<ライブレポート>ポルノグラフィティ、灼熱のハマスタで感謝の祝杯をあげたデビュー25周年記念日「あんたらがおるから、わしらの歌がある」

2024年9月17日 / 19:00

 ポルノグラフィティが、9月7日および8日の2日間、神奈川・横浜スタジアムにてメジャーデビュー25周年記念ライブ【因島・横浜ロマンスポルノ’24 ~解放区~】横浜公演を開催。全国から集まったファン、両日あわせ6万5,000人とともに祝杯をあげた。このレポートでは、25回目のメジャーデビュー記念日である9月8日、ファイナル公演の模様をお届けする。

 25年前のこの日、「アポロ」でメジャーデビューしたポルノグラフィティ。コアファン、音楽リスナーのみならず、いくつもの代表曲がカラオケを中心に広く愛され続けている、J-POPシーンでも稀有な存在といえる。野外ライブが行われるのは、2018年【しまなみロマンスポルノ’18】以来約6年ぶり。8月31日の広島・因島運動公園での初日公演が台風10号の影響で中止になってしまったものの(9月1日は無事に開催)、この日は晴天に恵まれ、むしろ残暑が厳しい日差しとなった。ポルノグラフィティが横浜スタジアムでライブを行うのは2006年、2008年、2014年、2016年に続く5回目(通算10公演)。数々の伝説を残し歴史を刻んできた聖地でどんなライブが行われるのか、大いに期待が高まる。観覧車なども見える巨大なステージセットには、“解放区” “Music Hour”等、各所に楽曲を思わせる文字も配置されていた。

 開演前にスクリーンに客席を映し出す観客参加企画で場内が温まった後、17時を過ぎるとSEが大きくなりステージから特効が炸裂。岡野昭仁(Vo)、新藤晴一(Gt.)の2人とサポートメンバーがゆっくりとステージへ上がり、始まったのは2013年リリースの38thシングル『青春花道』収録のインスト曲「おいでよサンタモニカ」。弾むベースラインに、場内は手拍子でいっぱいに。岡野は「Welcome! 横浜!」と第一声を聴かせると、「1999年の9月8日にデビューして、今日で25年です! こんな記念日に、この素晴らしい横浜スタジアムでライブができて幸せです。ポルノグラフティは幸せ者です! 楽しんで帰ろうぜ!」と思いを伝えた。

 ファンキーなビートでさらに盛り上がる「ネオメロドラマティック」では、合いの手を入れるオーディエンスに「いいね!」と岡野。新藤のエモーショナルなギターソロも興奮を煽る。続く「メジャー」では、客席にマイクを向けると横浜の空に大声でのコーラスが飛んで行く。ライブ序盤から、観客がポルノグラフィティとともに25周年をお祝いしようという気持ちが会場中に溢れている。その思いに応えるふたりの威風堂々とした姿は25年目を迎えたアーティストの貫禄を感じさせた。

 25年前のこの日リリースされたメジャーデビュー曲「アポロ」は、歌い出しから雷鳴のようなクラップが爆発。ステージ下手、レフトスタンドのほうまで足を運び、観客に挑むように身を乗り出して歌う岡野。客席へマイクを向けると大合唱がおこる。アポロ発射を思わせる効果音から新藤がギターソロを聴かせると、間奏明けには岡野が「25周年ありがとう!」と声をかけ、大きな歓声に包まれた。

 MCでは新藤が「本当に25年間ありがとうございます! 因島を出てきて25年、音楽で飯を食っているんだけど、食ったもので体ってできてるじゃん? ふと体の新陳代謝を調べたら、体全体が変わるのが5年なんだって。ということは、俺は5回ポルノグラフィティで体が入れ替わっている。俺は100%“ポルノグラフィティ”だなと思った」と語り、称賛を集める。岡野は因島公演のうち中止になった8月31日公演について、「その悔しい人の気持ちはなかなかつらいものがあるんじゃけども、その代わり因島の1日と、(横浜初日公演である)昨日とで、その気持ちを拭うぐらいみなさんが盛り上がってくれて、今日も安心しております」と思いを伝えると、「因島の匂いのする一曲」として、「狼」へ。〈夏盛り 折古の浜〉と、因島の海水浴場が歌詞に登場するこの曲は、お得意のラテンテイストを感じさせるダンサブルで重心の低い演奏が心地よい。新藤はギターをテレキャスターからレスポールに持ち替え、伸びやかなフレーズを聴かせた。ギターのヘィなリフから「OLD VILLAGER」へと続き、ステージ前方から炎が吹きあがり岡野が力強く太い声を響かせると、客席からはどよめきにも似た歓声が。ステージ上方からも炎が上がり、黒煙が風に流されていく。

 曲間のMCでは、岡野が「横浜スタジアムは5回目、10公演目。初めてやったときからするとスタンドも増設されていて、雰囲気も変わった」と周囲を見渡すと、「こんなに穏やかな横浜スタジアムは僕ら初めてです」とつぶやいて、2人の雨男ぶりを承知している客席は拍手と笑いに包まれた。「2日間、こんなに晴れたことある?」(岡野)「ないね」(新藤)と、当の本人たちも驚いた様子。過去のゲリラ豪雨に見舞われた横浜スタジアムでのライブを振り返りつつ、無事ライブができることへ安堵の表情を覗かせた。

「因島を出るときに、“自分たちも一旗揚げたい”と思っていました。今旗を揚げられとるかはわからないけど、まだまだこの先もその決意を忘れずに、どんどん旗を立てていきたいと思います」。岡野の曲紹介から始まった「FLAG」では、ひと際重たいリズムが地を這うように鳴り響く。岡野が熱唱すると、間奏ではバンドが息の合ったキメで一体感を見せる。対照的にしっとりと軽やかに聴かせた「カメレオン・レンズ」のサビでは、岡野が歌うフレーズに、会話を交わすように新藤のギターがレスポンスする。「シスター」では新藤が12弦アコースティック・ギターで広がりのあるサウンドを披露。少ない音数で抑えた演奏に乗せて、躍動感のあるメロディでストーリー性のある曲を聴かせた。続くミディアムバラード「愛が呼ぶほうへ」にもつながっていく、包容力を感じさせる穏やかな曲調ながら、岡野は身振り手振りを交えながら渾身の歌唱で大観衆を惹き付けた。

「みんなの作る空気がええけ、ここまでとってもいい演奏、いい歌ができてます。ありがとう! 25年間やっていて、実はライブではやっていない曲もたくさんあります。映像作品にはなっていたんだけど、これまでライブで全然やっていなかった曲を聴いてください」との岡野のMCから歌われたのは、「むかいあわせ」。左右のビジョンに、ノスタルジックにステージの2人の姿が映し出される。ゆったりとした演奏で、繰り返すサビのメロディがじんわりと胸に沁みる。アコースティック・ギターを中心に歌われる、25周年イヤーの突入記念に行われた厳島神社でのTikTokライブで披露されたバージョンの「ギフト」では、歌に合わせて腕を振るオーディエンスに岡野が「ありがとう」と曲中に声を掛け、新藤も演奏しながら笑顔で客席に目を向ける。会場中が温かい空気に包まれたセクションだった。

 そんな空気を切り裂くように新藤のギターと共に岡野が歌い出したのは、【ロマンスポルノ’24】特別仕様にアレンジを施された「THE DAY」。驚異的なハイトーンを合図に、スタジアムから一斉にクラップが起こり、演奏が加速。突き進む激しい演奏をバックに熱く歌い上げる岡野は「もっともっと!」とオーディエンスを煽る。ステージの照明が落とされると、横浜スタジアムはすっかり日が落ちて夜を迎えた。そんなシチュエーションに合わせて、新藤のギターが泣きのギターを聴かせるインスト曲「螺旋」で場面転換。ステージが真っ赤に染まると、ラウドな8ビート「Zombies are standing out」へ。曲中、何度も炎が吹きあがり、妖しげなムードがスタジアムを支配する。その興奮を引き継いだのは「今宵、月が見えずとも」。4つ打ちのドラムに煽られて、バンドの音に負けないぐらいのクラップの音が広がると、曲の最後に岡野がとてつもないロングトーンを聴かせて、「うおおー!」とどよめきが起こった。街の雑踏の音を導入とした「ひとひら」では、歌詞がビジョンに映し出された。〈強くあろうと生きてきたから 変わらなけりゃいけなかったよ〉〈あれは飽きもせず 聞き返したメロディ〉と、25年の月日を感じさせる言葉を噛みしめるように歌う岡野に、観客たちは静かに聴き入っていた。

「横浜スタジアム、照明が落ちて暗がりになって、よりライブっぽくなって。あそこには月が見えとったりして、素晴らしい夜ですね。みなさんまだまだ元気ですか!? みんなでぶちあがっていくぞ!」と岡野が煽ると、「ヒトリノ夜」に会場は大盛り上がりでコール&レスポンス。新藤はステージ端まで移動しながらギターを弾いて、右翼側のファンを喜ばせた。岡野はコール&レスポンスしながら「最高!」と叫ぶ。金テープがアリーナに発射されて始まったのは、1stアルバム『ロマンチスト・エゴイスト』の1曲目「Jazz up」。思わぬレア曲 のパフォーマンスに、オーディエンスは拳を振り上げて大合唱。続くイントロのジングルにドッと湧いて「ミュージック・アワー」が始まると、岡野と新藤はステージ端まで足を運んで盛り上げる。スタジアムが一糸乱れぬ振り付けでひとつになる光景はまさに壮観。「アゲハ蝶」でクライマックスを迎えるとますます一体感が増して、会場中に鳴り響くクラップの音もバンドサウンドと融合していた。

「今日はみなさんが歌う姿、横浜スタジアムがひとつになって歌う姿を、カメラに押さえて後でおすそ分けするから、ええ顔で歌って!」と合唱を求めると、「ララララ~」と3万人の歌声でスタジアムが埋め尽くされた。「素晴らしい歌声をありがとう! みんなすごいぞ!」とマイクを向け続ける岡野。オーディエンスのコーラスと岡野が歌うサビが重なり、壮大で感動的な一曲となった。

「ほんまにみんなすごい。素晴らしい歌声をありがとう! みんなにとってこの空間が、心の“解放区”になってますか? わしらにとっても、みんなと過ごす時間が最高の“解放区”になっています。ラスト一曲です!」(岡野)

 歌い出したのは、「解放区」。終盤で岡野がシャウトすると、パイロが上がりアリーナ、スタンドも照明で明るくなる中、アウトロに乗せて「ありがとうみんな! あんたらがおるから、わしらの歌がある。わしらの今は、あんたらが作ったんです。こんな素敵な夜をありがとう。これからも一緒に、この“解放区”を大切に進んでいこう!」と語り掛ける岡野。メンバーがステージを降りると、ビジョンには“わしら”、そして“あなた”にとっての「ポルノグラフィティとは?」という問いに対し、「また答え合わせしよう」と約束の言葉が残されていた。

 アンコールでは、岡野がグッズの青Tシャツ、新藤が白Tシャツで登場。今回の【ロマンスポルノ】因島公演の模様が全国の映画館で3日間上映されることを明かして、客席からは歓喜の声が上がった。「たくさんの人たちに囲まれて25周年を迎えられて、ほんまに幸せです。なんせステージがこっち(客席前方)にあるもんで、前側のみなさんの顔はよく見える。後ろのほうは前のほうほど見えんのじゃ。だからわしら、後ろに行きます」と宣言すると、2人は左右からリリーフカーのような車に乗り、ホームベース付近に設けられたサブステージへと移動。

「今の世の中、みんな見えない枠に囚われて窮屈な思いをしている人が多いんじゃないかと思います。その枠を飛び越えるには、自分で自分を鼓舞する力を持たんといけないと思っていて。この曲が、そんなきっかけになれば」(岡野)。披露されたのは、新曲の「ヴィヴァーチェ」。ワイルドで疾走感のあるロックチューンで、キャッチーなサビが印象的。力強いメッセージが込められた歌詞がビジョンに映し出され、25周年を迎えこれからも突き進んでいくポルノグラフィティのポジティブな姿勢を感じさせた。

 サポートメンバーの4人、玉田豊夢(Dr.)、須長和広(Ba.)、皆川真人(Key.)、tasuku(Gt.)を紹介すると、岡野と新藤がそれぞれ思いを語った。新藤は「デビューしてバーンといったじゃん、俺たち(笑)。まあ、本当にいろんな人の力を借りて。そのときは勢いがあるから、武道館(公演)をやったりして、それは素晴らしい経験だったけど、25周年でこんなに大きい場所でこんなにたくさんの人に祝福してもらってライブができるなんて、意味が違うんだよ。ここに立てたことは我々の自己新記録を打ち立てた気分だし、これからも自分らなりの自己新記録を、みなさんとともに更新していけたらと思います。今日はどうもありがとう!」と振り返った。

 岡野は、「今日で25年目、こんな良い日になると誰が思いますか? このライブをするために力を注いでくれたスタッフに大きな拍手をお願いします。そして何より、25年の長い道のり、ここに連れてきてくれたのはみなさんです。全国各地のみなさんの力が集まって今日という日を作ってくれた。自分自身に拍手を!」。さらに、「すごく個人的なことを言うけど、25年で今日、いちばんいい歌が歌えた。みんなが背中を押してくれたから、今日は気持ちいい歌が歌えました。20周年のとき、東京ドームをやったときは、山に登っている感覚があって。そのときはその先の道があるのかないのかわからなかったけど、みなさんから力をもらって次の山が見えて。そこから5年経って、みんなのおかげでまた山が見えたよ。この頂上に登ってきて、本当に最高の景色が見えています。また5年後も10年後も、山の頂上でこんないい景色を見続けられたらと思います。本当に今日はありがとうございました!」と感謝を述べた。

「そんなええ思いをさせてくれているみなさんとは、やっぱりまだまだバカ騒ぎをせにゃいけんと思うんじゃ! そして、でっかい花火を打ち上げようじゃないか!」と、サブステージで続けて披露したのは「Ohhh!!! HANABI」。アリーナからスタンドまで、客席一面が観客のぐるぐる回るタオルで埋め尽くされる。岡野のブルースハープ、新藤のギターソロとリレーすると、バックスクリーンの後ろから花火が盛大に打ちあがり、25周年を華々しく祝福した。ふたりがサブステージからメインステージへと戻りエンディングかと思いきや、けたたましくドラムがフィル・イン。「最後はみんなで、アホになって帰るぞ!」と、ラスト恒例の「ジレンマ」で、ステージもギラギラとネオンを光らせ客席を煽る。サポートメンバーも順番にソロを披露して大喝采を集める。岡野はステージを端から端まで走り回って客席を指さすと、「あんたら最高! だからこそ、あんたらは胸張っていけ! 自信持っていけ! 今日はどうもありがとう! 最高の記念になりました!」と力強いメッセージを送った。

 曲が終わると、スタジアムのナイター用LED照明が一斉に点灯し、3万人の観客を照らし出す。メンバー全員と手を繋ぎオフマイクで声を上げて一礼すると、ステージに残った2人はしばし客席に手を振り感謝してからセンターに集まった。すると突如ファンファーレが鳴り、「デビュー25周年を迎えたポルノグラフィティのメンバーを紹介します」と場内アナウンスが流れ出す。「背番号1015、ポジション・ボーカル、岡野昭仁」「背番号0920、ポジション・ギター、新藤晴一」とそれぞれ選手さながらに紹介されると、おもむろにビールの売り子がステージに登場し、ふたりにビールを手渡していく。「みなさまと共に乾杯をしたいと思います。せーの、乾杯!」との乾杯の音頭で、並んでビールをゴクリ。岡野は一気に飲み干した。最後はサポートメンバーも加わり、客席をバックに記念撮影も実施された。

「またねー!」(新藤)「最高!これからもよろしく!」(岡野)。最後は2人でガッツリ握手を交わして、鳴り止まぬ拍手の中で25年に相応しい大団円で、25周年を締めくくったのだった。

Text by 岡本貴之
Photo by 入日伸介

◎公演情報
【ポルノグラフティ 因島・横浜ロマンスポルノ’24 ~解放区~】
2024年9月8日(日) 神奈川・横浜スタジアム

▼セットリスト
00. おいでよサンタモニカ
01. ネオメロドラマティック
02. メジャー
03. アポロ
04. 狼
05. OLD VILLAGER
06. FLAG
07. カメレオン・レンズ
08. シスター
09. 愛が呼ぶほうへ
10. むかいあわせ
11. ギフト
12. THE DAY
13. 螺旋
14. Zombies are standing out
15. 今宵、月が見えずとも
16. ひとひら
17. ヒトリノ夜
18. Jazz up
19. ミュージック・アワー
20. アゲハ蝶
21. 解放区

EN1. ヴィヴァーチェ
EN2. Ohhh!!! HANABI
EN3. ジレンマ

◎イベント情報
【ロマンスポルノ’24 ~解放区~ 因島SP DELAY VIEWING】
2024年11月8日(金)19:00開演
2024年11月9日(土)14:00開演
2024年11月10日(日)14:00開演
<会場> 全国各地の映画館
https://liveviewing.jp/pg25th-innoshima/


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