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アジア勢の躍進と、音楽産業の未来を語る場としての進化
英国南部・海沿いの都市ブライトンで5月16日~18日に開催された【The Great Escape 2025(以下、TGE)】は、音楽業界における次世代アーティストの登竜門として、今年もその存在感を強く示した。30以上の会場で550組を超えるアーティストが750本以上のパフォーマンスを展開。街全体が音楽一色に染まる中、ダイバーシティと創造性に富んだ3日間が繰り広げられた。
TGEとMama Festivalsの背景
【TGE】は2006年、当時Hammersmith ApolloやShepherd’s Bush Empireなど英国各地にライブ会場を所有していたChannel Flyによって設立された。創設者は現ATC所属のアダム・ドリスコル。設立当初はライブ会場事業と音楽フェス事業が一体化していたが、後に分離され、フェス部門は【Mama Festivals】として独立。約7年前にはLive Nationによって買収され、グローバルな展開を加速させている。
フェス立ち上げ当時の2006年、音楽業界は紙媒体中心のプロモーションが主流で、イギリス国内では新世代バンドの台頭が目立っていた。そんな中、Glastonburyのブッキングを手がけていたジョン・マックとマーティン・エルボーンが、インフラとアクセスの整ったブライトンを舞台に、新たな国際型フェスの開催地として選び抜いたのがTGEのはじまりだ。
第1回は50組のアーティストからスタートし、その後、英国や欧州のアーティストが輸出機関や音楽業界関係者とつながる場として大きく発展。これまでにオーストラリアやアイルランドなど、政府出資の音楽輸出機関とも多数連携してきた。一方、日本は文化輸出に対する公的資金の不足から、関係構築に課題を抱えていた。
アジア勢の台頭:個性と多様性で魅せる10組のJアーティスト
今年の【TGE】では、アジア勢の存在感が際立った。特に注目されたのは、日本から参加した10組のアーティストたち。いずれも海外では「J-Pop」と一括りにされながらも、それぞれ全く異なるジャンルと個性を持つ面々が揃った。
参加アーティストは、AKO、Kroi、go!go!vanillas、Bialystocks、Rikuto Fujimoto、She Her Her Hers、Viva Ola、Alborg、The fin.、そして昨年のSXSWオースティンで英音楽誌Clashが絶賛したChameleon Whoopiepie。彼らはJ-Popという枠にとどまらず、R&B、インディーロック、ドリームポップ、エレクトロ、シンガーソングライター系など、多彩なサウンドを武器に国際観客を魅了した。
また韓国からは“K-Pop”とは異なる、演奏力と表現力に重きを置いた4組が登場。中国からもR&BやSSW(シンガーソングライター)系のアーティスト7組が参加し、アジアからの新しい潮流を印象づけた。さらにUK/Malaysia出身のChloe Qisha、UK/Hong KongのMiso Extraといった多国籍背景を持つアーティストも登場し、これまでにない規模と多様性のアジア勢がフェスを彩った。
音楽だけでない、“対話”のフェスとして
【TGE】はライブだけでなく、音楽産業に携わるプロフェッショナルが集うカンファレンスとしても知られている。今年のメインテーマは「2025年の音楽市場の変容」。AIM(Association of Independent Music)やThe Council of Music Makersの代表者らが、ストリーミングモデルの限界、AI利用の懸念、アーティスト育成とツアー支援の資金問題などを議論した。
労働党議員のアレックス・ソーベル氏は、草の根音楽会場の保護やAIに関する政策整備を訴え、「今動かなければ10年後には実在のミュージシャンもライブ会場も消えてしまう」と警鐘を鳴らした。また、Skunk AnansieのSkinによる特別セッションでは、Glastonbury史上初の黒人女性ヘッドライナーとしての経験が語られ、「多様性と真実性なくして、ロックの未来はない」と力強いメッセージを投げかけた。
「次世代の地図」がここにある
BBC IntroducingやYouth Musicと連携した次世代育成プログラムも実施され、若手アーティストに向けて、プレス向けのピッチ術やショート動画戦略、契約タイミングに関する実践的ノウハウが共有された。
The Great Escapeは、国際的な音楽発信の場であると同時に、アーティストと業界がともに未来を描く場でもある。2025年の開催は、ジャンルも国境も越えて「次に来る」才能たちが確実にそこにいたという事実を、鮮やかに刻んだ。
◎開催概要
【he Great Escape 2025】
2025年5月16日~18日
イギリス・ブライトン
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