前例のない切なさに寄り添ってくれた2020年のサマーチューンを振り返る

2020年10月19日 / 18:00

前例のない切なさに寄り添ってくれた2020年のサマーチューンを振り返る (okmusic UP's)

夏から秋になりましたね。ついこの間は暑いモードだったのに、もう寒いと震えていたりして、季節の移り変わりの早さをひしひしと感じる日々です。それにしても、今年はコロナによって何かと異例続きで、ちょっと前まで側にいた夏がいつも以上に切なくて、どこか虚脱してしまうような、“失われた夏”と言っても過言じゃないほど、さまざまな寂寥に満ちていた時だったのではないでしょうか。今回はそんな2020年の夏にやさしく寄り添ってくれたナンバーの数々をピックアップ。秋にリリースされた楽曲もいくつかあるので、改めて振り返ってみたいと思います。
「夏を生きる」(’20)/緑黄色社会

コロナの自粛期間中に制作、7月に配信リリースされた、リョクシャカにとって初のサマーチューン。イントロのビタースウィートなギター、物哀しいトーンのキーボードからもう切なくて、夏の刹那をちりばめた歌にさまざまな情景が浮かんでは、ノスタルジックな気分になります。2020年っぽい清涼感! 今年は《気が抜けたサイダー》のような夏とも言えただけに、《夏を生きる》《逞しくあれ》と歌うこの曲に支えられた人がきっと多かったはず。全編アニメーションで構成したMVも素敵です。
「irony」(’20)/SHIFT_CONTROL

『No Big Deal Records Audition 2019』でグランプリに輝いた岐阜発のロックバンド、SHIFT_CONTROL。「irony」は10月にリリースされた2ndミニアルバム『Slowmotion』の収録曲で、チルなテイストがたまらない、ひと夏の思い出を綴ったノスタルジックなナンバーに仕上がっています。友達と遊びに行くことがほぼできなかった今年の夏も制作の背景にあるので、いろいろな想いを馳せつつ、自然とエモくなってしまう歌や懐かしくブルージーな味わいのギターに浸ってみては? 夏のドライブで聴きたいです。
「サマーデイ」(’20)/ピロカルピン

10月に配信リリースとなったピロカルピンの新曲「サマーデイ」は、“子供時代の夏の記憶”をテーマに作られていて、紗がかかったみたいな淡く浮遊感のあるギターサウンド、水のように澄んだピュアなヴォーカルが、のっけからドリーミーで心地良い。曲が進むうちに、今年は十分に味わえなかったあのドキドキが辿れるというか、本来の開放的な夏を郷愁たっぷりに思い出せる気がします。風情豊かなMVは古民家で撮影されたとのこと。まだ見ぬ来年の夏を想像して聴くのもいいですね。
「SENTIMENTAL SUMMER」(’20) /フレデリック

9月リリースのEP『ASOVIVA』に収録された、フレデリックが2020年の夏フェスで演奏したかったというサマーチューン。《孤独を知るほど僕は言葉が溢れ出しそうだ》《君と過ごした夏が僕を呼んでいる》《鳴らせば鳴らすほど今は目尻が熱くなる日々よ》《また会える日まで》といった郷愁を帯びたライン、胸に迫るような切ないヴォーカルが、閉鎖的な現状と相まってめちゃくちゃグッときます。HIP LAND MUSICのクリエイティブディビジョン“INT”とのコラボによるキレキレのライヴ映像も必見!
「どうやら、私は」(’20)/chelmico

未だに続く世の中の不安的なムードにはもちろん、夏が終わってしまった今の季節にもしっくりくるchelmicoの新曲。ふたりの凛としたラップとやさしい歌声は、空元気なポジティブソングなんかよりもずっとデリケートに、あなたの抱える憂鬱を癒してくれるはず。彼女たちが出演予定だった『SUPERSONIC 2020』の会場=千葉・幕張海浜公園に仮設ステージを組んで撮影された、“早くライヴで会いたいね”という想いを込めたMVも切なくて染みます。8月リリースの3rdアルバム『maze』に収録。
TEXT:田山雄士

田山雄士 プロフィール:フリーのライター。元『CDジャーナル』編集部所属。同誌の他、『okmusic UP’s』『ナタリー』『bounce』など、雑誌/WEBを中心にお仕事をしています。日本のロックバンド以外に、シンガーソングライターとか洋楽とか映画とかも好きです。


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