【映画コラム】単なる昔話では終わらない『イミテーション・ゲーム~』と『博士と彼女のセオリー』

2015年3月14日 / 20:37

(C)UNIVERSAL PICTURES

 一方、『博士と彼女のセオリー』は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を病んだ英国の物理学者スティーブン・ホーキング博士(エディ・レッドメイン)と妻のジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)の出会いから、ユニークな夫婦生活、破綻、別れ、現在までを描く。

 博士が普通に生活する若き日から、徐々に全身がまひしていくさま、そして老年までを演じ切ったレッドメインが、見事にオスカーを手にしたのは記憶に新しい。また、伝記映画によく見られるきれいごとの夫婦関係ではなく、二人の愛憎や欲望、心の揺れなどを正直に描いている点も新鮮だ。

 そして、それまで語ってきた博士の人生を一気に巻き戻して見せるラストシーンは、映画ならではの“魔法”を感じてうれしくなるし、時間の概念にこだわった博士の人生を象徴するシーンとしても強く印象に残る。

 両作は描かれた時代こそ違え、舞台は英国で実話を基にしている、主人公は天才的な才能を持ちながらコンプレックスや病を抱えている、パートナーとなる女性もまた非常に個性的である、など共通点が多い。

 さらに、過去の実話を描くことで浮かび上がる、偏見による差別や迫害、夫婦のあり方や男女の性差、病に対する取り組み方といった普遍的な問題を、今日的な視点を加えながら見詰め直しているところも共通する。そうした姿勢が、単なる昔話では終わらない“今の映画”として、両作の存在価値を高めたのだ。(田中雄二)

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