<ライブレポート>「マカロニえんぴつを握りしめて、またどこにでも出かけていってください」 マカロッカーと旅した【TRIP INSIDE】日本武道館で閉幕

2024年10月25日 / 12:00

 マカロニえんぴつの単独ライブ【TRIP INSIDE ~OsakaーJo Hall & Nippon Budokan~】の最終公演が10月12日、日本武道館で開催された。このライブは10月5日、6日に大阪城ホール、10月11日、12日に日本武道館のアリーナ会場で計4公演を実施。最終日はU-NEXTでの生中継も展開され、多くのファンが彼らのステージを目撃することとなった。

 リリースを伴ったツアーではないため、今回はどんなセットリストで観客を楽しませてくれるのか期待に胸が踊る中、定刻を過ぎた頃に会場が暗転。お馴染みのThe Beatles「Hey Bulldog」がオープニングSEとして流れる中、メンバーがひとり、またひとりとステージに姿を現すと、満員の客席から盛大な拍手が送られる。最後にはっとり(Vo. / Gt.)が登場し、ザクザクと刻むようなギターリフを奏で「OKKAKE」からライブはスタート。はっとりが「武道館ー!」と高らかに叫ぶと同時に客席がまばゆい照明で照らされ、会場は早くもクライマックスのような盛り上がりを見せる。立て続けに「レモンパイ」がプレイされると、オーディエンスはありったけの大きなシンガロングでバンドの熱演に応えていく。

 多幸感に満ち溢れた客席を前に、はっとりは「武道館、お待たせしました、マカロニえんぴつです。待ってたかい? 今日で最後だよ? 思いっきりやろうと思ってるんだけど、その場合思いっきり返してくれるのかな?」と呼びかけると、会場は大声援に包まれる。続けて「昔の曲から最近のまでたっぷりやりますが、もし知らない曲があったらあなたのせいです(笑)。お構いなしでオタッキーな曲もやるからね」と宣言すると、高野賢也(Ba. / Cho.)とサポートメンバーの高浦“suzzy”充孝(Dr.)が繰り出すタイトなリズムに合わせて「チューハイ少女」に突入。会場中を無数ものレーザーが飛び交う中、バンドは熱量の高い演奏を続け、「愛のレンタル」ではダンサブルなサウンドに合わせて天井に複数設置されたミラーボールが幻想的な世界を構築していった。

 ほぼノンストップで披露された冒頭4曲を終えると、はっとりは「すごいね、熱気が」と本音をこぼす。続けて「マカロニえんぴつといつ出会ったかはわからないけど、とにかくマカロニえんぴつが好きだということはみんな一緒で、この場所に来てくれた。ライブに来た回数とか聴き始めた時期はこの際関係なくて、自分が好きになったその日、隣にマカロニえんぴつがいたでしょ。自分のことが嫌いになっちゃった日にも、隣にマカロニえんぴつがいて。マカロニと出会った中であの曲に救われた、あの曲を抱きしめてあの頃は過ごしていたなとか、自分の中をちょっとほじくり返して、自分の中を旅してもらいたいという意味でこのタイトルを付けました」と、今回のライブ“TRIP INSIDE”の趣旨について説明する。そして「名物のクソMCも今回はなし(笑)。アンコールもなしで、曲をぶっ通して、フィジカルにいこうと思います」と告げると、「listen to the radio」でライブを再開。鉄壁のアンサンブルでノリよいロックンロールを奏でていく。「poole」ではスイングする長谷川大喜(Key. / Cho.)のピアノプレイが冴え渡り、さらに間奏でははっとりと田辺由明(Gt. / Cho.)がギターハーモニーを響かせるなど、聴きどころの多いアレンジで観客を惹きつけた。そんな中、2017年のインディーズ1stアルバム『CHOSYOKU』収録の「MUSIC」のイントロがギターで爪弾かれた瞬間、客席から「おお……」というどよめきの声も湧き起こり、曲ごとに過去と現在を行き来するようなセットリストにオーディエンスは喜びを隠せない様子だった。

 この日のステージは後方に巨大なLEDスクリーンが設置され、ステージ上方にも5枚の可動式LEDスクリーンを用意。「メレンゲ」では遺跡をモチーフにした背景といった曲に合わせた映像に加え、「two much pain」ではステージ上方のLEDスクリーンがメンバーの近くにまで降り、ステージ上を真っ赤に照らすなど幻想的な演出も用意され、曲ごとにさまざまな世界観を構築していく。そして、代表曲のひとつ「なんでもないよ、」では観客の盛大なシンガロングも沸き起こり、ライブはひとつの山場を迎えた。

 「やっぱり武道館はライブハウスのように熱いね。つい『ライブハウス武道館へようこそ!』と言ってしまいそうです」とおどけてみせるはっとり。彼のロックスターポーズを大々的にフィーチャーしたメンバー紹介を終えると、メンバーの初恋話に花を咲かせる。はっとりは自身の初恋相手が保育園の“JUNKO”先生だったことを明かし、彼女のおかげで自分に自信が持てたと吐露。そしてこの会場に“JUNKO”先生を呼んでいることを告げる。そして、「今日だけは先生のために歌っていい?」と「JUNKO」を披露すると、スクリーンには保育園時代のはっとりと“JUNKO”先生の写真が映し出される。曲中盤、はっとりがギターを置いてサックスソロを披露する場面もあったが、実は長谷川のキーボード演奏に合わせてはっとりが当て振りしていたことが途中で発覚。そんなお茶目さも見せながら、会場は温かな空気に包まれていった。

 「カーペット夜想曲」でライブ後半戦に突入すると、ステージを覆うように紗幕が降ろされ、エレクトロ調のサウンドに合わせた幾何学的な映像演出で武道館をクラブに一変。「リンジュー・ラヴ」や「悲しみはバスに乗って」といった最近の人気ナンバーを連発させたあとは、「哀しみロック」で再びロックンロールモードに突入する。「忘レナ唄」「洗濯機と君とラヂオ」と攻めの楽曲を立て続けに披露すると、ファストナンバー「ワンドリンク別」でこの日何度目かのクライマックスに到達した。

 ライブもいよいよ佳境へ。マカロニえんぴつならではの王道感たっぷりな「星が泳ぐ」「青春と一瞬」でエモーショナルな空気を作り上げると、はっとりは「マカロニえんぴつを握りしめて、またどこにでも出かけていってください。きっと気に食わないことのほうが多い、許せないことのほうが多いんだけど、そのほうが楽しいじゃない。そのほうがこのバンドの曲が生かされると思います。あなたが上手に持ち歩いてください、そのたび近くでマカロニえんぴつはあなたになります。そう信じて、今日目の前で歌いに来ました。伝わったかな?」とメッセージを届ける。そして「希望になるんじゃなくて、あなたが希望にしてみせてください。あなたが愛したマカロニえんぴつという音楽でした、どうもありがとう」という言葉を残して、ラストナンバー「hope」にありったけの情熱と思いを込めてライブを壮大に締め括った。

 10人いれば10通りの生活があるように、この日披露された23曲にはそれぞれの主人公が描くさまざまな日常が表現されており、そのバラエティ豊かな楽曲群をもはや日本を代表するロックバンドのひとつにまで成長したマカロニえんぴつが、有無を言わさぬ説得力で色彩豊かに歌い演奏する。これ以上ないくらいに贅沢な2時間だったのではないだろうか。そんな彼らも、来年2025年にデビュー10周年を迎え、過去最大規模のワンマンライブ【still al dente in YOKOHAMA STADIUM】を6月14日、15日に横浜スタジアムで行う。大きな節目を迎えるマカロニえんぴつがその大舞台でどんな世界を見せてくれるのか、今から楽しみでならない。

Text:西廣智一
Photo:浜野カズシ

◎セットリスト
TRIP INSIDE OsakaJo Hall & Nippon Budokan
2024年10月12日(土)東京・日本武道館
01. OKKAKE
02. レモンパイ
03. チューハイ少女
04. 愛のレンタル
05. listen to the radio
06. poole
07. MUSIC
08. メレンゲ
09. 月へ行こう
10. two much pain
11. なんでもないよ、
12. JUNKO
13. カーペット夜想曲
14. ブルーベリー・ナイツ
15. リンジュー・ラヴ
16. 悲しみはバスに乗って
17. 哀しみロック
18. 忘レナ唄
19. 洗濯機と君とラヂオ
20. ワンドリンク別
21. 星が泳ぐ
22. 青春と一瞬
23. hope

◎公演情報
【still al dente in YOKOHAMA STADIUM】
2025年6月14日(土)、15日(日)
神奈川・横浜スタジアム
OPEN 16:00 / START 18:00


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