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2021年にメジャーデビューを果たし、2025年からはインディペンデント体制へと舵を切った3人組DURDNが、自身初となるビルボードライブ公演を開催した。メジャーを離れ、より自由に、よりダイレクトに音楽と向き合おうとしている今の彼らにとって、着席スタイルでじっくり自分たちの音楽を届けられる「ビルボードライブ横浜」は、その現在地を表現するうえでうってつけの場だった。
観客の期待と興奮が入り混じる静かな熱気のなか、暗転したステージにSHINTAとサポートメンバーの友田ジュン(Key)、ウスイガク(Ba)、そして井上瑠哉(Dr)が登場。会場が拍手で包まれた直後にBakuが登場し、まずは今年4月にデジタルリリースされたシングル「WINDSDAY」からこの日のライブをスタートした。穏やかなイントロから、やがて軽快なグルーヴへ。ゆるやかに会場の空気を巻き込んでいく演出は、まさにDURDNならではの知的で洗練されたオープニングだ。
「Are you ready、ビルボードライブ横浜? お待たせしました。今日はみんなで楽しんでいきましょう」そうBakuが呼びかけ、2021年にリリースされたEPのタイトル曲「Vacation」へ。サビでドラムとベースのみを残すシンプルなアレンジにより、Bakuのスモーキーで芯のある歌声が際立つ。楽曲後半、たっぷりとディレイをかけたSHINTAギターソロは、まるで歌っているかのように空間を漂っていた。
続く「捨てたらいい」では、シンセのシンコペーションが刻むタフなビートの上で、Bakuが地声とファルセットを巧みに行き来しながら力強くも滑らかなボーカルを披露。ステップを踏み、笑顔で観客にマイクを向ける姿は、彼がライブを重ねるごとにフロントマンとしての自信を深めていることを感じさせた。
「今日は結構久しぶりのライブ。半年ぶりくらいかな」と語るBaku。「今日はこの会場のためにアレンジしてきた曲もあるし、やったことのないことにもチャレンジしています。みなさん、ついてくる準備はいいですか?」と呼びかけ、オーディエンスは大きな拍手で応える。「Summer Jumbo」ではSHINTAがレスポールを手に取り、ブルースセッション風の導入で観客を一気に引き込む。うねるベースの上で、〈起きたらスーパー完全剽軽funny funny〉と思わず一緒に口ずさみたくなるような、中毒的な歌詞を歌うBakuの姿にオーディエンスのボルテージは一気に上昇。サビが終わると再びブルース調のギターソロが炸裂し、会場からは大きな歓声が上がった。
その余韻が残るなか始まった「Alarm」は、タイトル通りアラーム音からスタート。朝のけだるさを思わせるレイドバックしたリズムと、曇りがかった空のようなコード進行が心地よい。そして、スポットライトが月明かりのようにBakuを照らし、〈今夜夢を見て 優しい夢を見てよ〉と歌い始めたのは「ミアネ」。韓国語で「ごめんね」を意味するこの楽曲は、Bakuのルーツと感情が濃密に滲むバラードだ。静かに、しかし確かな熱をもって歌われるメロディライン。スタンドマイクの前で切々と歌う姿に、オーディエンスの息を呑む音が聞こえてくるかのようだ。
一転、明るいビートとクラップに誘われるように、客席のあちこちからハンドクラップが自然発生的に鳴り響く「My Plan」経て、ライブはよりパーソナルで親密なセクションへ。まず披露されたのは、SHINTAとBakuがエレキギターを手に取り、二人だけで届けた「Conflict」。エレキを弾きながら歌うのは、Bakuにとって初チャレンジだ。「もし間違ったら、みんなで歌ってください」と冗談交じりに告げたBakuの、つま弾くシンプルなコードが静かに鳴り響く。そこにSHINTAが繊細なフレーズを絡ませ、音数は少なくとも互いの息遣いまで感じられるような緊張感が心地よかった。
続いてダニエル・シーザーの「Best Part」をカバー。親密な弾き語りのような導入から、曲が進むにつれピアノ、ドラム、ベースが入り、夜の静寂に広がるような美しいサウンドスケープを描き出す。Bakuが「If you love me want you say something」と何度もリフレインすると、会場は深い共鳴に包まれた。
SHINTAがアコースティックギターを手に歌った「僕の夢」では、穏やかなリズムに乗せBakuの柔らかくも芯のある声が真っ直ぐに心を打つ。〈だけど今君がいる それだけでそれだけで 生きていける〉という歌詞は、まるで祈りのように会場を包み込む。さらに「Regrets」では、SHINTAのギターがエモーショナルに空気を震わせ、友田のグランドピアノがそっと寄り添う。さらにリズム隊が加わり5人のアンサンブルが織りなす緩やかな波は、やがて力強いうねりへとなってドラマティックなエンディングを彩った。
中盤のハイライトとなったのは「WARUNORI」。グランドピアノをフィーチャーしたジャジーなアレンジに、赤紫の照明がムーディーな雰囲気を加える。SHINTAとドラムが向かい合い、呼吸を合わせる中、Bakuのスキャットとファルセットが会場を支配した。終盤にはSHINTAがレスポールで“泣きの”ギターソロを聴かせ、さらに井上の熱量あふれるドラムソロが炸裂。この日いちばんの歓声がフロアを満たした。
続く「apart」はスモークが立ちこめる幻想的なステージ演出の中、まるで“無重力”をサウンドで表したかのよう。さらに「PRIDE」では、引き算の美学が貫かれたストイックなアンサンブルが冴え渡り、音数の少なさが逆にこちらの想像力をかき立てる。友田のグランドピアノ、SHINTAの浮遊感あるギター、そしてBakuのボーカルがそれぞれの役割を最大限に活かしながら、静と動を巧みに行き来した。
本編もいよいよクライマックスへ。「悲しいお知らせがあります。あと3曲で終わります」と告げるBakuに、SHINTAが「ライブって3曲で終わりがちだよね」と返し笑いを誘う。さらにSHINTAが「みなさん立ってみませんか? あと3曲、各々、自由に楽しんでください」と客席に呼びかける。「Echo Lane」では、オーディエンスの腰を揺らビートの上に、友田のエレピが煌めきSHINTAのギターが余韻を引きながら溶けていく。そこにBakuの歌声がまるで内なるモノローグのように重なり合い、リスナーそれぞれの心の風景を浮かび上がらせる。
間髪入れず、軽快なラテンビートの「All of you」。SHINTAの爽やかでリズミカルなギターカッティング、友田のパーカッシブなピアノ、そして井上のドラムとウスイのベースが絡み合いながらラストスパートへ。「ここで最後の曲です。みんな、盛り上がっていきましょう。Let’s do it!」とBakuが叫んで「Drink!」を披露し、この日のライブに幕を降ろした。
DURDNにとって初のビルボードライブ公演は、アーティストと観客が丁寧に積み上げた信頼のもとに成り立つ温もりと躍動感に満ちていた。〈この先のこの先も分からないことばっか 明日の明日も分からないことばっか〉と歌う「Drink!」は、インディペンデント体制になったDURDNの、まさに今の心境を表しているかのようでもある。明日もこの先も分からないことばっか、それはきっとDURDNだけでなく私たちも同じだ。だからこそ今、この瞬間の一期一会を大切にしたい。そんなことを思わせてくれる、貴重なライブだった。
Text:黒田隆憲
Photo:SHUN ITABA
◎セットリスト
【DURDN Special Live at Billboard YOKOHAMA】
2025年7月27日(日)1stステージ
神奈川・ビルボードライブ横浜
1. WINDSDAY
2. Vacation
3. 捨てたらいい
4. Summer Jumbo
5. Alarm
6. ミアネ
7. My Plan
8. Conflict – Baku(EG),SHINTA(EG)
9. Best Part – Baku(EG),SHINTA(EG),Jun(GP)
10. 僕の夢 – SHINTA(AG),Jun(GP)
11. Regrets – SHINTA(AG),Jun(GP)
12. WARUNORI – Jun(GP)
13. apart
14. PRIDE – Jun(GP)
15. EchoLane
16. All of you
17. Drink!
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