選曲のエキスパート“ミュージック・ソムリエ”が贈る、日常のワンシーンでふと聴きたくなるあんな曲やこんな曲――今回は「結婚披露宴、選曲のススメ」です。
突然ですが、わたくし、結婚しました! そして例によって先輩夫婦の方々と同様、毎日モメたり喧嘩したりしながら準備して、なんとか無事に結婚式・披露宴を済ませることができました。
中でも大変だった作業が、披露宴での「BGM選曲」。時にはシックに、時にはユーモアを、またある時はゴージャスに、そしてラストはドラマチックに……すっかりDJです。
今回は、これから式を迎える新郎新婦の参考になればと願い、悪戦苦闘の末に選んだ渾身のBGMリストを公開します。
1.「ゴルトベルク変奏曲」/J.S.バッハ
【新郎新婦入場】荘厳なバロック音楽で。バッハのピアノソロなら、美しく威厳があり、メッセージ性が強くないので年配親族にも安心です。1〜2分ほどの楽章からなる組曲形式なので、歩き出してから高砂までの時間を調節可能な点もポイント。ただし、暗いムードの短調の楽章は、除外するのをお忘れなく。
https://www.youtube.com/watch?v=O-dOkP0C6As
2.「真実の愛のキス」/映画『魔法にかけられて』より
【乾杯】続いてディズニー映画『魔法にかけられて』のオープニング曲で乾杯。あくまで乾杯の音頭から数十秒間の効果音なので、始まりから華やかで、かつ20秒ほどで司会がナレーションに入れるような曲を選出。他にもディズニー作品のプリンセスが登場する音楽は、華やかな曲調が多いので、結婚式や披露宴のさまざまなシーンにとてもマッチします。
https://www.youtube.com/watch?v=alg1Ak1Tcfs
3.「テ・デウム H.146〜プレリュード〜」/シャルパンティエ
【ケーキ入刀】エレガントで格式高い曲調が、見せ場を盛り上げます。ここで再びディズニー音楽も良いのですが、今回はクラシックからチョイス。「テ・デウム」のプレリュードは、ストリングスや金管たちの輝くようなメロディーが美しく、いよいよ祝福ムードが高まります。
https://www.youtube.com/watch?v=PwQB38GcROY
4.「姫君Shake! feat. 齋藤摩羅衛門」/レキシ
【新婦中座】これまで格式高い曲が続いたので、「中座」は遊び心を。新婦自身とその弟が大好きなレキシと斉藤和義のコラボ曲で、弟くんがツイストしながら新婦をお迎えに行きます。会場からは大きな手拍子が沸き、2人で踊りながら会場を後にします。
https://www.youtube.com/watch?v=SdgDFHU_DFs
5.「ドラえもんのうた」/ウィーン少年合唱団
【新郎中座】さて私の中座は、さらにひねった演出に挑戦。ウィーン少年合唱団が歌う「ドラえもんのうた」は、歌声の美しさとなまった日本語の発音が絶妙な化学反応を起こし、コミカルな仕上がりの一曲です。口パクでこの曲を歌いながら、行進して会場を後にします。
https://www.youtube.com/watch?v=n4HC7x_Z-q8
6.「White On White」/ダニー・ウィリアムズ
【新郎新婦、再入場】来場者席はお酒もすすみ、食事も一段落して和やかな頃。ここで明るくキュートな60年代ウェディングソングで再入場します。曲名もずばり「白の上の白」、真っ白いドレスの上に真っ白いベールと、大変縁起のよろしい響きです。
ダニーはアフリカの貧しい生まれでしたが、イギリスに渡ってシンガーとして成功。この曲を発表した当時は、あのビートルズが前座をしていたほどの大スターとなりました。彼自身の軌跡もまた、大変縁起のよろしい選曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=q6NoWtHYIBE
7.「青春の輝き」/カーペンターズ ※カラオケver.
【新婦から母への手紙】さぁ泣きどころです。美しい原曲ですが、このままではメロディーが強くて耳がとられ、新婦の声ともぶつかりかねません。そこで、カレン・カーペンターのボーカルを抜いたカラオケ版で、しっとりとした世界観だけお借りすることに。カラオケ+メッセージは、テレビ番組でもよく見る手法で、おすすめです。
https://www.youtube.com/watch?v=a5NE1BzPq2g
8.「Wedding Bell Blues」/The 5th Dimension
【新郎新婦、退場】最後は明るく、です。新婦と手を取りあってリズムに乗り、「ふたりの幸せな未来」を体で表現しながら退場します。選曲の理由は、明るい曲調ともう1つ。それはThe 5 Dimensioが男女混声グループであること。2人で仲良く一緒に暮らして、いずれ家族が増えても変わらず、いつまでも賑やかな声が重なり合うような「明るい家庭を築こう」と誓う一曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=DhtCGZbxTfc
以上、我ながら手前味噌で恥ずかしい限りですが、8つのシーンを選び出してご紹介しました。
アドバイスとしては、基本的に自分が好きな音楽を選んで良いのですが、曲調やジャンルがかたよらないよう彩り豊かにまとめたことが、結果として好評でした。
演出にもっとこだわりたい方は、テーマやコンセプトを決めて、歓談中やすき間時間のBGMにも個性を発揮していいかもしれません。
実は私も、食事中にはディズニー音楽特集、お色直しの間に日本のポップス特集、再入場後の歓談時は60年代ソフトロック、終宴後の送り出しは映画ドラえもんシリーズと、細部にもDJ魂を注ぎ込みました。
最後に、もっとも恐ろしい注意点を1つ。
私のような英語に弱い人間だと、好きな洋楽が明るい曲調だからと油断すると、実は歌詞のテーマが「失恋」だったり、「別れ」だったりすることが……。
どんな世界観の歌なのか、和訳を必ずチェックしましょうね。
(企画・文・選曲/酒井康平)