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いきものがかりが、2人体制となってから初のアリーナツアー【いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2025 ~ASOBI~】ファイナル公演を、7月20日に神奈川・横浜アリーナにて開催した。
アルバム『あそび』を引っ提げ、6月7日の東京・有明アリーナ公演を皮切りに、全4都市8会場をまわった今回のツアー。最新アルバム『あそび』収録曲に代表曲を織り交ぜ、観客参加による新曲「生きて、燦々」のコーラス生レコーディングを実施するなど、終始ファンとの一体感を大切にしたライブとなった。
当日は炎天下の中、全国からファンが集結。開場後すぐからさっそく客席を埋め尽くしていた。アリーナには、メインステージに加えて前方に左右2つに分かれたサブステージ、加えて大きなセンターステージが設けられており、どんな曲でこれらのステージが使われていくのか、期待が高まる。
開演時間を迎えると、ステージ中央のビジョンに吉岡聖恵(Vo.)、水野良樹(Gt. / Pf.)の2人とサポートメンバーたちがバックステージで円陣を組み、手を合わせる姿が映し出された。全員で気合を入れると、吉岡と水野は横浜名物・崎陽軒の「シウマイ弁当」についておしゃべりしながら歩いてステージに登場。水野は楽屋に届いた「ポケットシウマイ」を三箱(計18個)食べたことを明かし、「美味しかったねえ。今日はよろしくお願いします」とリラックスした様子。2人はそのまま客席に降りると、大声援を受けながらセンターステージへと向かう。ペンライトが瞬く客席を見渡した水野が、「今日はみなさんをメンバーだと思っています!」と宣言すると、静かにピアノを弾きはじめて「コイスルオトメ – From THE FIRST TAKE」からライブがスタートした。リリースから19年の時を経たことで貫禄を感じさせる歌と演奏ながら、歌詞が描く初々しさはそのままで、新世代へと曲の魅力が浸透したことも頷ける楽曲だ。間奏からはメインステージに控えていたバンドの演奏が加わり、ド迫力のサウンドが大きな会場に響き渡る。水野はピアノに代わりエレキギターを手にすると熱いソロを聴かせた。
歌い終えた吉岡が「横浜のみなさん、改めましていきものがかりです! 今日は一緒に思いっきり楽しんで、“あそんで”いきましょう! どうぞよろしくね!」と挨拶。観客を煽ってジャンプを促すと、「気まぐれロマンティック」へ。映像ではMVと同じくドット絵のアニメーションが映し出され、一気にカラフルでポップな世界が広がっていく。客席に乗り出して歌う吉岡の振りに合わせ、早くも会場が一体となった。曲後半で歌いながら移動すると、目の前で歌い演奏する2人へ熱狂的な声援が飛ぶ。吉岡は向かって左、水野は右のセンターステージに上がってその声援に応えていった。
「地元、神奈川、横浜アリーナファイナル公演です!」と水野が叫び、吉岡が「横浜のみなさん、こんにつあー!」と呼び掛けると、会場中から大音量の「こんにつあー!」が返ってきた。ファイナル公演ということもあるのだろうか、観客のテンションの高さがものすごい。華やかな王道モータウン・サウンドで躍動する「キミがいる」を披露すると、途中でメインステージへ。ステージ上は、ストリングスカルテットを含めた大編成バンドが歌に寄り添う。「いつだって僕らは」ではフォーキーなサウンドに乗せた爽快なメロディが広がっていく。なお、ステージ後方には、小田和正のライブからインスピレーションを受けたという「オンステージシート」が設けられており、数十人のファンがペンライトを振って盛り上がっている姿も。
水野が、「今回、センターステージを3つ作りました。目が2つと口で、上から見ると顔みたい(笑)。なるべくみなさんの近くに行きたいなと思って、(オープニングで)センターステージから始めたんですけど、やっとサポートメンバーに会えました!」とサポートメンバー紹介へ。足立賢明(Manipulator)、林部直樹(Gt.)、本間昭光(Key.)、伊吹文裕(Dr.)、安達貴史(Ba.)、坂井”Lambsy”秀彰(Per.)、水野由紀(Cello)、馬渕昌子(Viola)、小寺里奈(Violin)、室屋光一郎(Violin)を紹介すると、水野は「そして今日の重要なサポートメンバー、横浜アリーナのみなさん!」と客席に向かって声を掛け、客席との連帯感をいっそう高めた。
「アルバム『あそび』は、チャレンジングなことを色々やる作品だったんです」と水野。アルバムのオープニング曲「彩り」は、2人が育ち路上ライブを行っていた地元、小田急線沿線の学生たちがコーラスで参加したことを伝え、実際に学生たちの声とともに演奏。吉岡の歌、バンドのタイトな演奏にコーラスワークが重なり、いきものがかりが音楽を始めた原点の風景が浮かんでくるようだった。続く「ありがとう」では、客席を埋め尽くしたオレンジ色のペンライトが、サビに差し掛かると純粋無垢な心を表したように真っ白に。水野による泣きのギターソロも胸に迫った。
「あの日のこと」は、いきものがかりの楽曲として初めてメンバー以外へ歌詞を依頼したという、ダウ90000の蓮見翔が歌詞を手掛けた一曲。「ライブでやればやるほど、物語を解釈しなおす時間になっている」というこの曲は、2人とも椅子に腰かけて披露された。ステージ上に映し出された、メンバーの姿がコラージュされた映像も相まって、蓮見の作家性といきものがかりの音楽が作り出す物語に引き込まれた。エンディングでは、安達のベースと伊吹のドラムによるせめぎ合うスリリングな演奏に興奮させられた。
しばしの暗転から明転すると、緑色のロングコートを脱いだ水野がカラフルな半袖シャツ姿に。吉岡の衣装チェンジを待つ間は水野の“漫談”で、横浜でのライブを「地元」での開催、と称することについての葛藤を吐露し、場内は爆笑。さらにお客さんたちがどこから来たのかと質問を投げかけると、全国各地から手が挙がり、長年に渡り多くのファンに支持されてきたことが改めて感じられた。爽やかなオレンジ色のTシャツに着替えた吉岡が合流すると、2025年10月より放送されるTVアニメ『キングダム』第6シリーズのオープニング・テーマに決定している新曲「生きて、燦々」について触れ、「今からレコーディングしようと思います。みなさんにコーラスしてもらって、CDに収録します!」との水野のサプライズ発表に、客席がどよめく。2人からのレクチャーと、本間の鍵盤に合わせて練習を挟むと、いよいよ本番へ。独特の緊張感が漂うなか、会場中の声が見事ひとつになり、無事に録音は一発OKで完了した。
そして、ライブは「帰りたくなったよ」で再開。“新解釈コラボレーションアルバム”『いきものがかりmeets』で、上白石萌音が歌った同曲の神秘的なアレンジに刺激を受けたという2人。そのアレンジとオリジナルをを融合させた最新版を初披露した。「僕が書いた(楽曲の)中で、いちばん思い出深い曲のひとつ。この曲をずっとやれることをすごく幸せに思っています」と曲を紹介した水野がスポットライトを浴びながらピアノを弾き、吉岡が歌い出す。ストリングスの音色も深遠でアンビエントな音像を纏い、名曲に新しい魅力を与えていた。こうした試みができるのは、いきものがかりの曲が素直で親しみやすい旋律と、明瞭に聴き取れる歌詞、ボーカルで紡がれているからに他ならない。素朴なメロディが光る「夕焼けが生まれる街」では、客席が夕焼け色に染まる。クラシック曲のオマージュを感じさせるストリングスの演奏も、あたたかなサウンドスケープを描いた。
バンドのセッション的な演奏が始まると、吉岡と水野はオープニング同様に中央のセンターステージへ。ピタッとブレイクして吉岡が歌い出したのは、「ブルーバード」だ。一気に場内が沸き立ち、ドラマティックなメロディが天高く昇っていく。水野はブルーのデザインが施されたギターをかき鳴らす。パーカッシブに疾走する「うるわしきひと」では、本間が吹くブルースハープがさらに興奮を加速させる。パフォーマンスする2人を熱狂的に取り囲むオーディエンスたち。曲はラテンノリの躍動感たっぷりな「うきうきぱんだ」へと続き、映像の中でパンダの着ぐるみが登場……とメインステージを観ると、ストリングスの4人がパンダの着ぐるみの頭だけを被って大盛り上がりしている。カオス極まる横浜アリーナは、最強のライブアンセム「じょいふる」に突入して、爆発的な盛り上がりに。「みんな行くよ! 〈横浜ノコエキカセテ〉!」と歌詞をもじって歌う吉岡に、タオルを回して一体となり歌うオーディエンス。メインステージでは、パンダの着ぐるみがいつの間にか本間に受け継がれ、最終的に伊吹がパンダドラマーになっていた。吉岡が右、水野が左のセンターステージへと移動して、吉岡が「横浜まだまだいけるのか~い!?」と煽ると、客席からは「Yeah~!!」と大きなレスポンス。怒涛の大合唱で、さらなる興奮のるつぼと化した。歌い終えた吉岡も「お客さん、すごい! 元気! 最高! 横浜ありがとう!」と興奮冷めやらぬ様子だ。
「このツアーは、みんなを近くに感じたくて、ステージをみんなの近くに作ったんだけど、近くに感じてもらえましたか!?」「だって私たち(昔は路上ライブで)日曜日に立っていても、誰も止まらない日もあったのに、こんなに大きい横浜アリーナに、全国から、外国からも集まってくれて。私たちが小さい頃から音楽が好きで、曲を作りたい、歌を歌いたいっていう想いを、こんな夢みたいな場所に変えてくれたのは、みんなのおかげです。今日は本当に最高! ありがとうございます!」(吉岡)、「うちの吉岡がウルウルきています。ありがとう!」(水野)。そんな感謝のMCから、客席を見つめながら「笑顔」を丁寧に歌い上げ、ライブ本編を締めくくった。
歓声に迎えられたアンコールでは、お揃いの白い衣装に身を包んだ2人がステージに戻り「YELL」からスタート。2人だけのパフォーマンスで、静まり返った場内にピアノの音色と歌が空気を震わせる。歌詞と姿がビジョンに映し出されて、2人の声が重なる。いきものがかりの音楽の真髄をひしひしと感じさせる名演に、盛大な拍手がステージに送られた。サポートメンバーを呼び込んでの記念撮影をおこなったあとは、「遠くへいけるよ」へ。風が吹きぬけるような、「力を抜いた曲を書こう」と思って作ったとのことで、そのイメージの通り、力強くも軽やかに届けられた。
水野が「最近は、『前に進む』という気持ちを込めて、必ず最後に新曲をやっています」と語り、「一緒に歌ってくれますか?」と、先ほどコーラスレコーディングをした「生きて、燦々」が最後の曲であることを告げる。続けて水野は、「みなさんが集まってくれているこの瞬間はもちろん大事なんですけど、いちばん大事なのは日常に戻った後のみなさんの日々。ちょっとでも、この瞬間が追い風になることを祈っています。一つひとつの怒りとか喜びとか悲しみとか、そういうものを、大きな声とかシンプルな物語とかに奪われないでください。(「生きて、燦々」は)目の前にあるみなさんの日々がいちばん大事だということ、本当は大声で真正面から歌わなきゃいけないことを書いたつもりの曲です。体に気をつけて、また会いましょう。本当に今日はありがとうございました!このツアー最後の曲です! 一緒に、燦々と歌いましょう!」
イントロなしで吉岡が歌いだし、煌々とした光の中で豪快なサウンドに壮大なコーラスが重なる。水野の語ったメッセージもあり、まさに“民衆の歌”として心に響いた一曲だった。曲の最後には銀テープがセンターステージからアリーナを舞い、エンディングへ。吉岡、水野とサポートメンバーが手を繋ぎ深々と一礼すると、2人はメンバー、スタッフ、お客さんに感謝を述べる。そして、「本当はメンバーを褒めるのはステージ上でやることじゃないんだけど、歌い切った吉岡に大きな拍手を!」(水野)、「いつも支えてくれるリーダーに大拍手を!」(吉岡)とお互いを称え合い、ツアーファイナルは心地良い余韻を残して終演となった。
Text:岡本貴之
Photo:横山マサト
◎公演情報
【いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2025 ~ASOBI~】
2025年7月20日(日) 神奈川・横浜アリーナ
▼セットリスト
1. コイスルオトメ – From THE FIRST TAKE
2. 気まぐれロマンティック
3. キミがいる
4. いつだって僕らは
5. 彩り
6. ありがとう
7. あの日のこと
8. 帰りたくなったよ
9. 夕焼けが生まれる街
10. ブルーバード
11. うるわしきひと
12. うきうきぱんだ
13. じょいふる
14. 笑顔
EN1. YELL
EN2. 遠くへいけるよ
EN3. 生きて、燦々
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