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ゲームや映画はおろか、TVアニメーションでも3DCGによる映像を目にする機会は、珍しいものではなくなった。昨年公開された全編フル3DCGの長編アニメーション映画『009 RE: CYBORG』を記憶している人も多いだろう。『009 RE:CYBORG』を制作したスタジオ・サンジゲンによる、フル3DCGの映像作りで注目されているのが、現在放送中のTVアニメ「蒼き鋼のアルペジオ ‐アルス・ノヴァ‐」だ。
近未来の日本を舞台に、潜水艦や軍艦の海洋アクションが描かれる本作。海をゆく艦隊の重厚感や、迫力ある戦闘は、3DCGの見せ場だ。だが、本作における3DCGは高度な映像技術を見せつけようとするものではない。技術はあくまで作品を作る一つの手段として使われている。
その最たるものが、作画ではないのに作画に見えるキャラクターだろう。セル調やテクスチャーを貼り付けた「セルルック」という加工によって造形されたキャラクターは、かつての無機質な3Dではなく、私たちが慣れ親しんできた2Dの見た目に限りなく近い。静止画で見ても、作画と見紛うほどの映像に仕上がっている。第5話では、蒔絵とハルナの入浴シーンやギャグシーンが描かれる。その中で、キャラクターは感情のある芝居をしており、ビジュアルでも動きでも十分”萌え”を感受できる、フェティッシュを持ったキャラクターに仕上がっているのだ。
ストーリー性のあるアニメの中で、何が必要かを考えた結果、たどり着いたのがサンジゲンの3DCGだ。こうしたCG技術が、アニメの制作現場を大きく変えていることは間違いないだろう。アニメ化に当たって、副題に付けられた「アルス・ノヴァ(ars nova)」は、音楽用語で「新技法、新芸術」を意味する。これは「アルペジオ」の制作現場から、未来の日本のアニメーション制作に込められた、思いの表れなのかもしれない。(松田はる菜)