クレイジーSKB公認)に就任。メジャー、インディーズ問わず、邦楽ロックが得意分野。現在は音楽サイトや、雑誌『昭和50年男』等で執筆。
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