<ライブレポート>Shiggy Jr.がビルボードライブでセッション 大人になった4人がたどり着いた夢のステージ

2025年1月24日 / 18:00

 2019年に惜しまれつつ解散した4人組バンド、Shiggy Jr.。昨年、結成10周年イヤーを機に約5年ぶりの再集結を果たし、今年1月、念願のビルボードライブ・ツアー【Shiggy Jr. Billboard Live Sessions】を成功させた。1月12日ビルボードライブ大阪公演、そして19日ビルボードライブ横浜公演と、各2回・計4公演を開催。本稿ではツアーファイナルの19日2ndステージをレポートする。

 まずは『Billboard Live Sessions』というタイトル通り、原田(Gt.)、森(Ba.)、諸石(Dr.)によるセッションからスタート。穏やかな音が重なる中で池田(Vo.)が登場し、「みなさんこんばんは、Shiggy Jr.です」と挨拶を交わすと、一気に会場全体が温かな空気に包まれた。1曲目は、インディーズ時代から人気の「baby I love you」。その時点から、バンドの大きな変化を感じさせた。池田の愛と切なさを内包した歌声や原田の心地よいカッティングギターは変わらずだが、「芳醇」という言葉が似合うサウンドが鳴り響く。解散前のShiggy Jr.は視覚的にもカラフルで、元気ハツラツな印象をまとっていたと思うが、この日のShiggy Jr.は紅色の背景を前に黒色のワンピースやスーツ、シャツを着こなし、大人の余裕を感じさせる。この「芳醇」や「余裕」はどこから生まれるものなのだろうと考えながら、私は2曲目以降を味わっていた。

 2曲目の「keep on raining」を終えると、原田が挨拶の言葉をしゃべり始める。「大阪……あ、大阪じゃなかった」。しっかりしているようで、たまに天然っぽい(それとも「天才らしい」というべきか)素振りがこぼれる原田は変わってないようだ。ただし、そのまま原田がボーカルを取る「you are my girl」に入ると、やはり素敵な変化を感じさせる。解散中、原田は作家としてさまざまなアーティストやアイドルグループに楽曲を提供し、森はTHE 2として活動、さらにMrs. GREEN APPLEやTeleなどのサポートでも大活躍、そして諸石もNAMBA69のドラマーとして活動する他、TeleやKnosisのサポートを務めてきた。それらの豊富な経験がそれぞれをスキルアップさせたことは言うまでもなく、途中にジャズアレンジが加わり、最後はギターソロで締め括られた「you are my girl」は、一粒一粒の音がとても綺麗に絡まり合っていた。

 そこからは「magic of the winter」、「サングリア」、「シャンパンになりきれない私を」と、「ダンス・ディスコ」をテーマにしたメジャー2ndアルバム『DANCE TO THE MUSIC』の楽曲で身体を揺らしてくれる。池田の歌声は、人間らしさと、デジタルっぽいとも言えるような直線的で人間離れしたキュートさ、その両方を帯びた特殊なものであることを改めて感じさせる。これらは7年前にリリースされた楽曲であるが、70~80年代ディスコ・ミュージックのグルーヴに、人間とボカロ的な声が重なった歌というのは、今の音楽シーンの潮流に合っている、というか先取りしたいたのでは、といったことを考えさせられた。

 MCでは、この日は森の子どもが楽屋に来ていたことについてトーク。さらに、活動初期にもShiggy Jr.をサポートしていた奥野大樹(Key.)には最近子どもが誕生したという。「それぞれに家族が増えていて、大人になってきたなと思う」と原田。

 そして、この日は池田の誕生日だ。MCを終えて「カバーを用意してきました、聴いてください」と曲に入ろうとしたところ、池田以外の4人が“ハッピーバースデートゥーユー”を演奏し始めた。その瞬間、膝から崩れ落ちる池田。そして大きな花束と、たくさんの「おめでとう」を受け取った。

 このツアーでは、ステージごとに異なる楽曲のカバーが披露された。19日の2ndステージでは、Original Love「接吻」をチョイス。そこから「約束」、「Still Love You」と、「好き」や「嫌い」といった単調な感情では片付けられない愛について描いた楽曲を続ける。この日、会場中を満たしていた芳醇さや余裕は、音楽的なスキルだけから生まれるものではない。それぞれがひとりの人間として人生を進めて、喜怒哀楽やそれらに入りきらない多彩な感情も経験し、自分と他者を深く知ったからこそ、この日の音は今まで以上に器の大きさを感じさせたのだろう。

 終盤のMCでは、解散前のライブの中でも特にビルボードライブ東京でのイベントが印象に残っていて、ビルボードライブでワンマンを行うことが当時からの夢であったことを語った。さらに5月2日には、これも解散前からバンドの目標であった「Zeppワンマン」を叶える。こうして古くからの夢を、想像もしてなかった形で叶えることができている喜びを言葉にしてから歌ったのは、再集結後にリリースした「LIFE GOES ON」。〈かつてないほど希望に満ちた〉という歌い出しが美しいファンファーレのように響きわたった。現状、再集結してからは3曲が発表されているが、今の4人の人生観を表現したShiggy Jr.の楽曲をもっとたくさん聴かせてほしいと切に思う。

 ラストスパートは「LIFE GOES ON」の他、「Saturday night to Sunday morning」、「サマータイムラブ」、「ピュアなソルジャー」と、Shiggy Jr.の代表曲を池田がオーディエンスの目を見ながら歌い届け、さらに温かな空気を作り出していた。アンコールでは「幸せな1日を過ごせましたので、感謝の気持ちを込めて最後に演奏したいと思います」と言葉を添えて「サンキュー」を届けた。

 全曲を終えると、4人はステージ前方で並び、手を繋いでお辞儀をした。その瞬間、4人ともが20代の頃には見られなかったような、何の飾り気もない、とても自然体な笑顔を浮かべていた。〈笑顔をもっと世界中へと〉という「LIFE GOES ON」の歌詞の通り、その笑顔には人に伝染させる力もある。人生、何が起きるかわからないが、〈いつだって最高の今日を生きたら/きっと何とかなるから〉という言葉通り、その日に自分が最善だと思う選択を重ねていたら、きっとこの日のように想像もしなかった明るい未来が待っているのだろう。その過程では、思わぬ形で夢が叶う奇跡のような瞬間も訪れる。Shiggy Jr.のビルボードライブは、人生の輝かしい側面を見せてくれるものだった。

Text:矢島由佳子
Photo:Masanori Naruse

◎セットリスト
【Shiggy Jr. Billboard Live Sessions】
2025年1月19日(日)神奈川・ビルボードライブ横浜 2ndステージ
1. baby I love you
2. keep on rainning
3. you are my girl
4. magic of the winter
5. サングリア
6. シャンパンになりきれない私を
7. Do you remember
8. 接吻(カバー)
9. 約束
10. Still Love You
11. Saturday night to Sunday morning
12. LIFE GOES ON
13. サマータイムラブ
14. ピュアなソルジャー
En. サンキュー

◎公演情報
【Shiggy Jr. ONE MAN LIVE 2025 “SHIGGY GOES ON”】
2025年5月2日(金)東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)

 


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