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<ライブレポート>安田レイが「大切な“あなた”」に届けた特別な日 JQ(Nulbarich)も登場したビルボードライブ東京公演

 11月21日、安田レイがワンマン・ライブ【Rei Yasuda Live 2021 “It’s you”】を開催した。彼女にとっては約1年9か月ぶりのワンマン・ライブであり、「ずっと憧れだった」というBillboard Live TOKYOのステージに立つのはこの日が初。多彩なアーティストとのコラボ曲を収録した最新EP『It’s you』が話題を呼ぶなか、念願のライブにおいてどんなパフォーマンスを見せてくれることになるのか――2部制となったライブの2nd stageの模様をレポートしていく。

 グルービィなバンド・セッションに導かれてステージへ登場した安田。オーディエンスからの大きな拍手を受け取りながら、自身が作詞作曲を手掛けた「Re:I」でライブは幕を開けた。低いトーンで呟くように、振り絞るように吐露されていくのは、自らの内面に潜む弱さ。だが、曲が進むにつれて徐々に光を取り戻していく心の動きが繊細なボーカリゼーションでしっかりと伝えられていく。その説得力に満ちた歌声に会場は心地よく呑み込まれていった。「今日は来てくれてありがとうございます! 最後まで楽しんで行きましょう」という短い挨拶に続き、「true colors」と「dazzling tomorrow」を連続で。ラグジュアリーなバンドのサウンドに身体を揺らし、フィンガー・スナップやクラップでリズムを刻みながら、感情の込められた歌が放たれていく。ナチュラルに溢れ出していくフェイクにも、ライブを心から楽しんでいる彼女の思いが注がれているようだった。

 「元気だった? この景色見たかったのよ、ほんとに! 会いたかったのよ! Billboard Liveのいいところはみんなとの距離が近いところで。ほんとに照れるくらいの距離感ですよね。うれしさが爆発してしょうがないんですけど(笑)、今日はこの思いを曲に乗せてみんなに伝えていきますので、キャッチしてください」

 続いて披露されたのは「Mirror」。アコースティック・ギターとウッド・ベースをフィーチャーした、この日のためだけのアレンジは原曲のイメージをガラリと変え、今の安田レイが持つアダルトな魅力を鮮やかに響かせていく。ディープでミステリアスな雰囲気がより色濃く表現されていた「赤信号」、光と闇の関係性を声色でも表現しつくした「through the dark」と、ボーカルの力をあらためて実感させるナンバーが続いていく。パートごとに緩急がつけられた歌は曲に収められた物語を聴き手へとリアルに届けてくれるものであり、随所に散りばめられた圧倒的なロング・トーンは、そこにいるすべての人の心をわしづかみにしたことだろう。

 「楽しいですね!」と思わず心の声が溢れ出してしまう安田レイ。「ライブひとつやるのってミラクルすぎて。いっぱいミラクルが重なって今の瞬間があるんです。人生悪いことばかりじゃないなって思いますね。たくさんenjoyしちゃってください」と、久しぶりのライブへの思いをあらためて語る。その後、「みんなとの繋がりを歌った、そんな1曲を。大事なひとつの線みたいなものを思い浮かべながら聴いてくれたらうれしいです」と告げて歌われたのは、最新EPのタイトル曲であり、彼女が敬愛するJQ(Nulbarich)とのコラボレーションによって生まれた「It’s you」。安田のルーツを感じさせる低音を多用したハスキーな歌声が、“あなた”との大切な繋がりをせつなく描き出していく。そして、曲の後半ではスペシャル・ゲストとしてJQが登場。共に声を重ね合わせて、楽曲の世界をよりふくよかに再現してくれた。

「JQと申します。よろしくお願いします」(JQ)
「こんなおりこうさんなJQさんはめちゃめちゃレア(笑)」(安田)
「僕はいつもいい子ですよ。箸のことお箸って言うし、ポケットのことをポッケって言うんで(笑)」(JQ)

 そんな楽しいやり取りの後にもう1曲。安田が大好きだというNulbarichの代表曲「NEW ERA」を二人で。軽快にステップを踏みながら歌うJQに続き、2コーラス目を安田が担当。その歌声には楽曲への強い愛情とともに、自身の歌声で自在に曲を染め上げるシンガーとしての矜持をも感じることができた。この素晴らしいコラボレーションの瞬間に立ち会えた人は本当にラッキーだったと思う。

 ライブ後半は、ドラマ『君と世界が終わる日に』の挿入歌として、安田レイという名前を、その唯一無二の歌声を多くの人たちに知らしめることとなった楽曲「Not the End」でスタート。ライブ初披露とのことだったが、そこで聴かせてくれた歌には原曲をはるかに凌駕するエモーショナルな響きが加味され、会場を感動の渦に引き込んでいく。その余韻が冷めやらぬまま、開けたサウンドで前を向いたメッセージを飛ばした「amber」と、これまでのアーティストとしての歩みを噛みしめるように元気ロケッツ時代の名曲「Heavenly Star」を大切に歌い上げ、最後のMCへ。

 「みんなのおかげでいい1日になりました。最後の曲は“何も見えない空”という意味の曲なんですけど。生きていると大事なものが見えなくなって、満たされないと思う瞬間がたくさんあるじゃないですか。コロナ禍では、みんな暗闇の中を歩きながら“幸せってなんだろう”ってすごく考えたと思うし。でも、何もないと思っている退屈な毎日でも、“あなた”がいれば大丈夫なんですよね。そんなことを届けたくて曲にしました。私にとっての大切な“あなた”は今、目の前にいるみなさんです。“あなた”がいるから私は歌えているんです。これからもしんどいときにはエネルギーを交換し合えたら嬉しいですね」

 本編ラストはEP『It’s you』に収録、安田自身が作詞作曲した「blank sky」。昨年2月のツアーでは自身のピアノ弾き語りで歌われていた曲だが、今回はTENDREのサウンド・プロデュースによる音源のアレンジを元に、新たなニュアンスで届けられた。“何も見えない空(blank sky)だけど、目の前には大切なあなたがいる(But I have you)”。そんなメッセージが柔らかなボーカルでオーディエンス1人ひとりの胸へと運ばれることで、本編は多幸感に満ちたまま幕を閉じた。

 アンコールの拍手に応え、再びステージに登場した安田レイ。「いろんな形でいろんな方に届いているのがうれしい曲です」と語った後、2014年にリリースされた2ndシングル表題曲であり、今年3月にH ZETTRIOとともに『THE FIRST TAKE』で披露され大きな反響を呼んだ「Brand New Day」をラスト・ソングとして届ける。そこには、希望を感じさせる爽やかなサウンドとともに、デビューから8年という時間の中で手に入れてきたシンガーとしての大きな進化が色濃くにじんでいたように思う。自らの声の強みをしっかり認識し、それを最大限に表現できる楽曲を自身がイニシアチブを取りながら生み出そうとしている近年の安田レイの動き。その一つの結晶が今回のライブに漂っていたムードだと言えるのではないだろうか。28歳になった安田レイがここからどんな音楽を生み出していくのか。そんなことをさらに楽しみにさせてくれるライブだった。

 なお、本公演の模様は11月28日までアーカイブ配信されている。今の安田レイの姿をぜひ目撃して欲しい。

◎配信情報
【Rei Yasuda Live 2021 “It’s you” ONLINE SHOW
LIVE LOVERS from Billboard Live supported by CASIO】
2021年11月21日(日)東京・Billboard Live TOKYO
ゲスト:JQ from Nulbarich
https://eplus.jp/yasudarei-st/

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