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「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」(11日公開)★★★
戦争が残した加害と被害の記憶
ベトナム戦争に従軍した元海兵隊員アレン・ネルソン(ロドニー・ヒックス)は、帰国後も戦場の記憶に苦しみ続ける。だが、自らの戦争体験を人前で語り始めたことをきっかけに、少しずつ人生を取り戻していく。
塚本晋也監督が描くのは、単純な戦争の被害者ではない。ネルソンは戦争によって傷つけられた人間であると同時に、戦場で人を殺した加害者でもある。その矛盾を抱えたまま生きる姿に、戦争の本質が浮かび上がる。かつてアメリカ映画が繰り返し描いたベトナム戦争とその後遺症も、戦争から半世紀以上が過ぎた今、映画で語られる機会は少なくなった。そんな中、日本人監督がこの戦争を描いた意義は大きい。当事者ではない者が、ネルソンの二つの顔を見つめることで、戦争が人間に何を残すのかを改めて問い直す。そして、ウクライナやパレスチナなどで戦争が続く現実を考えると、ネルソンの苦悩が決して過去のものではないことにも気付かされるのだ。

©︎Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners ©Allen Nelson/KODANSHA
「さとこはいつも」(18日公開)★★★★
3人の「さとこ」がいとおしい
15歳の中井聡子(姫野花春)、35歳の西田沙都子(有村架純)、55歳の飯島里子(石田ひかり)。年齢も育った環境も違う3人の「さとこ」が、それぞれ自分の物語を書き始めたことで、その人生が交差していく。沖田修一監督がオリジナルストーリーで描く人間ドラマ。
初恋、不倫、子育てを終えた後の再出発。3人それぞれのエピソードの描き方が秀逸で、どの「さとこ」もいとおしく思えてくる。特に15歳の聡子のリアルな価値観と、そこから膨らむ妄想とのギャップが面白い。沖田監督は、なぜ15歳女子のことがこんなによく分かるのかと不思議になるほどだ。彼女たちに絡む登場人物も、誰一人として憎めない。所々にちりばめられたギャグに笑いながら、ほのぼのとした気持ちにさせられる。また、何かを書くことで自己表現をすることの本質にも触れている。自分の人生を物語として捉え直すことが現実を少し動かす。そんな可能性を描く“沖田ワールド”の魅力が詰まった一作。

©︎2026 「さとこはいつも」製作委員会
★は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価。
(映画ライター 田中雄二)