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シンディ・ローパーの6年ぶり、通算15度目にして最後となる単独ジャパン・ツアーが開催された。【Girls Just Wanna Have Fun Farewell Tour】と題された本ツアーは、2024年10月のカナダ・モントリオール公演を皮切りに世界各国を回り、ついに日本へやってきた。本稿では、集大成と言えるパフォーマンスが余すところなく披露された、4月22日の東京・日本武道館公演の模様をお届けする。
開演時間の19時過ぎに客電が落ちると、高揚感に満ちたポップなSEに合わせてスクリーンから映像が流れ始める。映し出されたのは、彼女のアイコニックな画像、キャリアを彩ってきたMVやアートワーク。輝かしいキャリアを総括するような、胸を躍らせるオープニングだ。すると、レインボーの紙吹雪が放たれると同時に印象的なベースラインが鳴り始める。大歓声に迎えられる中、1曲目は「She Bop」からスタートを切った。ステージに姿を現したシンディ。変わらぬ歌声を響かせ、ステージをアクティブに動き回るその姿は、御年71歳とは思えないほどのパワフルさだ。
同曲が終わると、「コンバンハ! トーキョー! ゲンキー?」と観客に投げかけMCに。「1986年の初来日公演の時、みんなが『True Colors』を歌い返してくれたことが忘れられない。2011年3月11日の震災の時に帰らなかったのはそれがあったから。」「私の人生の中でみんながとっても大事な存在だった。ありがとう。」と涙を浮かべながら伝えてくれた。他にも、日本のピアノバーで働いていたこと、そこにいたシェフが教えてくれた日本語が後に赤ちゃん言葉だとわかったことなど、ユーモラスに語った。親日家として知られる彼女だが、日本に対する愛がいかに大きいか、改めて感じさせるシーンだった。今日集まった全員が、感謝の思いと笑顔で満ち溢れている。
MCを経て、温かくアットホームな雰囲気に包まれた会場。続いて披露されたのは、映画『グーニーズ』の主題歌「The Goonies ‘R’ Good Enough」だ。キャッチーなマリンバの音色と明るくハッピーな曲調。その中に輝く、彼女の力強く鮮やかなボーカル。笑みを浮かべた観客たちはリズムに乗りながら全身で楽しんでいる。立て続けにプリンスのカバー曲「When You Were Mine」へ。キャリア初期の楽曲が次々と演奏され、まるで80年代にタイムスリップしたかのようだ。そして、彼女の楽曲はリリースから時が経った今でも決して色褪せていない。彼女の卓越したクリエイティビティは言うまでもなく、デビューアルバム『She’s So Unusual』のタイトルが示す通り、唯一無二の世界観を表現していることこそが、幅広い世代に愛される理由なのではないだろうか。
今回の来日公演は、音楽とアートが織りなす、アーティスティックで華麗なショーでもあった。中でも、ステージの巨大スクリーンが大きな役割を果たしていたと言えるだろう。「I Drove All Night」では流れるようなネオンライトが映し出され、「Who Let in the Rain」では、同曲のテーマでもある“雨”を表すかのような美しい滝が投影されていた。そして、それらの映像は全て、彼女とファンの一体感を高めていた。しかし映像だけではない。民族音楽を彷彿させる音色が印象的な「Iko Iko」。同曲では、黄色のウィッグと真っ赤な衣装を身にまとったシンディとバンドメンバーが、まるでミュージカルのワンシーンのようなリズミカルな演出を繰り広げる。サビの「Hey now! Hey now!」でコール&レスポンスが巻き起こり、会場はさらに一体となっていく。
降り注ぐ名曲の数々。それらが披露されるとともに、彼女はオーディエンスとの対話を大切にした。生まれ育った地元や家族のこと、自身のファッションに対するこだわり、楽曲に関するエピソードなど、色々なことを伝えてくれた。家の近所に住んでいたサリーについての楽曲「Sally’s Pigeons」。サリーが面倒を見ていたというハトと地元の風景を思わせるアニメーションが映し出されたスクリーンをバックに同曲を歌い上げる。空間全体がノスタルジックで安らかな空気に包まれた。続いて、「裁縫して素敵な洋服を作ってくれたおばあちゃんやお母さん」にインスパイアを受け、「普通の男性と同じ市民としての自由が欲しい。」という思いのもと制作したという「I’m Gonna Be Strong」。同曲の終盤、全く衰えを感じさせないロングハイトーンボイスが場内を震わせた。大きな歓声と拍手が起こるとともに、シンディとわたしたちの心が確かに通じ合っていることを実感した。
圧巻のライブはいよいよ終盤へ。「普通は『スマホなんか出していないで、この場を楽しんで』って言うんだけど。本当にこの場を楽しむために、みんなスマホのライトを照らして。」と彼女が投げかける。始まったのは、不朽の名曲「Time After Time」。ファン全員で作り上げた美しい“夜景”の中、繊細で力強い彼女の歌声が響きわたり、シンガロングが巻き起こる。一体感と感動に満ちた空間。何にも代えがたい、幸せで贅沢な時間を過ごした。続いても名曲「Money Changes Everything」。煌びやかなシンセサイザーとギターストローク、心揺さぶるパワフルなボーカルがさらに観衆を飲み込んでいく。
その後、一旦ステージから捌けるシンディ。観客からのアンコールが鳴りやまぬ中、なんと中央に設置されたステージに登場した。そこで披露されたのは、時代を超えて愛される名バラード「True Colors」だ。神秘的なギターのアルペジオ、語りかけるような優しい歌声に目頭が熱くなる。怒涛のように名曲が繰り出され、クライマックスでは観客の間を歩きながら前面ステージへ。そして最後は、待ちに待った「Girls Just Want to Have Fun」。スクリーンに映し出されたのは、芸術家・草間彌生と紅白の水玉模様。音楽×アートのステージが見事に披露され、最後は彼女らしい笑顔と希望に満ちた、ポジティブでハッピーなエンディングを迎えた。
全15曲、ノンストップで2時間を駆け抜けたシンディ・ローパー。圧巻のパフォーマンスが繰り広げられる中、会場は常に温かな愛と熱いパワーに満ちていた。彼女は日本語を時折交えながら、感謝の言葉を述べたり、冗談を言ったりと、何度もファンとのコミュニケーションをとった。そして、エネルギッシュなパフォーマンス。今回が最後の来日公演となるのは悔やまれるが、彼女はこれからも色褪せることのない大きく力強い存在として、みんなに希望を与え続けていくことだろう。なお、ツアー最終日の4月25日のセットリストがプレイリストとして、YouTube、Amazon Music、Spotify、Apple Musicで公開されている。
Text by Yutaro Takahashi
Photo by Masanori Doi
◎公演情報
【Girls Just Wanna Have Fun Farewell Tour】
2025年4月19日(土)大阪・Asueアリーナ大阪
2025年4月22日(火)東京・日本武道館
2025年4月23日(水)東京・日本武道館
2025年4月25日(金)東京・日本武道館
◎セットリスト
※2025年4月22日(火)公演
1. She Bop
2. The Goonies ‘R’ Good Enough
3. When You Were Mine
4. I Drove All Night
5. Who Let in the Rain
6. Iko Iko
7. Funnel of Love
8. Sally’s Pigeons
9. I’m Gonna Be Strong
10. Sisters of Avalon
11. Change of Heart
12. Time After Time
13. Money Changes Everything
14. True Colors
15. Girls Just Want to Have Fun
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