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【SUMMER SONIC 2025】が、8月16日に千葉・ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセで開催された。
6つ設たステージでも、BEACH STAGEはこのフェスに通い慣れた人たちに愛されている。【SUMMER SONIC 2025】は、国境もジャンルも年齢も関係なく、日本人と日本に滞在している音楽ファンがもっとも観たいアーティストが集結する都市型フェスである。ゆるくファンが被っていそうなアーティストを同日にラインナップさせるのも特徴だが、「Billboard Live & JUJU’s BEACH PARTY」と銘打ち、JUJUが“声掛け隊長”となったこの日のBEACH STAGEは、よりコンセプチュアルな構成だった。言うなれば、フェス内フェス、フェスのマトリョーシカ状態。JUJUがくり返し言っていたスローガンは、「Who doesn’t Love THE 90’s?!?!」-90年代(の音楽)が嫌いな人なんている? たしかに。あの時代をオンタイムで知っている人はもちろん、世代問わず「色あせない質が高いもの」が求める人にとって、90年代の音楽を素通りするのは難しい。なにしろ、直接的でも間接的にしても、いまの日本のポップ・ミュージックの土台にアメリカの90年代のヒット曲、名曲の数々が入り込んでいるのだから。
8月16日、幕張のBEACH STAGEの午後2時まで巻き戻そう。トップバッターはPUSHIM。唯一無二の歌声で、日本のレゲエシーンを引っ張りつつファンの裾野を広げてきたシンガーだ。バックバンドもシーンからの信頼が厚いHome Grown。2番手が、ヒップホップに日常感覚を組み込んだと言う点でぜひ、日本のデ・ラ・ソウルと呼びたいスチャダラパー。陽が高まり、だいぶ熱くなっていた砂浜を多くのファンが埋めたのが、ウルフルズである。炎天下をものともせず、白いスーツ姿のトータス松本が呼び込んだのがJUJUだ。「笑えれば」の共演がひとつめのハイライト。「ガッツだぜ!」ではワウギターが効いた、かなりファンクな曲だと再確認する。そう、影響元をはっきり示しながら日本語に解釈してきたこの3組の共通項こそ、「私たち、こういう音楽を聴いてきたよね?」というこのBEACH PARTYのコンセプトなのだ。
次がディゲブル・プラネッツ。90年代の頭に、ヒップホップとジャズを融合させ、ア・トライブ・コールド・クエスト(ATCQ)らとひとつの潮流を作ったトリオである。ATCQよりさらにジャズ寄りであり、『Reachin’』 (1993)と『Blowout』(1994)は当時、イギリスのアシッド・ジャズを好んでいた人たちをも巻き込んだ。95年に解散し、なんどか再結成をしているものの、やはりオリジナル・メンバーでの来日は感慨深かった。中心人物のイシュメル“バタフライ”バトラーによる、さらに実験的なシャバズ・プレイセズも濃いファンは追いかけているだろうし、5ピースのバンドによる楽器の音色を押し出したステージは、ディゲブル・プラネッツに期待するすべてが詰まっていた。
18時20分。風が出てきて涼しくなってきたところで、ミネアポリス・サウンドの超大物プロデューサー・デュオ、ジミー・ジャム&テリー・ルイスの出番だ。R&Bとファンク好き、とくにプリンスやジャネット・ジャクソンのファンにとって神様のような人たちだ。昨年、Billboard Liveでの来日が即完になって話題になったのも記憶に新しい。目印の黒いハットにサングラス、スーツにタイのふたりがバンドを引き連れて音を出した途端、めくるめく低音の渦が砂浜に広がった。特筆すべきは、ヴォーカルのふたりだろう。巨漢のルーベン・スタッダードは、2003年の『アメリカン・アイドル』シーズン2の優勝者。女性パートを担当したシャニースもとくに90年代に多くのヒット曲を放っている。ソロ・アーティストとしても活躍しているふたりが、ジャム&ルイスが生み出した名曲の数々を歌い継いで、豪華だ。「今日は土曜日だから!」とのMCで「Saturday Love」といった渋い曲を挟み、ジャム&ルイスといえば、のジャネット・ジャクソンの代表曲をシャニースが可憐に歌いきって、観客を躍らせる。夕陽が落ちるなか、ルーベンがアッシャーの「Bad Girl」を歌い上げたときは、海外旅行にきた錯覚を覚えた。
じつは、今回の企画、ジャネット・ジャクソンの24年3月来日公演のときにJUJUとクリエイティブマンの清水氏の間で話が出て、Billboard Liveに声を掛けたところから動き出したという。メインとなるコモンが快諾して、いっきに現実味が帯びたそう。そのコモンは、「97年に初来日したときから、30年近くも日本でステージに立てて光栄だよ」と何度も口にしていた。ストーリー性の高い彼のラップは日本でもずっと好まれているし、物腰の柔らかい彼のおかげで、日本でヒップホップを聴き始めるハードルが下がった面もあるだろう。シカゴのリリシストから始まって、ブルックリンを拠点にしていたときはザ・ルーツやディアンジェロらとソウルクェリアンズとして、00年代の半ばは同郷の後輩、元カニエ・ウェストを起用するなど、その時代の最先端の音を届け続けてきた彼のセットリストは鉄板だった。スクラッチも上手なDJダミーとキーボードというミニマムなセット。ミュージック・ビデオを織り込んだビジュアル・アートも屋外ステージに映えて、映画のワンシーンのような時間だった。
ラスト・セット。サマソニ名物ともいえる美しい花火があがりきった後、白いミニドレスのJUJUが、「ナツノハナ」をアカペラで歌いはじめる。その後「やさしさで溢れるように」をしっかり歌い上げ、AIを呼び込む。90’s らしいスポーツ・カジュアルをまとったAIとは衣装こそ対照的だったが、90年代愛を語る熱量が同じくらい凄まじい。じつは、このレポートのために筆者は事前に担当者からセットリストを受け取っていた。DJジャジー・ジェフ&フレッシュ・プリンス(=ウィル・スミス)から始まり、コモンの本日2回目の「The Light」など、あの時代を切り取る全14曲。15分強のメドレーとあって、筆者はてっきりDJセットだと勘ちがいしていた。TLCやローリン・ヒルのコーラス部分を、英語も堪能なふたりが煽ったり口ずさんだりしながら盛り上げるのだろう、と思ったのだ。「(DJセットによる)ダンス大会なんですねー」というまぬけな返信まで送っていた。
だから、バンド・セットでふたりががっちり歌い出したときは、心底、驚いてしまった。そんなことあるの? とビビった筆者は日本のトップシンガーの底力、影響元への探求度をわかっていなかった。JUJUはエリカ・バドゥの「On & On」を、AIはモニカの「Before You Walk Out of My Life」をそれぞれソロで歌い上げた。ジャジーな「On & On」も、R&Bシンガーでも随一の歌唱力を誇るモニカのデビュー曲も、カヴァーがとても難しい曲である。ふたりとも自分の解釈を入れて聴き応えばっちりで、BEACHを埋め尽くしていたファンは、貴重なライブを体験したのだ。
メドレー最後は、PUSHIMが戻ってきて「I Wannna Know You」を歌い上げた。さらにスチャダラパーの「今夜はブギー・バック」で、ステージ上がパーティー状態に。そしてラストは、AIとJUJUで、名曲「Srory」。リラックスしたムードを醸しながら、センスの良さが隅々まで行き届いてとんでもなく特別だったBEACH PARTYは終わった。このパーティーはぜひ、シリーズ化してほしい。
Text by 池城美菜子
Photo by Daikichi
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◎公演情報
【SUMMER SONIC 2025】
2025年8月16日(土)
千葉・ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
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