『サバイブ・ザ・サマー』イギー・アゼリア(EP Review)

2018年8月6日 / 18:00

 2014年リリースのデビュー・アルバム『ザ・ニュー・クラシック』が、いきなり米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”3位、R&B/ヒップホップ・チャート、ラップ・チャートでNo.1を獲得し大ブレイクした、オーストラリア出身の女性ラッパー=イギー・アゼリア。残念ながら、本作に続く2作目のスタジオ・アルバムではないが、前作『リ・クラシファイド』からおよそ4年振りとなるEP盤『サバイブ・ザ・サマー』をリリースし、ファンを熱狂させた。全裸にハイヒールという、目を疑うようなで恰好でテニスコートに立つ、イギーらしいSNSのプロモーションもインパクト絶大。

 本作からは、現在「テイストwithオフセット」が大ヒットし、再ブレイク中のラッパー=タイガがフィーチャーされた「クリーム」が、先行シングルとしてリリースされている。同曲は、ウータン・クランのクラシック・ナンバーで、表記違いの同タイトル「C.R.E.A.M」(1993年)がサンプリングされた、クールなヒップホップ・トラック。水辺に金をまき散らし、イギーが横たわっているアートワークからもお察しの通り、原曲「C.R.E.A.M」の“金が全てを支配している”というフレーズが使われた、お金にまつわる曲。

 ミュージック・ビデオでも、トランクやフリーザーいっぱいに入ったドル札をバックに、ポールダンスやブーティーダンスで挑発する。現在、交際が囁かれているイギーとタイガだが、ビデオの中でも2ショットで寝転がり、ピロウトークのようなラブラブっぷりを見せつけるシーンが登場する。タイガのパートでは、彼女のヒップについても触れていたりして、良い意味でも、悪い意味でも、下品極まりない曲。しかし、以前の優等生っぽさを取っ払ったという意味では、この曲のもつ意味は大きい。

 本作には、「カワサキ」と「トーキョー・スノウ・トリップ」という、日本にまつわる曲が2曲収録されている。前者は、「クリーム」以上にキワどいワードが連発される“エロネタ”満載のナンバーで、ここでいう“Kawasaki”とは、「またがって乗る」ことをイメージした(?)バイクメーカーのカワサキ・モータースのことを歌っているのかと思われる。不気味で躍動的なベース・ドラムのキックに酔いしれる後者も、東京についての思い出を綴ったものではなく、比喩として使われているだけだ。そういえば、今年2月にタイガがリリースしたアルバム『Kyoto』も、京都にインスピレーションを受けた作品とのことだったが、フタを開ければ何が京都へのインスピレーションなのかは不明だった……。

 ウィズ・カリファが参加した「OMG」は、今年初頭に大ヒットした、リル・パンプの「グッチ・ギャング」を下敷きにしたようなバウンス・トラック。「金をもったビッチこそが生き残れるの!」というアナウンスからはじまるタイトル曲や「ヘイ・イギー」など、どの曲も重く、そして卑猥。ポップへのクロスオーバーは一切なく、純粋なヒップホップ・アルバムに仕上がったといえる。EP盤というのがもったいないくらい、1曲1曲のクオリティも高い。また、以前のよりもボーカルをワントーン落としたことで、毒っ気が増したようにも思える。ジャネットの大ヒット作『ジャネット』(1993年)をそっくり真似たジャケットも、見事にリメイクされている。

 デビュー・アルバム『インベージョン・オブ・プライバシー』が全米No.1デビューを果たしたカーディ・Bや、8月17日に4年振りとなるニュー・アルバム『クイーン』をリリースするニッキー・ミナージュなど、今年はフィーメール・ラッパーが大活躍している。イギーは、2014年リリースの「ファンシーfeat.チャーリーXCX」が、女性ラッパーとしては最長の全米7週連続首位獲得を果たしたが、次曲「ブラック・ウィドウfeat.リタ・オラ」(2014年/全米3位)以降大ヒットと呼べるナンバーに恵まれず、チャートからは遠ざかっている。ヒットは無視してもいい気はするが、「イギー完全復活」という見出しも期待したいところ。

Text:本家一成


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