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昭和を代表する作曲家・古関裕而と声楽家で妻の金子をモデルに、音楽の力で人々の心を勇気づける夫婦の物語を描く連続テレビ小説「エール」。音楽をモチーフにしたドラマだけあり、続々と登場するミュージカルスターに、ファンの間には歓喜の輪が広がっている。
音楽に彩られ、多くの歌手も出演している本作。ヒロイン音(二階堂ふみ)が歌手を目指すきっかけとなる世界的オペラ歌手・双浦環役の柴咲コウは、2003年にRUI名義でリリースした「月のしずく」がミリオンヒットをするなど歌唱力には定評があり、劇中、教会でオペラの名曲「私のお父さん」を披露すると、SNS上には「生歌?!めっちゃすごいやん!」「吹き替えだと思っていた」と驚きの声が上がった。
また、主人公・裕一(窪田正孝)の同期で、ギターが得意なコロンブスレコードの作曲家・木枯正人役の野田洋次郎は、大ヒットアニメーション映画『君の名は。』(16)の音楽を担当したことでも知られる人気ロックバンドRADWIMPSのボーカル。カフェの場面では、昭和流行歌の傑作と呼ばれる「影を慕いて」をギターの弾き語りでしっとりと聞かせ、視聴者を陶酔させた。
彼らに加えて、ミュージカル界のスターたちも数珠つなぎ状態で次々に登場する。裕一の小学校の同級生で、音が通う東京帝国音楽学校の“プリンス”と呼ばれる、キザでナルシストな佐藤久志役の山崎育三郎は、タイトルロールやメインキャストとして、「レ・ミゼラブル」「ロミオ&ジュリエット」「モーツァルト!」「エリザベート」などの人気作品に立て続けに出演している、自他ともに認める“ミュージカル界のプリンス”だ。
音楽大学で声楽を学び、イタリア語でオペラを歌っていた経験がある山崎は、シンパシーを感じる役に全力投球し、美声を惜しげもなく披露。劇中の女子生徒だけでなく、お茶の間の女性たちもメロメロにしている。
山崎とのデュエットシーンで話題になったのは、同校の生徒でソロリサイタルを開くほどの実力者でもある夏目千鶴子役の小南満佑子。小南は役同様の逸材で、10歳から声楽を学び、世界を目指して勉強に励み、高校3年生のときにはミュージカル「レ・ミゼラブル」2015年版のコゼット役のオーディションに挑戦。そのときは「若過ぎる」という理由で不合格になりアンサンブルで起用されたが、17年と19年版では念願のコゼット役で出演を果たしている。
時期は違うが、山崎も「レミゼ」でマリウス役を演じたことが幾度もあったことから、教室で久志と千鶴子が歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」を手を取り合って朗々と歌い上げる姿が放送されるや否や、「マリウスとコゼットじゃん!」「レミゼやん!」と歓喜する人が相次いだ。
ドイツに音楽留学した経験がある音の歌の先生・御手洗清太郎役の古川雄大も、「モーツァルト!」のモーツァルト役、「エリザベート」のトート役で山崎と競演している。
古川は2.5次元ミュージカル「テニスの王子様」でキャリアをスタートさせると、その美貌と艶ボイスで一躍人気者に。「エール」では“ミュージックティーチャー”という呼び名にこだわるフェミニンなキャラクターでウケているが、最近は出番がないため、早速「ミュージックティーチャーロス」と肩を落とす人が続出している。
古川と「ロミオ&ジュリエット」のロミオ役で共演したのは、慶応義塾大学卒業後、音楽学校で学び、生活のために流行歌を歌うコロンブスレコード所属の歌手・山藤太郎役の柿澤勇人。
劇団四季の団員だった柿澤は、退団後は「デスノート The Musical」の夜神月役や、「スクール・オブ・ロック」などで主演を務める実力派。太郎のモデルとなった昭和の国民的歌手・藤山一郎の「丘を越えて」の収録シーンで初登場し、朗らかな歌声を響かせると、「カッキーいい声〜」「美声を聴けるのうれしい」「歌唱シーンだけぐるぐる10回ぐらい見てる」など、視聴者から喜びの声があふれた。
げた屋の娘だが芸者として歌手デビューし、裕一が作曲した「船頭可愛や」を歌うことになる藤丸役の井上希美も劇団四季の元団員。「ガンバの大冒険」では主役の潮路を、「美女と野獣」ではヒロインのベル役を務めた実績がある。
山崎もハリウッド映画『美女と野獣』の日本語吹き替え版で野獣役を担当したことがあり、共通点がある2人。藤丸は久志にひそかに心を寄せる役どころのため、2人のロマンスパートに注目が集まりそうだ。
そのほか、川俣銀行の“紅一点”で、恋に悩む裕一に女心を教えていた事務員・菊池昌子役の堀内敬子は、昨今はテレビや映画での活動が目立つが、もともとは劇団四季の団員で、在籍中は「ウエストサイド物語」「美女と野獣」「エビータ」など、そうそうたる作品で主演を担った人気実力派女優。
退団後も「レ・ミゼラブル」「屋根の上のバイオリン弾き」などに出演していることから、本作で歌う場面がないことに「なんでミュージカルじゃねぇんだ!」と募る思いを爆発させた人もいるようだ。
音の実家・関内家が営む馬具店の職人頭で、腕は一流だが強面で無口な岩城新平役の吉原光夫も劇団四季の元団員。11年の帝国劇場開場100周年記念公演「レ・ミゼラブル」で、日本公演の歴代最年少となる32歳でジャン・バルジャン役に大抜てきされると、これまで5回も同役を演じている大物ミュージカルスターだ。
現在は演出家としても活躍しているが、プレーヤーとしての存在感が抜群なだけに、「馬具職人の岩城にも歌わせて!」「美声を披露する吉原光夫さんまだですか」と熱望する声が止まらない。