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3markets[ ]が、東名阪ツアー【ネコをみにこないか】のファイナルとして、3月3日にZepp Shinjuku(TOKYO)公演を行った。
3markets[ ]にとってキャリア初のZeppワンマンだ。Zeppといえば、キャパ1,500~3,000人クラスの大バコであり、初のZeppワンマンに踏み切るバンド=上り調子のバンドという印象がある。3markets[ ]もバンドの状況がいいからこそ本公演開催に踏み切ったのだろう。“ロックバンドの大規模ワンマンあるある”的予定調和に対して斜に構えながらも、実際に大舞台に立つことで生まれた感情に素直になりながら、渾身のギターロックを真正面から鳴らす4人の姿が心に残った。
開演時刻を迎えると、カザマタカフミ(Vo./Gt.)、矢矧暁(Gt.)、田村亮(Ba.)、masaton.(Dr.)、カザマの愛猫・ケイコの巨大パネル2体(各3万円。カザマが自腹で購入)が登場。カザマが「猫を見に来てくれてありがとう。もう見てもらえたので、いつもだったら帰れって言うんだけど、今日は帰さないぜ」と歌詞になぞらえた言葉を投げかけ、観客が歓声を上げると、1曲目の「ね。」が始まった。リズミカルな曲調に早速観客が身体を揺らす。突如メロコア化するラストは特に楽しい。
ライブの序盤は、「さよならスーサイド」「サイゼ」「¥1,000,000」「愛の返金」とアッパーチューンで畳みかけた。3markets[ ]の楽曲で歌われるのは、卑屈さや劣等感、自意識過剰な心だ。本当は思っているけど、社会の一員として日常生活を円滑に回すために言わないでおいた方がいいことを、キャッチーなリフやリズミカルなビート、明るい曲調に乗せて彼らは高らかに歌う。だから聴く人も感情を思いっきり解放することができる。
作詞作曲を手掛けるカザマは、「俺の生き様に意味はあるのか?」と落ち込むこともあるが、みんなが下を向いた時にそこにいる存在も必要なんじゃないかと思えているという。そんなMCのあとに披露されたのは、以前付き合っていた人との実話を描くことで“下には下がいる”精神を体現したバラード「バンドマンと彼女」で、続く「底辺の恋」ではカザマがフロアに降りて、観客たちを見上げながら歌った。
ライブ中には<いつまでZeppにいるんだろう>(「サイゼ」)、<6万あったらパネルもっと買いたい>(「¥1,000,000」)など、この日ならではの歌詞替えも飛び出した。そんななか、MCでは「Zeppまで行ってるやつらがバイトしてることあるんだ」「バンドが大きくなるにつれてみんなありがとうしか言わなくなるから、ありがとうって言ったら終わりだと思ってたけど、本当にありがたく思うんですね」(カザマ)と率直な実感を語る場面も。「一度やってみたかったんだ、ギター持ち替えるやつ。売れてるバンドマンみたいだろ?」と言いながらギターをチェンジするも、ギターを持ってきてくれたスタッフ(協力を申し出てくれた先輩バンドマンだという)に対し、小声で「すみません」と言っているのがマイクに乗ってしまっているのが微笑ましい。
そうしていつもと違うエレキを鳴らしながら歌った「セブンスター」から、ライブの後半に差し掛かった。「TikTokの方がいらっしゃるんですけど」と言いながら、SNSへの恨み節を炸裂させた「Fxxk TikTok」を筆頭に、「レモンかけていいですか」という何気ない言葉をフックに内省していく「レモン×」、田村のスラップベースがバンドを引っ張る「カニ大好き」、そしてバンドの代名詞的楽曲「社会のゴミカザマタカフミ」まで4人で全力で鳴らしきり、本編を終えた。
止まない拍手に応えてのアンコール。「野次大歓迎なので言いたいことあったら言ってくださいね」とカザマが伝えると、客席から「大好き!」「愛してる!」といった声が上がった。それに対し、「そういうのはほんと……人間がダメになっちゃうので……」とカザマ。そして「やっぱりバンドって、デケーところでやると何かしらの発表をね……」と期待を煽るような発言をしたあとは、「今年俺たちはフェスに……出たーい!」「来年俺たちは武道館に……出たーい!」というお約束の流れ。さらに「バンドの動きとしては大きなことはないんだけど」と前置きをしつつ、全国ツアーの開催が決定したと発表すると、観客は熱量高くリアクションをし、メンバーに喜びを伝えた。
しかし、これだけで終わりではなかった。まだまだ止まない拍手に応えてのダブルアンコール。「今年3markets[ ]は、メジャーデビュー……」というカザマの発言のあとに続いたのは「します!」であり、2024年夏にエイベックスよりメジャーデビューすることが発表された。こんな三段落ち、誰が予想していただろうか。矢矧、田村、masaton.にも内緒の発表だったらしく、3人は「マジかよ」「えっ?」「本当に?」と理解が追いついていない様子。フロアから「おめでとう!」という声がたくさん届けられたり、舞台袖からお祝いのケーキが出てきたりといった展開にメンバーは照れくさそうにしていたが、その後披露された「売れないバンドマン」は魂のこもった演奏で、4人の音は何よりも雄弁だった。ラストは、来場者とともに記念撮影をして終了。その写真にはみんなの笑顔が収められていたに違いない。
Text by 蜂須賀ちなみ
Photo by さいちょー/中山優瞳
◎公演情報
【ネコをみにこないか】
2024年3月3日(日)
東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)
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