エンターテインメント・ウェブマガジン
「ミニオンズ&モンスターズ」(8月7日公開)★★★
映画のパロディーが満載
最強最悪のボスを求めて旅を続けるミニオンズがたどり着いたのは、1920年代のハリウッド。西部劇の撮影に乱入したことから映画スタジオに入り込み、人気スターとなった彼らは、今度は自分たちでモンスター映画を作ることを思いつく。だが本物のモンスターを呼び出したことから大騒動が勃発する。
人気キャラクターを主人公にした長編アニメシリーズ第3作。これまでは彼らにあまり親しみを感じられず敬遠していたが、今回は楽しめた。その理由は、監督・脚本のピエール・コフィンが描く、フランス人の視点を通したハリウッド映画のパロディーが随所に盛り込まれていたからだ。ミニオンズが話す「ミニオン語(バナナ語)」は、世界各国の言葉を混ぜ合わせた、いわば万国共通語。言葉を超えて伝わるサイレント映画と通じるところもある。つまり今回の背景は彼らにぴったり合っていたのだ。劇中に登場する映画のパロディーを、どれだけ見つけられるかという楽しみもある。

©Universal Studios. All Rights Reserved.
「オークストリートの異変」(14日公開)★★★★
何と町に突然恐竜が現れて…
1982年、平和な町オークストリートで暮らす夫婦(アン・ハサウェイ、ユアン・マクレガー)と娘、息子のプラット一家。彼らが平凡な日常を送る中、突然水道や電気が止まり、絶滅したはずの恐竜が町に出現。住民たちを次々と襲い始める。プラット一家は手近な武器を手に、恐竜の脅威をかいくぐりながら町からの脱出を図るが…。
約100分というコンパクトな尺に、ホラー、SF、サバイバル、コメディー、そして家族愛まで詰め込んだサービス満点の一作。製作のJ・J・エイブラムスたちが狙ったのは、80年代にスティーブン・スピルバーグ率いるアンブリンが送り出した「E・T・」「ポルターガイスト」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」など、郊外で起きた非日常的な出来事を描いた作品群に、現代的なグロテスクさとシュールな笑いを掛け合わせること。懐かしさを感じさせるのどかな郊外の風景が恐竜の出現によって恐怖へと変転する。その落差の大きさがこの映画の醍醐味だ。

©2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
「ドラマなふたり」(21日公開)★★★
一筋縄ではいかない展開が魅力
ボストンのカフェで運命的に出会ったチャーリー(ロバート・パティンソン)とエマ(ゼンデイヤ)。結婚式まであと7日と迫る中、付添人を務める親友夫妻と食事をしながら、それぞれがこれまでに犯した「最悪の行い」を告白することに。ところが、エマが明かした秘密に一同は仰天。チャーリーは、エマには自分の知らない別の顔があるのではないかと疑い始める。
ユニークな作品を次々と送り出すA24製作のオフビートな恋愛ドラマ。甘いラブコメディーのような物語が、次第にブラックコメディーを思わせる不穏な恐怖へと変貌していくところは、先に公開されたホラー映画「オブセッション 災愛」にも通じる。一筋縄ではいかない展開が魅力だ。何より巧みなのは、結婚を目前にした男女の幸福感が、相手への疑念によって一気に崩れていく様子を、ユーモアと恐怖を交えて描いているところ。ただし、結婚を控えたカップルには、少々刺激が強過ぎるかもしれない。

©2026 Dramatic Movie Rights LLC. All Rights Reserved.
「見えない娘 THE INVISIBLES」(28日公開)★★★
透明人間とロードムービー
とある島で暮らす星野一家には、誰にも明かせない秘密があった。末娘のひかりが、生まれつき透明人間なのだ。母を亡くして以来、心配性の父・学は三姉妹を人目から隠すように暮らしてきた。そんな一家のもとに、東京で女優をしている祖母が入院したとの知らせが届く。ひかりの存在を隠したまま、一家は東京へ向かうが、旅の途中には思わぬ危険や困難が待ち受けていた。 「MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」で注目された竹林亮監督が、今度は透明人間とロードムービーを組み合わせたユニークなSFドラマを作った。まず突飛な設定に驚かされるが、物語が進むにつれて、いつしか一家の旅に同行しているような親密な感情を抱かされる。また、奇想天外な物語の中に、「人は何をもって存在しているのか」というテーマも織り込んでいる。普段は強面の役柄が多い毎熊克哉が、気弱な父親を演じる意外性も、作品のユーモラスな味わいに一役買っている。

©︎THE INVISIBLES Production Committee
「平行と垂直」(28日公開)★★★
支えることと支えられること
大阪で暮らす兄と妹。自閉スペクトラム症の大貴(安田章大)は清掃の仕事に就き、周囲のサポートを受けながら自立した生活を送っている。一方、妹の希(のん)はカウンセラーとして働きながら兄を支えてきた。だが、変わらないと思っていた2人の日常が、希の結婚話をきっかけに揺らぎ始める。
山野海のオリジナル脚本にほれ込んだ安田が製作を熱望し、企画段階から参加。自閉スペクトラム症の専門家の監修を受けながら約2年をかけて脚本を練り、自身もレクチャーを受けて撮影に臨んだ。のんも、障がいのあるきょうだいを持つカウンセラーから話を聞いて役作りに取り組んだという。自然な大阪弁を交えた2人の演技が、作品に確かなリアリティーを与えている。これまで、ユニークな家族像を描いてきた小林聖太郎監督が、大阪の下町と人情味豊かな人々を背景に、兄妹の支えることと支えられることの関係が変化していく様子を、温かいまなざしで見つめている。

©︎2026「平行と垂直」製作委員会
★は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価。
(映画ライター 田中雄二)