<ライブレポート>スタレビ/馬場俊英/佐藤竹善/杉山清貴/トータス松本/槇原敬之【風ハミ】にKANの想いをのせて「“よければ一緒に” これからも」

2024年5月9日 / 18:00

 4月27日、大阪・靱公園センターコート特設会場でFM COCOLOが主催する野外ライブイベント【靱公園MUSIC FESTA FM COCOLO~風のハミング~“よければ一緒に”】が開催された。

 ”都会の真ん中で、大人のための音楽祭”をコンセプトに、同局でレギュラー番組を持つ根本要(スターダスト☆レビュー)、馬場俊英を中心に、2011年からスタートしたスペシャルコラボイベントで、今年で12回目の開催を迎える。

 これまでイベントのホスト役である彼らと縁のある豪華ゲストを迎えて開催されてきたが、中心メンバーのKANが昨年11月12日、療養の末に逝去。今年は彼の楽曲「よければ一緒に」をイベントタイトルに配し、KANの楽曲を軸にしたイベントを開催することに。シークレットゲストには杉山清貴、佐藤竹善、トータス松本、槇原敬之も登場し、永久欠番となったKANへの感謝とリスペクト、そしてたくさんの愛をこめたステージを展開。会場に集まった約6,000人の観客と一緒に珠玉の名曲たちを歌い上げた。

 会場には“風ハミ”恒例の出演者による場内アナウンスが流れ、まるでラジオ番組さながらのリラクシンなトークに会場の空気もほっこり。根本は「KANは今日、この空の上で見守っていてくれる。もしかしたら(誰かの)横に座っているかも♪“よければ一緒に”楽しんでもらえたら」と語ると、ステージを360度ぐるりと囲う満員の観客席からたくさんの拍手が鳴り響く。

 トップバッターは、根本要、馬場俊英による『吉野天狗』。昨年から“風ハミ”限定で登場する年に一度の超レアなボーカルユニットだ。2人はハッピ姿&コッテコテの関西弁でとにかく喋りまくりでこのまま漫才でも始めそうな勢いだけど、そこはやはり実力派ボーカリストの2人。「今日はとにかく音楽を楽しんで。“よければ一緒に”パワーも送って。みんなのパワーがないと歌えないから」と、「夢の中へ(井上陽水)」や「年下の男の子(キャンディーズ)」と、“風ハミ”恒例のカバー曲をさっそく披露。ブルージーなギターアレンジで観客を唸らせたかと思いきや、観客と気持ちよく大合唱したり、遊び心というか遊びまくりのステージに会場は大盛り上がり。

 さらにそこに杉山清貴、佐藤竹善が先の2人に対抗した『鞍馬天狗』なるボーカルユニットで登場し、“吉野と鞍馬の天狗対決”が行われることに。しかも杉山と佐藤はこの日が初共演だが、歌ではなくコントからステージが始まるという前代未聞の演出。それでも杉山と佐藤が「想い出がいっぱい(H2O)」で美声をたっぷりと響かせると、今度は4人で「Dance With Me(オーリアンズ)」を歌い上げるなど、“風ハミ”恒例の贅沢なコラボに観客は気持ちよさそうに体を揺らし、極上の歌声に酔いしれていた。

 「毎年々々、みんなと盛り上がっていた。一番の親友、KANが亡くなってしまった。ここでたくさんの思い出を作ってきて、彼抜きで何ができるかを考えて……。KANのエネルギーも大切だけど、みんなのパワーでよければ一緒にこのライブを楽しんでもらえたら。KANが愛した“風ハミ”をみんなのパワーと一緒に続けていきたい。」と、イベントに懸ける思いを語った根本。「(KANが)そこに座っているような気がする。出てこいって感じだけど、いろんな思い出を語りながら、一緒に楽しめたら。KANが残してくれたもの、想いはもちろん、楽曲もたくさん。我々がまずやるべき曲はやっぱり『靱のハミング』。KANがいないと物足りなさはある。だからこそみんなの思い出で補ってもらいたい」と、いつもはイベントを締める最後の曲として歌われる「靱のハミング」をスターダスト☆レビューの演奏で披露。何度もこの場所で聴いていた旋律に心が揺さぶられ、思わず涙する人の姿もあちこちに見えるけれど、悲しんでばかりじゃいけない。エネルギッシュなバンドサウンド、観客みんなの手拍子、感情を昇華するように観客みんなでハミングすると、自然と心がぎゅっと熱くなり、自然と笑みがこぼれる。音楽が持つ偉大なパワーを体感した瞬間がそこにはあった。

「音楽を、僕らの想いを、KANちゃんの想いを楽しんで」。ここから出演者のソロステージが展開され、根本が語った言葉の通り、最高の音楽と空間を満喫することができた。

 まずは佐藤竹善が馬場俊英のバンドメンバーとともにステージへ。これまで何度もKANと共演してきたこともあり、ライブでの思い出話は笑いが尽きないものばかりで、「やっぱりこの曲を」と彼が選んだ曲は「カレーライス(KAN)」。最後の「ごちそうさま♪」まで愛情たっぷりに歌い上げると、KANが惚れ込んでいた曲として、「Human(Sing Like Talking)」を歌唱。深く伸びやかな歌声、ポップなメロディに心が和む。観客もともに歌い、会場に大きな一体感を作り上げていく。

 馬場俊英は「陽炎」でぐっと足元からエネルギーが沸き起こるような歌声で真摯に歌声を届ける。「KANさんは人が好きで、音楽が好き。音楽は人と関わることの手段だった。亡くなる前の1年も、最後に自分の楽曲を作り上げるよりも、ラジオ番組の制作や人と関わることを優先していた。楽しい時間をたくさんくれた。そんな雰囲気が醸し出されているなと思う曲を」と、「青春国道202(KAN)」をセレクト。KANの青春時代をベースにした楽曲に馬場自身の色を重ね、唯一無二の曲、歌声を響かせる。最後は5月29日に発表する新曲「君が僕の元気」。“元気を発信する曲を作りたい”と想いを込めたという楽曲は曲名の通り、真っ直ぐに届けられる言葉に自然と力が沸き上がり、観客の手拍子も一層大きく鳴り響く。

 根本は「(スターダスト☆レビュー、馬場、杉山、佐藤の)4組でもお値段以上なんだけど」と、さらなるシークレットゲストとしてトータス松本を呼び込む。鮮やかなライトグリーンのスーツに身を包んだトータスは、2022年の出演時のエピソードを振り返りつつ「KANさんは有名無名にかかわらず、面白いと思った音楽をどんどん周りに巻き込んでいった。そんな想いを繋げていきたい」と、KANの音楽活動に懸ける思いにリスペクトを捧げる。「いつもまじめに君のこと(KAN)」では、軽快に跳ねるメロディに“トータス節”な歌声を合わせる。KANが描いた詞世界が愛おしさを感じるのはもちろん、トータスの歌声にも驚くほど馴染んでいるのがとても面白い。根本と馬場を迎えてのセッションは「笑えれば(ウルフルズ)」。“とにかく笑えれば”、喜怒哀楽すべての感情を救ってくれるような楽曲はこの日のセレクトにぴたりとハマっていて、じっと噛みしめるように聴き入ってしまう。

 杉山清貴も「たくさんのコラボをやらせてもらった。KANの思い出話に終始してしまうくらい、とても大切な存在」と、KANとの長年の付き合いを振り返り、彼への思いを捧げたいと、根本と杉山の2人で「すべての悲しみにさよならするために(KAN)」を歌唱。切なさと愛しさに満ちた詞世界に思わず涙腺を刺激されるも、杉山は「いい曲!!」と絶賛しつつ、KANのひょうきんなキャラについて笑いたっぷりにトークを繰り広げるので、あっという間に涙が晴れてしまう。しかもKANへのリスペクトは舞台演出からもたっぷりと感じられて、馬場が“浜省”風の衣装で飛び入り参加しての「エンドレス(KAN)」では、ステージや楽曲の世界観に合わせて衣装を替えるのはKANらしさもあって、思わずニヤリとしてしまう。杉山はさらに、コロナ禍の配信番組で共演した際に海にまつわる曲がKANに似合うかもと、弾き語りで「波」も披露。

 最後のシークレットゲストには、昨年に続き4度目となる槇原敬之が登場。「曲だけでなく、たくさんの笑いを遺していった」と、根本や馬場とともにKANのいたずらなエピソードを次々に暴露。KANの無茶ぶりで弾けないギターを弾かされたりしたこともあったものの、KANのピアノにずっと憧れていたという彼。カバー曲には、名曲と絶賛している「言えずのI LOVE YOU(KAN)」を。男性シンガーソングライターとして同世代を生きた槇原だからこそのセレクトだ。馬場バンドのハートフルな演奏とコーラスも相まって、楽曲への愛おしさが増していく。出演者それぞれの想いでセレクトした楽曲はそれぞれの歌声や世界観にぴたりとハマっている。楽しそうに歌う槇原の姿もとても素敵だ。自身のオリジナル曲では「遠く遠く」に、根本と馬場もコーラスで参加。“風ハミ”でKANとも共演したこの曲。歌詞に想いがたっぷりと詰まっていて、誰もがみんな愛おしそうに口ずさみ、手を大きく振りかざし楽曲に身を任せる。観客の笑顔をステージから嬉しそうに見つめる出演者の表情にも心癒される。

 スターダスト☆レビューのステージでは、KANがプロデュースを担当したアルバム『SHOUT』から「昔話を繙くように」を披露。根本の歌声をじっくりと堪能できる楽曲からはKANの根本への愛も感じられて、珠玉の歌声にじっと聴き入ってしまう。空を見上げ、慈しむようにハイトーンボイスを響かせる根本。楽曲の最後、深く頭を下げた彼の姿にも胸が締め付けられる。名曲「夢伝説」では、歌い出しだけで会場から感嘆の声が漏れ聞こえる。「“よければ一緒に”、みんなで声を出して」と、「Magic~手をつなごう~」へ。歌詞のまま、想いを通い合わせるように誰もが手を高く掲げ、全身で音楽を浴びる。“靱で会いたいよ♪”なんて歌詞のアレンジにも胸が締め付けられる。

 「ここから総力戦で!“よければ一緒に”のパワーで盛り上がっていこう」と、イベント終盤は出演者全員による名曲揃いのステージへ。「BOYS ON THE RUN(馬場俊英)」、「ふたりの夏物語(杉山清貴&オメガトライブ)」、「Spirit Of Love(Sing Like Talking)」、「ガッツだぜ!!(ウルフルズ)」、「どんなときも。(槇原敬之)」。個性と魅力にあふれたシンガー&サウンドメーカーたちのポップセンスを、スターダスト☆レビューのバンドサウンドと出演者総出でのコーラスで堪能できるという、これ以上ない贅沢な時間に観客は総立ちになって大盛り上がり。それは出演者も気持ちは同じで、トータス松本は高揚のあまりステージを飛び出し、会場を練り歩きながら熱唱するシーンも見られた。

 「きっとステージの真ん中にはKANちゃんがいる」と、出演者全員でイベントタイトルにもある「よければ一緒に(KAN)」。シンプルだけど、KAN節がたっぷり詰まった名曲。大好きな曲はいつ聴いても心躍るし、心豊かになるのだと改めて思わせてくれる。関西でいうところの“日にち薬”は月日を経ることで悲しみを乗り越える力を与えてくれるというけれど、彼の音楽は聴けば聴くほどにその魅力を知るばかりで、悲しみ以上に愛おしさが増していく。“よければ一緒に そのほうが楽しい♪”、その言葉の通り、観客はみんな一緒に声をあげてこの瞬間を堪能する。

「あいつにみんなの声が届くように!」と、KANも大絶賛していたという「愛の歌(スターダスト☆レビュー)」を出演者&観客で大合唱。たっぷりと愛を届けてイベントを締めるかと思いきや、「みんな満足してくれましたか? いいや、オレたちはしていない! まだみんなが歌うべき歌がある」と、最後はKANの名曲「愛は勝つ」を。珠玉の歌声、メロディを響かせ、観客とともに大きな大きな愛を響かせ、イベントは大団円で幕を閉じた。

 ステージの最後、イベントのホスト役でもある根本と馬場が2人でステージに残る。馬場は「集まってくれてありがとうございました。いつもの“風ハミ”に、KANさんへの想いをのせてやってみました。今日まで心の区切りをつけられずにいて……。通夜や告別式、骨になる最後まで見届けたけれど、まだふらっとサプライズで出てきそうな気がして。(ファンの方々も)亡くなったと言われても、全く受け入れられないだろうという気がしていました。でも今日がひとつの機会になるなら、また明日から違う気持ちでKANさんの音楽を楽しんでもらいたい」と、時折言葉を詰まらせつつ、KANへの想いを語る。根本も「あいつがいないのが悔しくてしょうがない。最後まで一緒にいられて、強い気持ちをみせてもらった。アイツからすごいものを見せてもらった。亡くなったあと、思い出話が笑い話しかないのは最高。悲しむだけでなく、みんなと一緒にすごいものを見せてもらった、幸せな人生だったんじゃないかな。想いをずっとつなげていきたい。思い出しながら、歌って笑って泣けたら幸せ」と、親友への想いを力強い言葉で送った。またイベントについても馬場は「KANさんは“風ハミ”が大好きで、ずっと力を入れてる仕事だった。この場所でこういう時間を持てて『愛は勝つ』をみんなで歌えて幸せだった。また一緒に参加してほしい」と感謝の気持ちを伝え、最後にKANへ大きな拍手を贈り、イベントは終幕した。

 なお、この日のイベントの模様は根本要(スターダスト☆レビュー)、馬場俊英がDJを務めるFM COCOLOの番組『Wabi-Sabi レディオ・ショー』にて、5月11、18日の2週にわたって放送を予定している。

Text:黒田 奈保子
Photo:井上嘉和、加藤大

※アーティスト名『H2O』正くは化学式表記


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