「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第六回「鱗(うろこ)剥がれた『節用集』」ベテラン俳優が隠れキャラ?「尾美としのりをさがせ!」【大河ドラマコラム】

2025年2月13日 / 13:00

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。2月9日に放送された第六回「鱗(うろこ)剥がれた『節用集』」では、鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)のお抱えになった主人公”蔦重“こと蔦屋重三郎(横浜流星)が、新たなアイデアとして、時代遅れになった”青本“のリニューアルに挑む姿が描かれた。

(C)NHK

 快調に進む物語は、江戸時代を忠実に再現した大河ドラマらしいスケール感のある映像や主演の横浜をはじめとした豪華キャストの顔触れと共に、毎週われわれ視聴者を楽しませてくれる。ところが、その豪華キャストの中で、第二回以降、毎回オープニングに単独でクレジットされながら、どこに出ているのかさっぱりわからない俳優がいる。それが、平沢常富役の尾美としのりだ。子役からキャリアをスタートしたベテランで、数多くの映画やテレビドラマに出演し、近年の大河ドラマでは「おんな城主 直虎」(17)の榊原康政役や「麒麟がくる」(20)の土岐頼芸役などでおなじみだ。

 本作の平沢常富も、番組公式サイトにきちんと人物紹介されている重要人物。にもかかわらず、ドラマを見ても、どこに出ているのか全くわからない。SNSをチェックすると、目ざとい視聴者は「ウォーリーをさがせ!」になぞらえて、「尾美としのりをさがせ!」と出演シーンを探しているらしく、ちょっとした“隠れキャラ”のようになっている。恐らく、制作側もそれを狙って仕込んでいるに違いない。

 筆者も気になって探してみたが、この回もほんの一瞬、「これかな?」という姿を見つけたものの、確証はない。だが、初登場となった第二回は、明確な裏付けを持って出演が確認できた。発売中の雑誌『月刊ドラマ』2月号に本作の第一回と第二回のシナリオが掲載されており、第二回に「平沢常富」の名が記されたシーンがあるのだ。それは、平賀源内を探していた蔦重が、源内の知り合いを自称する“貧家銭内”が源内本人(安田顕)だったと気付くシーンだ。

 このとき蔦重は、案内した吉原の座敷で“貧家銭内”に「源内先生!」と声を掛ける男の声を聞き、その正体に気付く。源内に声を掛けたこの男こそ、平沢常富なのだ。とはいえ、改めて本編を確認しても、映った瞬間に源内にお辞儀して頭を下げてしまうので、顔はほとんど判別できない。(そうと知って見ると、声は確かに尾美なのだが。)

 人物紹介に載っている以上、平沢常富もいずれはきちんと姿を現し、物語に絡んでくることは間違いない。それがいつ、どのような形になるのかはわからないが、それまでは再放送や配信なども活用し、遊び心あふれる制作側の仕掛けに乗ってみるのも一興ではないだろうか。

 さて、物語の方はこの回、青本のリニューアルに挑んだ蔦重だったが、実は鱗形屋が海賊版“偽版”に手を染めていたという衝撃的な事件に直面する。この事件を通して、一本気で表裏のない人間と思われた蔦重の内にも、暗い一面があることを示し、その人物像をさらに掘り下げて見せた。徐々に世界観と人物像が深まっていく物語の魅力に加え、遊び心あふれる仕掛けまで用意する“べらぼう”な制作陣が、今後どんな楽しみ方を提供してくれるのか。興味は尽きない。

(井上健一)

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