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現在、ハリウッドの2本のスパイ映画が日本で公開されている。1本は、ガイ・リッチー監督×ジェリー・ブラッカイマー製作の『アンジェントルメン』。もう1本はラミ・マレック主演の『アマチュア』で、いずれもスパイ映画としてはやや変化球だ。
『アンジェントルメン』(C)2024 Postmaster Productions Limited. All Rights Reserved.
まず『アンジェントルメン』は、第2次大戦中の実話がベース。チャーチル英首相の下で結成され、MI6(英国秘密情報部)の前身といわれる非公式の特殊部隊SOEのミッションを描く。機密解除された英国陸軍省のファイルに実際に記されている部隊で、007シリーズの原作者イアン・フレミングも所属していた(映画にも登場する)。近年は純粋な諜報活動を扱ったスパイ映画が少ないので、その意味では貴重だ。
ガイ・リッチーは過去にも、スパイ・アクションの佳作『コードネーム U.N.C.L.E.』(往年のテレビドラマ「0011ナポレオン・ソロ」のリメーク)を撮っていて、シリーズ化をもくろんでいたが現在まで実現していない。特別なスキルを持つ寄せ集めチームを描いた『アンジェントルメン』は、その雪辱を期した実話版、あるいは第2次大戦版といえるだろう。ちなみに、007と並ぶスパイ映画の2大シリーズ『ミッション:インポッシブル』は、映画こそトム・クルーズの独壇場だが、オリジナルのテレビシリーズ「スパイ大作戦」は『アンジェントルメン』同様にチームプレーが見どころだった。
もう1本の『アマチュア』は、CIA(米国中央情報局)に所属する分析官が主人公。エージェント(工作員)ではなく内勤というところが変化球だ。つまり肉体よりも頭脳が武器で、殺人に関しては“アマチュア”なのだ。ハリソン・フォードらが映画で演じてきた有名なジャック・ライアンもCIAの分析官という設定だが、彼の場合は現場に派遣されたり、自ら飛び出していく高い行動力によってスパイ・アクションを成立させていた。
『アマチュア』は、テロ事件で妻を殺された男の復讐劇がメインだが、そこに上司の不正の内部告発を絡めている。監督を務めたのは、ドラマ「窓際のスパイ」で注目されたジェームズ・ホーズ。こちらはイギリスのMI5(保安局)が舞台になっている。ジェームズ・ボンドの所属するMI6が国外で諜報活動を行うのに対し、MI5は国内の治安維持を目的とした組織だ。
『アマチュア』(C)2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.