<ライブレポート>三浦透子がビルボードライブで初ワンマン バンド編成で届けた表現力豊かな歌声

2024年12月27日 / 18:00

 俳優として、最近ではシンガーとしても注目を集める三浦透子。これまで彼女は3枚のアルバムを発表。映画やテレビの主題歌も手掛けるなど、シンガーとしてのキャリアを積んできたが、11月29日にビルボードライブ東京で初めてのソロ公演を開催した。この日彼女をサポートしたのは、これまで彼女に楽曲を提供し、共演もしてきた有元キイチ(ODD Foot Works)と小田朋美(CRCK/LCKS)だ。三浦の記念すべきステージを観ようと会場は満席。そこに三浦が現れると客席からは応援する声が飛んだ。

 この日、三浦は上下を白で統一した衣装。横に並んだ共演者の小田は黒のドレスでコントラストが際立っている。ステージ中央には白いシーツに包まれた長椅子があり、三浦が座って歌う。ステージに向かって右側にギターを抱えた有元、左側にはピアノとキーボードを2台並べた小田。3人は寄り添うように集まり、機材が少なく空間をたっぷりとったステージが芝居のセットのようにも見える。

 オープニング曲は1stミニアルバム『ASTERISK』に収録された、森山直太朗によるプロデュース曲「uzu」。歌詞はなくスキャットだけで歌われる曲で、三浦の透明な歌声が空間に溶けていく。そこから彼女の代表曲で、映画『天気の子』の主題歌「グランドエスケープ」。三浦は穏やかに歌いながらも、サビに向かって少しずつ感情が高まっていくのが伝わってくる。小田の華麗なピアノの演奏も聴きどころで、サビでは有元と小田のコーラスが加わって曲に力強さが増す。曲が終わると三浦は観客に挨拶し、小田が弾くピアノに導かれて「おちつけ」を披露。R&B調のナンバーに観客から手拍子が起こる。続く「通過点」もソウルフルな曲だが、こちらはしっとりとメロウに聴かせる。そして、叙情性をさらに深めたのが曽我部恵一が作詞作曲をした「ブルーハワイ」だ。有元のギターがアンサンブルの中心となり、三浦は語りかけるような低いキーで歌って、映画のワンシーンのように夏の情景を浮かび上がらせていく。「波がたった」ではギター・ソロが入り、ピアノは躍動感を感じさせ、バンド感を感じせるアレンジに三浦の歌声も弾む。

 そこでちょっとひと休み。「初めてのライブだから緊張するだろうな、と思ってきましたが楽しんでいます」と今の心境を打ち明けた三浦。ライブに向けて3人で小田の家に集まってリハーサルを重ねて、3人でアレンジを考えた、と語ってくれた。そして、その時の親密な雰囲気をライブで再現するために、リハーサルの時に座っていた小田の家の椅子をステージの持ち込んだという。でも、椅子を持っていったために、小田はこの日の朝ごはんを食べる椅子がなくて困ったとか。そういう他愛のない話から3人の打ち解けた関係が伝わってきた。

 ここからライブは後半。イントロなしで歌から始まる「intersolid」は小田が提供した曲。もちろん歌と演奏のタイミングがバッチリ。余白が多いアレンジでギターとピアノの演奏が映える。「FISHANDCHIPS」はオリエンタルな旋律を盛り込んだクセのあるメロディーで、しかも息継ぎする箇所がほとんどない難しい曲だが三浦は見事に歌いこなす。しかも、後半にはラップ・パートもあり、三浦のシンガーとしての表現力の豊かさを実感させた。続く「聞いていたの?」は三浦をフィーチャリングした有元の曲で、三浦と有元はデュエットを披露。有元の低い歌声と三浦の澄んだ歌声との相性がいい。

 そして、フォーキーなアレンジで「点灯」をしっとりと歌うと、三浦は観客に向けて「あっという間に時間が経ちました。皆さん、暖かな気持ちで見守ってくれてありがとうございます」とライブが終わりに近づいたことを告げた。ライブが終わることを惜しむ観客の声援を受けて歌ったのが「風になれ」。彼女が主演した映画『そばかす』の主題歌で、羊文学の塩塚モエカが作詞作曲をした曲だ。オリジナルはバンド・サウンドだが、小田と有元の演奏がバンドに負けないように音に膨らみを生み出すなか、三浦の歌声は駆け出していくような晴れやかさを感じさせる。ラスト・ナンバーは有元が作詞作曲をした「私は貴方」。三浦は頭をぐるっと回して肩の力を抜いて歌い始める。終盤に向けて強まっていく小田のピアノのタッチ。有元はギターを歪ませて緊張した空間を生み出すなか、三浦の歌声がまっすぐに伸びていく。

 曲が終わって3人がステージを降りても拍手は鳴り止まず、ステージに戻ってきた三浦は、3月にビルボードライブ横浜と大阪で追加公演を行なうことを発表した。しかも、ドラムとベースを加えたバンド編成だ。もちろん、小田と有元は参加。「今回のリハーサルでひとつのベースができた」という小田の発言を聞くと、新しいアレンジでのパフォーマンスも期待できそうだ。アンコール曲は「おかあさんへ」。「この歌が、こういう素敵な場所に連れてきてくれました。その感謝を込めて歌います」という言葉通り、心のこもった歌声だ。そして、最後に歌ったのが今年10月に発表した新曲「すっぴん」。三浦は指を鳴らしてリズムを刻み、観客に「よかったら手拍子で参加してください」と声をかける。三浦の歌を中心に会場が一体となってライブは幕を閉じた。

 初めてのソロ公演とは思えないほど、落ち着いて歌を聴かせてくれた三浦。それは有元と小田という頼れる仲間がいたことも大きかっただろう。寡黙な佇まいでギターを弾き、時には音響的な音色で空間を埋めた有元。ピアノとキーボードを時には同時に使って超絶技巧の演奏を見せた小田。どちらも見事なサポートぶりだった。そして、様々なタイプの曲を歌って、違和感なく自分の世界を生み出す三浦のボーカルも見事。その歌声は透明感がありながらも、手に触れられるような生々しさを感じさせて、三浦のシンガーとしての才能を目の当たりにした初ライブだった。来年3月の追加公演が早くも楽しみだ。

Text:村尾泰郎
Photo:垂水佳菜

◎公演情報
【三浦透子 at Billboard Live Tour 2025】
2025年3月6日(木)大阪・ビルボードライブ大阪
2025年3月10日(月)神奈川・ビルボードライブ横浜


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