エンターテインメント・ウェブマガジン
米ビルボードが2007年から主催している【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック】では、音楽業界に貢献し、その活動を通じて女性たちをエンパワーメントしたアーティストを表彰している。2025年はaespa、エリカ・バドゥ、タイラなど、新進気鋭のスターからベテランの重鎮まで幅広くノミネートされ、栄えある〈ウーマン・オブ・ザ・イヤー〉はセレーナ・ゴメスが受賞した。
その日本版として、Billboard JAPANが2022年9月にスタートさせたプロジェクト【Billboard JAPAN Women In Music】。そのライブ・イベント第3弾が、9月22日にビルボードライブ東京にて開催され、セントチヒロ・チッチ(ex.BiSH)による音楽プロジェクト、CENTが出演した。
BiSHの解散から2年、CENTの始動からは3年が経過するなか、Billboard JAPANのインタビューで「『こういう女の子として見られたい』という感覚がそぎ落とされて、生身で自分らしくいられるようになりました。女性の自分だから感じる感覚も、自分らしさとして表現していきたいと思っています」と語ったチッチ。特別なアコースティック・アレンジも交えながら、一人の表現者としてさまざまな可能性を試すように楽曲を紡いでいったこの日のCENTは、彼女自身がMCで語ったとおり「Women In Musicのテーマに共鳴」しながら、その「CENTらしさ」をあらためて提示するステージを作り上げていた。
波の音のSEが流れるなか、バンドメンバーとともに登壇したチッチは、ハイチェアに座って「夕焼けBabyblue」を歌唱。普段はライブハウスを中心に活動し、幅広いアーティストから楽曲提供を受けるCENTだが、そもそもソロ・プロジェクトの原点は、コロナ禍のステイホーム期間中、未経験のギターやDTMを練習しながら手探りで作り始めたベッドルーム・ミュージックであり、この「夕焼けBabyblue」もその頃に制作された楽曲のひとつ。だからこそ、ミニマルなアコースティック編成で届けられた今回のパフォーマンスは、〈夕焼けがいなくなるころには/ブルーアワーが押し寄せてきて/染み付いた日々を思い出すの〉と歌うこの曲のノスタルジーをいつも以上に際立たせていたようにも感じる。
渋谷系/ネオアコの系譜を継ぐ爽やかな「すてきな予感」も、快活なロックンロール・テイストの「ナポレオーネ通りにて」も、今回のアコースティック編成にばっちりフィット。軽やかな高揚感は観客のハンドクラップを誘い、それに呼応するようにチッチの顔も綻ぶ。「ナポレオーネ通りにて」の作者でもあるベースの“えみそん”ことおかもとえみ(フレンズ)は、チッチにとって気心知れた友人でもあり、この日の独特な緊張感をほぐすのに一役買った存在だったかもしれない。
「素敵な企画に呼んでいただき、とても光栄に思います」「今日もCENTらしく、強いメッセージを込めて、女の子として届けたい気持ちも、一人の人間として届けたい気持ちも、音楽に乗せて届けられたらなと思います」。そう告げて、静謐なピアノの音色と一緒にスタートした「百日草」。音数はぐっとシンプルにそぎ落とされ、一方で曲に込められた想いやメッセージはむしろ鮮明に前景化していく。〈どこにいても咲き誇るからさ〉〈花束を抱えて旅に出るからさ〉と歌うチッチの歌声は、伸びやかで力強く、同時に優しさにも満ちていた。
チルなローファイ・ヒップホップの「紙ヒコーキと晴れのちコーヒー」も、今回はオートチューンを加えない生歌中心のアレンジで届ける。美しい祈りのように歌い上げた「君へ」を経て、ピンスポットに照らされたチッチのアカペラで始まった「夜王子と月の姫」は中盤のハイライトに。前半は持ち込みのキーボードを弾いた石地翔汰が、「君へ」以降の3曲では会場常設のスタインウェイを演奏。「夜王子と月の姫」はチッチの歌声、石地のピアノ、えみそんのコーラスというトリオ・パフォーマンスで、まさにこの日限りの特別な一幕になったのではないか。そして、このセクションを締めくくる「おとぎばなし」ではステージ奥のカーテンが開帳、夜景を臨む開放的な眺望が広がり、ショーはラストスパートへ。
「今日は大人チックなCENTをお届けしていますが、お味はいかがですか?」「自由に自分らしく楽しんで」。椅子から立ち上がったチッチが鍵盤ハーモニカを手に取ると「向日葵」を披露。ここからの楽曲はオリジナルのアレンジに忠実なパフォーマンスで、エレキギターを掻き鳴らしながらマイクに向かう「堂々らぶそんぐ」も、これぞ本領発揮というべき骨太バンドサウンド。しかし、ビルボードライブの親密な空間で作り出す一体感は、ライブハウスの熱狂から生まれるそれとは一味違っていてスペシャルだ。
「ラブいっぱいのこの曲を届けます」と告げて本編ラストに届けたのは「ラブシンドローム」。チッチがハンドマイクでステージ上を練り歩き、時にステップも踏みながら、心温まる“らぶ”で会場を満たした。さらにアンコールでは2曲を追加パフォーマンス。1曲目は「Linda」で、アルバムでは水曜日のカンパネラの“2代目主演・歌唱担当”としても活躍中の詩羽がフィーチャーされているが、今回はえみそんとのデュエットを披露する、これまたレアなコラボレーション。「めいっぱい誇らしくCENTを届けて帰ろうと思います。いいですか?」と問いかけ、最後は峯田和伸(銀杏BOYZ)作曲によるキラーチューン「決心」でゴールテープを勢いよく駆け抜けるフィナーレを迎えた。
なお、10月9日にはビルボードライブ横浜でも【Billboard JAPAN Women In Music vol.3】が開催予定。こちらはChilli Beans.が出演する。お楽しみに。
Text:Takuto Ueda
Photo:Yuma Totsuka
<セットリスト>
01. 夕焼けBabyblue
02. すてきな予感
03. ナポレオーネ通りにて
04. 百日草
05. 紙ヒコーキと晴れのちコーヒー
06.君へ
07. 夜王子と月の姫
08. おとぎばなし
09. 向日葵
10. 堂々らぶそんぐ
11. ラブシンドローム
-En-
12. Linda
13. 決心
◎公演情報
【Billboard JAPAN Women In Music vol.3】
2025年9月22日(月)
ビルボードライブ東京
出演:CENT
◎公演情報
【Billboard JAPAN Women In Music vol.3】
2025年10月9日(木)
ビルボードライブ横浜
出演:Chilli Beans.
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